滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究

文献情報

文献番号
201306023A
報告書区分
総括
研究課題名
滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究
課題番号
H25-再生-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 政代(独立行政法人 理化学研究所 網膜再生医療研究開発プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 栗本 康夫(先端医療振興財団)
  • 川本 篤彦(先端医療振興財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
41,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢黄斑変性(AMD)は加齢に伴って発症する、網膜の黄斑部の萎縮または変性で、高齢者における中心視力悪化の一般的な原因である。発症の要因は網膜色素上皮(RPE)の劣化であると考えられている。AMDには滲出型と萎縮型という二つのタイプがある。日本人に特に多い滲出型AMDは、脈絡膜新生血管(CNV)という異常な血管を特徴とするもので、現在の治療法としては、抗VEGF薬の硝子体内投与が主流となっている。しかし、これはCNVの発生・増殖を抑制するための治療であり、治療を行ってもCNVがすでに存在している部位には線維性組織やRPEの障害が残り、結局はその上の網膜も変性に陥る。また、これらの抗VEGF治療薬に抵抗性を示すCNVも存在し、こういった症例には現在のところレーザー、手術といった破壊的浸潤を伴う治療以外手段がない。よって、視力を維持/回復させるためには、原因となるCNVや瘢痕組織を取り除くとともに、網膜下のRPEの再建が必要である。
RPEは生体内において網膜の視細胞を維持するために重要な役割を果たしている。我々は過去に霊長類ES細胞から網膜色素上皮(RPE)を分化誘導し、(PNAS 2002)さらにRPE障害モデルラットの網膜下に移植すると、移植部の視細胞が維持され治療効果が得られることを報告した(IOVS 2004)。これを応用してヒトiPS細胞からも生体内のRPEと同等の機能を持つRPE細胞を分化誘導することに成功した(Neurosci Letter 2009)。これらはすべて世界初の報告である。さらに我々は、RPE細胞を人工的な足場材などを用いずにシート化する技術の開発にも成功している。この方法によって作製したRPEシートをサル網膜下に移植する自家移植を行い、半年以上経っても生着し続けることを確認している。
海外では患者本人の周辺部網膜から切除したRPEシートの黄斑部への移植が一部のグループでなされ一定の効果をあげているが、合併症が多いため普及していない。iPS細胞から作製した若返った自己RPEシートを作成すれば手術の安全性が高まる。
RPEが臨床応用に関して有利な点として細胞の純化が容易であることが挙げられる。また網膜という小さな部位への移植であることから必要な細胞は少量であり、移植細胞の全身への影響も小さい。さらに、万が一何らかの異常が起きた場合、眼という外部から観察しやすい器官であることから、異常の早期発見が可能で速やかに対応することが可能である。
これらの根拠に基づき、患者本人から樹立したiPS細胞由来RPE細胞シートを作成し、滲出型加齢黄斑変性患者に移植することにより、網膜組織の修復し視機能を改善する新しい治療法を開発することを目的として本臨床研究を計画した。
研究方法
最初の臨床研究は、これまでにルセンティスなどの抗VEGF薬等の既存治療を受けて効果がみられなかった、視力0.3未満の滲出型加齢黄斑変性の患者を対象とする。患者の上腕部から直径4ミリ程度の皮膚を採取し、理化学研究所のCPCにおいて、皮膚組織からiPS細胞を作製する。これをRPE細胞に分化させ、RPEシートを作製する。皮膚を採取してからRPEシートが完成するまで、約10ヵ月を要する。RPEシート移植は先端医療センター病院眼科にて全身麻酔科に行う。網膜下の新生血管を取り除いた後、RPEシートを網膜の下へ移植する。手術後は1週間入院、退院後半年間は毎月、その後半年は2カ月毎に、視力検査、眼底検査、画像診断などの検査を行い、1年間観察を行う。
結果と考察
平成24年度中に、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に則り、施設内倫理審査委員会の審査を受けた上で、厚生労働省に実施計画を申請し、平成25年7月19日付で臨床研究の実施が了承された。10月より患者リクルートを開始し、平成25年度内に2症例の組み入れと、皮膚の採取・iPS細胞の作製を開始した。皮膚を採取してからRPEシートが完成するまで、約10ヵ月を要する。
結論
RPEシート移植は平成26年度内に行われる見込み。
UMIN試験ID:UMIN000011929

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201306023Z