ライソゾーム病に対する細胞医薬品の開発にむけたConfidence in Mechanism (CIM) 取得のための基礎研究

文献情報

文献番号
201306019A
報告書区分
総括
研究課題名
ライソゾーム病に対する細胞医薬品の開発にむけたConfidence in Mechanism (CIM) 取得のための基礎研究
課題番号
H24-再生-若手-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大倉 華雪(公益財団法人 先端医療振興財団 再生医療実現拠点ネットワークプログラム開発支援室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業では、脂肪組織由来多系統前駆細胞(Adipose tissue-derived Multi-lineage Progenitor Cells; ADMPC)を、難治性疾患であるムコ多糖症を適応とする再生医療等製品として臨床応用することを究極の目的としている。
研究方法
再生肝細胞のライソゾーム内加水分解酵素の血中分泌の確認
平成24年度において、医薬基盤研究所生物資源バンクよりGM1-ガングリオシドーシスモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)を受精卵凍結融解後の産生仔で9匹の分譲をうけ、2匹に対しmA-DMPCを経門脈的に移植し、再生肝細胞のライソゾーム内加水分解酵素の血中分泌を確認した。
今年度において多数のモデルマウスを得ることができたため、30匹のモデルマウスに対し、mADMPCを経門脈的に移植、3か月後に犠牲死させ全採血を行い、ライソゾーム内加水分解酵素の血中分泌の確認を行った。同時に、30匹のモデルマウスに対し、mADMPCを経尾静脈的に移植、3か月後に犠牲死させ、同様にライソゾーム内加水分解酵素の血中分泌の確認を行った。
結果と考察
いずれの移植方法においても、ライソゾーム内加水分解酵素が血中に分泌していることが確認でき、移植3か月後においても、野生型マウスと比較し43.2%の活性を維持していた。
しかし、モデルマウス繁殖過程で得られたヘテロ型マウスも同時に血清学的評価を行ったところ、ヘテロ型の活性は野生型に比べ68.7%の活性があり、モデルマウスに対する細胞移植群の活性はヘテロ型と比較し、62.9%の活性であった。
臨床応用に際し、反復投与の検討を含め、modificationを要する可能性も示唆された。
結論
本研究では、生体内で分化生着した再生肝細胞がライゾゾーム加水分解酵素を持続的に分泌、全身の細胞組織に供給補充し続けることを機序とした新規概念の細胞医薬品と位置付けられるとの特色を有する。当該概念による製剤はこれまで皆無であり独創的である。
近い将来の、再生医療関連法規下における臨床研究の申請、もしくは薬事法上の治験開始を目指し、臨床応用に向けた検証を重ねたい。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

文献情報

文献番号
201306019B
報告書区分
総合
研究課題名
ライソゾーム病に対する細胞医薬品の開発にむけたConfidence in Mechanism (CIM) 取得のための基礎研究
課題番号
H24-再生-若手-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大倉 華雪(公益財団法人 先端医療振興財団 再生医療実現拠点ネットワークプログラム開発支援室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ライソゾーム病は、ライソゾーム加水分解酵素の先天性欠損により中間代謝産物がライソゾーム内に蓄積、骨変形、肝脾腫、知能障害など種々の症状を呈する症患群であり、根治的治療法はない。対症療法として酵素補充療法製剤が承認された疾患もあるが一部にすぎず、新規機序の医薬品の開発が待たれている。
本研究事業では、脂肪組織由来多系統前駆細胞(Adipose tissue-derived Multi-lineage Progenitor Cells; ADMPC)を、難治性疾患であるライソゾーム病を適応とする再生医療等製品として臨床応用することを究極の目的とした。
研究方法
ライソゾーム病の一部疾患で製剤として確立している酵素補充療法は、多くのライソゾーム加水分解酵素が末端にマンノース6リン酸(M6P)と呼ばれるライソゾーム限局シグナルを有することを利用している。M6P受容体は広く細胞膜表面に存在し、細胞外に存在する加水分解酵素と結合、それを細胞内、さらにライソゾーム内に輸送する。酵素補充療法はこの輸送系を利用して、欠損している酵素を薬剤として体外から投与することにより、細胞内に欠損酵素を補充し、ライソゾーム内に蓄積している物質の分解を促進する方法である。
本研究にて開発を目指す細胞医薬品は、生体内に生着分化することで、欠乏酵素を補充し続ける製剤と位置付けられる。従って、ADMPCが生体内で肝細胞に分化生着し、ライゾゾーム加水分解酵素を持続的に分泌、全身の細胞組織に供給することを確認することで、ライソゾーム病に対する新規機序細胞医薬品として研究開発を進めることのConfidence-in-Mechanismが得られると想定し、 in vitro脂肪組織由来多系統前駆細胞のβガラクトシダーゼ発現の検討、ADMPCの再生肝細胞への分化生着の確認を行った。
結果と考察
・in vitro脂肪組織由来多系統前駆細胞のβガラクトシダーゼ発現の検討:
βガラクトシダーゼはマンノース6リン酸(M6P)を持ち、細胞のマンノース6リン酸受容体を介して細胞に保持されることから、M6Pあるいはmannosamineを過剰に添加して培養、その上清を解析した。コントロール肝細胞とADMPCの双方で当該細胞は検出可能であり、M6PおよびM6P合成阻害剤であるmannosamineによる濃度依存性competitionから当該酵素は培養上清に分泌されたと想定される。酵素分泌というMode of Action (MOA)が確認され、comparability assayを行うための外挿性確認の証左となった。
・ADMPCの再生肝細胞への分化生着の確認:
平成24年度において、医薬基盤研究所生物資源バンクよりGM1-ガングリオシドーシスモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)を受精卵凍結融解後の産生仔での分譲をうけ、繁殖後mADMPCを移植した。
GM1-ガングリオシドーシスモデルマウス(βガラクトシダーゼKOマウス)の血清にはβガラクトシダーゼ活性をほぼ認めないが、mADMPCの経門脈的投与1か月後にて健常対象コントロールマウスの半分程度までβガラクトシダーゼ活性が改善しており、治療製剤としてのFeasibilityは確認された。
30匹のモデルマウスに対し、mADMPCを経門脈的に移植、3か月後に犠牲死させ全採血を行い、ライソゾーム内加水分解酵素の血中分泌の確認を行った。同時に、30匹のモデルマウスに対し、mADMPCを経尾静脈的に移植、3か月後に犠牲死させ、同様にライソゾーム内加水分解酵素の血中分泌の確認を行った。いずれの移植方法においても、ライソゾーム内加水分解酵素が血中に分泌していることが確認でき、野生型マウスに比べて約4割活性を維持していた。
しかし、モデルマウス繁殖過程で得られたヘテロ型マウスも同時に血清学的評価を行ったところ、ヘテロ型の活性は野生型に比べ約7割の活性があり、細胞移植群はヘテロ型の6割強の活性であり、臨床応用に際し、modificationを要する可能性も示唆された。
結論
本研究では、生体内で分化生着した再生肝細胞がライゾゾーム加水分解酵素を持続的に分泌、全身の細胞組織に供給補充し続けることを機序とした新規概念の細胞医薬品と位置付けられるとの特色を有する。当該概念による製剤はこれまで皆無であり独創的である。
本研究事業では、研究期間後すみやかな再生医療関連法規下における臨床研究の申請、もしくは薬事法上の治験開始を目指している。
近い将来の、再生医療関連法規下における臨床研究の申請、もしくは薬事法上の治験開始を目指し、求められる試験、検証等を迅速に行う。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201306019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ライソゾーム病は、ライソゾーム加水分解酵素の先天性欠損により中間代謝産物がライソゾーム内に蓄積する症患群であり、根治的治療法はない。脂肪組織由来多系統前駆細胞(Adipose tissue-derived Multi-lineage Progenitor Cells; ADMPC)を、ライソゾーム病を適応とする再生医療等製品として臨床応用することを究極の目的とし、ADMPC投与後に血中にβガラクトシダーゼを分泌、血中濃度が健常マウスの半分程度まで回復することを明らかとした。
臨床的観点からの成果
経門脈的に投与され、肝臓内で肝細胞様細胞へと分化生着したADMPCが血中にβガラクトシダーゼを分泌、血中βガラクトシダーゼ濃度が健常マウスの半分程度まで回復することが明らかとなった。これら非臨床効能効力裏づけ試験(有効性確認試験)により、POCは取得された。次いで、ADMPCの経門脈的投与に関する安全性試験packageを終了、小児科医との連携を進め、臨床応用を射程に入れた。
ガイドライン等の開発
本細胞製剤は、経門脈的に投与するため、肝梗塞の危険性がある。経門脈的投与の安全性用量設定試験により、1.5x107 cells/kgにても安全性での懸念事項は認められなかった。本知見は、(公財)先端医療振興財団が受託した平成26年度医薬品等審査迅速化事業費補助金(革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品実用化促進事業)に提供され、当該事業による非臨床試験packageの提案へと反映された。
その他行政的観点からの成果
ライソゾーム病は、難治性疾患克服研究事業で特定疾患として指定される難病である。GSKがorphan disease治療薬開発の部門を設置するなど、世界的に見てもorphan disease(難病)に対する新規治療剤開発の機運が期待されている。再生医療という切り口からこれまで見捨てられたorphan diseaseであるライソゾーム病にも光を当てることができたことは、本研究の行政的観点からの成果であると言える。
その他のインパクト
この研究の成果について、再生医療実現拠点ネットワークプログラムにおける第5回ミニマムコンセンサスパッケージ策定会議・第5回再生医療薬事講習会、および第13回再生医療学会におけるシンポジウム「幹・前駆細胞の品質管理」において、薬事承認にむけた取り組みもふくめ発表した。また、神戸新聞より取材を受け、2014年4月21日朝刊において、医療ニュースとして取り上げていただいた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
神戸新聞掲載、再生医療学会、第5回ミニマムコンセンサスパッケージ策定会議

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2018-05-22

収支報告書

文献番号
201306019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,200,000円
(2)補助金確定額
5,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,137,170円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 1,862,830円
間接経費 1,200,000円
合計 5,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-