生分解性マイクロニードルを応用した画期的「貼るワクチン製剤」の開発と実用化に資する研究の総合的推進 

文献情報

文献番号
201307004A
報告書区分
総括
研究課題名
生分解性マイクロニードルを応用した画期的「貼るワクチン製剤」の開発と実用化に資する研究の総合的推進 
課題番号
H23-創薬総合-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 直貴(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小豆澤 宏明(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、独自に開発したマイクロニードル (MN) 技術を応用した新規経皮ワクチン製剤の開発を推進してきた。本年度はナイロン6を素材としたMN (nMN) ならびにポリグリコール酸を素材としたMN (pMN) を新たに開発し、経皮ワクチンデバイスとしての安全性ならびに有用性を前臨床研究および臨床研究において検証した。
 また、経皮ワクチン製剤に応用可能な可溶性アジュバント候補物質を探索し、ワクチン抗原の用量や投与回数の低減、免疫応答増強に基づく安定した有効性発揮を達成できる未来型経皮ワクチン製剤の創出を目指した基盤情報の収集を図った。
研究方法
 nMNおよびpMNの針部耐荷重値を測定するとともに、動物実験において皮膚内への物質送達特性を解析した。nMNについては、モデル抗原としてニワトリ卵白アルブミン (OVA) を装填した経皮ワクチン製剤を作製し、そのOVA特異的免疫応答誘導効果を動物実験において検討した。また、nMNとpMNのヒトへの適用における安全性を医師主導臨床研究において検証した。さらに、経皮ワクチンにCpGオリゴデオキシヌクレオチド (CpG-ODN) を併用した際の免疫応答ならびにCpG-ODNの皮膚構成細胞への作用について精査した。
結果と考察
 nMNあるいはpMNを適用した皮膚に蛍光標識物質の溶液を塗布したところ、蛍光は角質層下の生きた表皮から真皮にかけて観察され、送達深度は皮膚表面から200~300 μmであった。OVAを装填したnMNを用いて経皮免疫したマウスでは、皮下注射免疫群と同等の血清中OVA特異的抗体価の上昇が認められた。また臨床研究において、nMNとpMNはヒト皮膚に対して重篤な局所反応を誘発しない経皮ワクチン用デバイスであることが実証された。今後、nMNおよびpMNにワクチン抗原を装填した経皮ワクチン製剤の安全性ならびに有効性を検証する臨床研究を推し進めるとともに、臨床現場で本製剤を使用する際の利便性や簡便性を改善しうるアプリケーターの開発・改良を図る予定である。
 CpG-ODNの経皮投与により発揮されるアジュバント効果がTLR9を介した反応に基づくことを確認するとともに、CpG-ODNの併用がTh1型免疫応答の増強に強く関与することが示唆された。今後、これらの基礎情報を活用してワクチン抗原の用量や投与回数の低減 (コスト削減) ならびに免疫応答増強に基づく安定した有効性を達成できる未来型経皮ワクチン製剤の創出を図り、その有用性を検証するための臨床研究へと展開していきたいと考えている。
結論
 新たに開発したnMNおよびpMNの経皮ワクチン用デバイスとしての高い有用性と安全性を実証した。また、CpG-ODNの経皮免疫応答における作用機序の一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201307004B
報告書区分
総合
研究課題名
生分解性マイクロニードルを応用した画期的「貼るワクチン製剤」の開発と実用化に資する研究の総合的推進 
課題番号
H23-創薬総合-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 直貴(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小豆澤 宏明(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 各種マイクロニードル (MN) の経皮ワクチンデバイスとしての有用性を検証する基礎研究、MNを応用した経皮ワクチン製剤の安全性・有効性を動物実験により実証する前臨床研究、をそれぞれ強力に推進することでMN技術の基礎情報集積と基盤技術熟成を図った。また、倫理委員会の審査・承認を経てヒトにおける各種MNならびにそれらを応用した経皮ワクチン製剤の安全性・有効性を検証する質の高い臨床研究を実施した。さらに、経皮ワクチン製剤に応用可能な可溶性アジュバント候補物質を探索し、ワクチン抗原の用量や投与回数の低減、免疫応答増強に基づく安定した有効性発揮を達成できる未来型経皮ワクチン製剤の創出を目指した基盤情報の収集に取り組んだ。
研究方法
 皮膚内溶解型MN (MH)、ナイロン6製MN (nMN) およびポリグリコール酸製MN (pMN) の針部耐荷重値を測定するとともに、動物皮膚に適用した際の物質送達特性ならびに皮膚局所刺激性を検討した。MHについてはインフルエンザHA抗原を装填した経皮ワクチン製剤を作製し、そのHA特異的免疫応答誘導効果を動物実験において解析するとともに、ヒトにおける安全性および有効性を医師主導臨床研究において検証した。また、nMNとpMNについてはヒトへの適用における安全性を臨床研究において評価した。さらに、Toll様受容体リガンドを中心に経皮ワクチン製剤に応用可能な可溶性アジュバント候補物質を探索し、有望な候補物質についてはそのアジュバント効果発現機序について精査した。
結果と考察
 各種MNの皮膚穿刺特性および皮膚内物質送達特性を解析し、使用目的に応じて針部の形状、長さ、組成を最適化するための基礎情報を集積できた。また、MH、nMN、pMNがヒト皮膚に対して重篤な局所反応を誘発しない経皮ワクチン用デバイスであることを実証した。これらのMNを用いてワクチン抗原を経皮投与することで、従来の注射投与に匹敵する抗原特異的免疫応答が誘導できることを明らかにした。さらにHA抗原を装填したMHについては、ヒトにおいて従来の注射型インフルエンザワクチンと同等のワクチン効果が得られることを実証した。経皮ワクチン用アジュバントの候補物質としてCpGオリゴデオキシヌクレオチド (CpG-ODN) を見出し、CpG-ODNの経皮投与により発揮されるアジュバント効果がTLR9を介した反応に基づくことを確認した。また、CpG-ODNの併用がTh1型免疫応答の増強に強く関与することも示唆された。
 今後、これらの基礎情報を活用してワクチン抗原の用量や投与回数の低減 (コスト削減) ならびに免疫応答増強に基づく安定した有効性を達成できる未来型経皮ワクチン製剤の創出を図り、その有用性を検証するための臨床研究へと展開していきたいと考えている。
結論
 角質層下の皮膚組織に効率よく物質送達できる安全な経皮ワクチンデバイスとしてMH、nMN、およびpMNを開発した。動物実験および臨床研究において、MHを用いたインフルエンザ経皮ワクチン製剤の安全性および有効性を実証した。また、経皮ワクチン製剤用アジュバントの候補物質としてCpG-ODNを見出し、経皮投与における安全性を確認するとともに、その作用機序の一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201307004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新興・再興感染症のパンデミックが脅威となっている今日、有効性・安全性に優れる新たなワクチンの開発のみならず、パンデミック発生時を想定した短期間で大量のワクチンを供給できる製造技術・体制の整備、ならびに簡便で迅速な新規ワクチン手法とその製剤化技術の開発が求められている。本研究の成果である経皮ワクチン製剤 (貼るワクチン) は、開発途上国へのワクチン普及を強力に推進するとともに、新興・再興感染症パンデミックやバイオテロリズム発生時に社会的・経済的損耗を最小限に食い止める方策に威力を発揮する。
臨床的観点からの成果
経皮ワクチン製剤は使用法が皮膚に貼付するだけという簡便性のために、ワクチンの迅速大規模接種や注射針に対して恐怖症のある小児へのコンプライアンス向上に極めて効果的である。さらには乾燥製剤として開発することで、従来の注射ワクチン製剤で必要とされる生産から消費までの一貫した低温温度管理を不要とし、コストダウンが図れる可能性がある。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
・キャスト,朝日放送,2013年11月29日
・ニュース7,NHK,2013年6月23日
・読売新聞,2013年4月20日 (夕刊)
・たけしのニッポンのミカタ!,テレビ東京,2012年12月7日
・日本経済新聞,2012年11月17日
・教科書にのせたい!,TBSテレビ,2012年1月24日
・日経ビジネス 第1611号 (pp41),2011年10月10日

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
44件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
DNAワクチンマイクロニードル
詳細情報
分類:
特許番号: 特開2013-052202
発明者名: 権 英淑, 神山文男, 中川晋作, 岡田直貴
権利者名: コスメディ製薬株式会社
出願年月日: 20130321
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sachiko Hirobe, Hiroaki Azukizawa, Kazuhiko Matsuo, et al.
Development and clinical study of a self-dissolving microneedle patch for transcutaneous immunization device
Pharm. Res. , 30 (10) , 2664-2674  (2013)
10.1007/s11095-013-1092-6
原著論文2
Yasuhiro Hiraishi, Sachiko Hirobe, Hiroshi Iioka, et al.
Development of a novel therapeutic approach using a retinoic acid-loaded patch for seborrheic keratosis treatment and safety study in humans
J. Control. Release , 171 (2) , 93-103  (2013)
10.1016/j.jconrel.2013.06.008
原著論文3
Yasuhiro Hiraishi, Takeshi Nakagawa, Ying-Shu Quan, et al.
Performance and characteristics evaluation of a sodium hyaluronate-based microneedle patch for a transcutaneous drug delivery system
Int. J. Pharm. , 441 (1-2) , 570-579  (2013)
10.1016/j.ijpharm.2012.10.042
原著論文4
Kazuhiko Matsuo, Yayoi Yokota, You Zhai, et al.
A low-invasive and effective tanscutaneous immunization system using a novel dissolving microneedles patch for soluble and particulate antigens
J. Control. Release , 161 (1) , 10-17  (2012)
10.1016/j.jconrel.2012.01.033
原著論文5
Kazuhiko Matsuo, Sachiko Hirobe, Yayoi Yokota, et al.
Transcutaneous immunization using a dissolving microneedle array protects against tetanus, diphtheria, malaria, and influenza
J. Control. Release , 160 (3) , 495-501  (2012)
10.1016/j.jconrel.2012.04.001
原著論文6
Sachiko Hirobe, Hiroaki Azukizawa, Takahiro Hanafusa, et al.
Clinical study and stability assessment of a novel transcutaneous influenza vaccination using a dissolving microneedle patch
Biomaterials , 57 , 50-58  (2015)
10.1016/j.biomaterials.2015.04.007

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2018-05-21

収支報告書

文献番号
201307004Z