ヒトES/iPS細胞の実用化における幹細胞バンクの基盤整備についての研究

文献情報

文献番号
201306014A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトES/iPS細胞の実用化における幹細胞バンクの基盤整備についての研究
課題番号
H23-再生-指定-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古江 美保(独立行政法人医薬基盤研究所  難病・疾患資源研究部 ヒト幹細胞応用開発室)
研究分担者(所属機関)
  • 水口 賢司(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 バイオインフォマティクスプロジェクト)
  • 大沼 清(長岡技術科学大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトES/iPS細胞などのヒト多能性幹細胞(hPSCs)を実用に応用するためには、ワーキングバンクのみならず各樹立機関でのプレマスターバンクが必須となり、共用基盤システムが必要である。一般細胞バンキングシステムはすでに策定されているが、臨床用細胞プロセッシングも策定されている。しかし、ヒト幹細胞は従来の細胞とは異なりゲノムが不安定であるため、新たに考慮する点も多い。海外では、国際幹細胞バンキングイニシャティブ(ISCBI)が臨床用幹細胞バンクのためのガイドラインを作成中である。国内事情を鑑みた基盤設計が急務である。そこで、実用に資するヒト幹細胞バンクに必要なデータベースの基盤設計、品質管理に必要な基盤技術の策定を行い、実用ヒト幹細胞バンクの基盤システムを設計について研究することを目的とする。
具体的には、
① 効率的な品質管理を行うための基盤技術の策定 
② 細胞登録システムの基礎設計案の作成
③ 臨床応用などに資するヒト幹細胞の品質維持技術の策定を行う。
研究方法
これまでに、培養記録、品質管理作業手順および作業記録表を作成し、連携機関と意見交換し、実際に使用することで改善した。H25年度はこれらの作業をデータベースへの連携・活用できるよう基盤システムを構築する。また、 効率的な品質管理のため、未分化マーカー発現プロフィール解析のためのI-FACSを構築した。遺伝子プロファイルはバイオインフォマティクス解析を行い、解析法を策定した。また、ハイスループットin vitro分化能評価系を構築した。H25年度では、その精度と解析法を検証する。さらに、近年、臨床に資する条件が次々と報告されているが、組成が明らかにされてない条件も多い。さらに、 組成が公開されている臨床に資する条件での培養技術/管理の策定を行うため、申請者が開発した無血清培地と既存の無血清培地および従来法を未分化性について比較検証した。H25年度は分化能について評価し、臨床応用にむけた品質管理法を策定する。
結果と考察
H25年度は、ヒト幹細胞情報化事業を担当する慶応大学と意見交換を行い、情報化に必要な項目などを検討した。また、分化能評価や遺伝子発現について種々の細胞株のデータを蓄積し、従来法と比較し、精度を検討した。2種のhPSC株を用いて、申請者が開発した無血清培地hESF-FX培地ならびに市販培地を用いて5代以上継代を行い、問題点を検証し、解析項目・方法を策定し、解析項目・方法で各種培養条件による細胞の評価を行った。
結論
当初の目標であったヒト幹細胞バンク運営の基本設計をほぼ構築できた。今後は、培養技術について検証し、それによる細胞の品質への影響を検討し、ヒト幹細胞の臨床応用、創薬応用が促進されるよう、幹細胞の管理法などについて、他研究機関と意見交換を行うとともに、学会など講演にて情報提供を行っていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201306014B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトES/iPS細胞の実用化における幹細胞バンクの基盤整備についての研究
課題番号
H23-再生-指定-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
古江 美保(独立行政法人医薬基盤研究所  難病・疾患資源研究部 ヒト幹細胞応用開発室)
研究分担者(所属機関)
  • 水口 賢司(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 バイオインフォマティクスプロジェクト )
  • 大沼 清(長岡技術科学大学 工学部)
  • 川嵜敏祐(立命館大学 総合理工学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトES/iPS細胞などのヒト多能性幹細胞(hPSCs)を実用に応用するためには、ワーキングバンクのみならず各樹立機関でのプレマスターバンクが必須となり、共用基盤システムが必要である。一般細胞バンキングシステムはすでに策定されているが、臨床用細胞プロセッシングも策定されている。しかし、ヒト幹細胞は従来の細胞とは異なりゲノムが不安定であるため、新たに考慮する点も多い。海外では、国際幹細胞バンキングイニシャティブ(ISCBI)が臨床用幹細胞バンクのためのガイドラインを作成中である。国内事情を鑑みた基盤設計が急務である。そこで、実用に資するヒト幹細胞バンクに必要なデータベースの基盤設計、品質管理に必要な基盤技術の策定を行い、実用ヒト幹細胞バンクの基盤システムを設計について研究することを目的とする。
研究方法
ヒトES細胞、iPS細胞は従来の細胞と同様の資源化工程を使うことができない。ヒトES/iPS細胞は、その細胞増殖の速度が遅く、自発的な分化能も有することから分化細胞を取り除きながら細胞を増殖させ、また、幹細胞ならではの特性検査も必要となる。一方、継代とともにゲノムが不安定なることが知られており、限られた継代数内に資源化することが望ましい。効率良く細胞を増殖させ、特性検査、品質検査を行って、保存を行うために、作業工程表を作成するとともに、評価法についても効率的に行う必要がある。そこで下記項目について研究を行った。
1.未分化状態でのヒトiPS細胞の特性解析:新規マーカーの開発を行うために、iPS細胞の膜を抗原として抗体を作成し、EC細胞を認識しない抗体をスクリーニングした。また、未分化状態でのヒトiPS細胞の遺伝子発現プロフィールにおいて、株間の相違や個々の細胞株の特性を示す遺伝子等について検討した。
2.細胞登録システムの基礎設計案についての検討: 研究目的にあった細胞を検索するためには、それに必要な細胞情報がデータベース化され、適切な検索システムが必要不可欠である。しかし、現状では、細胞名のリストがあるだけである。そこで、研究用のヒト幹細胞を対象として、細胞登録とデータ登録のための基盤設計を行うために、海外での実態について調査した。特に、海外のヒト幹細胞の分譲を行っている機関における細胞登録情報の収集を行った。また、細胞培養記録を継続して記載し、データ化について検討を行った。
3. 臨床応用などに資するヒト幹細胞の品質維持技術の策定: ヒトES/iPS細胞の資源化工程において、適切なタイミングで検査を行い、凍結保存を行う必要がある。また、株間の差も大きいため、様々な工程が予測され、細胞株によって臨機応変に対応できるよう工程を策定する必要がある。海外の幹細胞バンクからヒトES細胞についての資源化工程表などが発表されており、これらの資料を集めて調査するとともに、実際に資源化を行い、株間の差を考えた工程表の作成を行った。
結果と考察
培養記録用紙を作成し、ヒトES/iPS細胞樹立機関研究者らと意見交換し、改良した。品質管理のための基本事項についても合意した。品質管理に関連する作業について手順(SOP)および作業記録表を作成し、実際に使用することで改善した。ヒトES/iPS細胞樹立機関研究者や細胞管理を行う研究者らとともに、ヒト多能性幹細胞命名法の国際基準化に関して意見をまとめた。また、医薬基盤研究所ウェブにJCRB細胞バンクで資源化をしているiPS細胞情報を公開した。
効率的な品質管理を行うために、EC細胞を認識しない抗体を開発した。また、少ない細胞数で低コストに測定できるマーカー発現プロフィール解析法が期待されており、計画通りイメージアナライザーを用いたイメージングサイトメトリー解析(I-FACS)法を策定した。また、ハイスループットin vitro分化能評価系を構築した。さらに、マーカー遺伝子について種々のPCRアレイを用いて種々のヒトES/iPS細胞株の解析を行い、バイオインフォマティクス解析を行い、基本的な品質管理に必要なマーカー候補を挙げた。
臨床応用などに資するヒト幹細胞の品質維持技術の策定を行うために、申請者が開発した無血清培地hESF-FX培地ならびに市販培地により5代以上継代を行い、問題点を検証し、解析項目・方法を策定し、解析項目・方法で各種培養条件による細胞の評価を行った。
結論
当初の目標であったヒト幹細胞バンク運営の基本設計をほぼ構築できた。今後は、培養技術について検証し、それによる細胞の品質への影響を検討し、ヒト幹細胞の臨床応用、創薬応用が促進されるよう、幹細胞の管理法などについて、他研究機関と意見交換を行うとともに、学会など講演にて情報提供を行っていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201306014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒト多能性幹細胞(hPSCs)の命名方法について国内の主な樹立機関の意見をまとめ論文発表した。hPSCs資源化における品質管理の作業工程を論文発表した。また、培養過程における遺伝子発現のバイオインフォマティクス解析を行って培養の安定性を評価し、論文化を目指している。一方で、iPS細胞作製技術の普及により国内外で広く供給体制が整い、早期より資源化分譲してきた我々の役割は十分果たされたと思われ、2018年にJCRB細胞バンクにおけるiPS細胞新規資源化を終了した。
臨床的観点からの成果
ヒト多能性幹細胞を細胞治療など再生医療に用いるためには、解決すべき課題は多い。細胞治療におけるヒト多能性幹細胞は原材料であり、その品質管理については国際的に大きな課題となっている。JCRB細胞バンクとしてヒト幹細胞のバンク化における基盤案をまとめることができた意義は大きいと考える。
ガイドライン等の開発
厚生労働省 ヒト幹細胞臨床研究調査事業委員会(2012.9.7, 2012.11.9)においてヒト幹細胞の国際標準化の動き、ヒト幹細胞の品質管理、ヒト幹細胞臨床応用の国際情報について、情報提供を行った。
自民党 議員連盟「再生医療を推進する議員の会」にてセミナー (2012.6.6)を行い情報提供を行った。
経産省「幹細胞技術及び再生医療分野の用語と定義に関する研究討論会」(2012.11.20, 2012.12.18, 2013.2.26)にて情報提供を行った。
その他行政的観点からの成果
文部科学省 幹細胞・再生医学戦略作業部会において「今後の幹細胞・再生医学研究の在り方について」案について培養液、培養技術などについて意見を述べた。
その他のインパクト
当該研究で行ったヒト多能性幹細胞の培養養技術について標準化を行った過程ならびにその成果を日本再生医療学会第一回再生医療資格認定セミナーにて情報提供を行った。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
50件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
ANTI-iPS/ES CELL-SPECIFIC ANTIBODY AND USE THEREOF
詳細情報
分類:
特許番号: 61/478,70
発明者名: Toshisuke Kawasaki, Nobuko Kawasaki, Keiko Kawabe, Miho Furue.
権利者名: 立命館大学、独立行政法人 医薬基盤研究所
出願年月日: 20110425

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takayama K, Inamura M, Kawabata K etal
Efficient and selective generation of two distinct endoderm lineages from human ES and iPS cells by differentiation stage-specific SOX17 transduction
PLoS One ,  6 , 21780-  (2011)
原著論文2
Saito S, Morita K, Kohara A,et al
Use of BAC array CGH for evaluation of chromosomal stability of clinically used human mesenchymal stem cells and of cancer cell lines
Hum Cell , 24 (1) , 2-8  (2011)
原著論文3
平田みつひ、シャンダー・アハマド、菅  三佳 他
日本におけるヒトES、iPS細胞研究標準化:その3 品質管理
Tiss. Cult. Res. Commun , 30 , 137-149  (2011)
原著論文4
菅  三佳、高田 圭、小原 有弘 他
ヒト多能性幹細胞の命名法の国際統一規格案について
再生医療 , 11 ,  72-77  (2011)
原著論文5
Takayama K, Inamura M, Kawabata K et al
Efficient generation of functional hepatocytes from human embryonic stem cells and induced pluripotent stem cells by HNF4α transduction
Mol. Ther ,  20 , 37-127  (2012)
原著論文6
Takayama K., Inamura M., Kawabata K e tal
Generation of Metabolically Functioning Hepatocytes from Human Pluripotent Stem Cells by FOXA2 and HNF1α Transduction
J. Hepatol , 57 , 628-636  (2012)
原著論文7
Nagamoto Y., Tashiro K., Takayama K et al
The Promotion of Hepatic Maturation of Human Pluripotent Stem Cells in 3D Co-culture using Type I Collagen and Swiss 3T3 Cell Sheets
Biomaterials , 33 , 4526-4534  (2012)
原著論文8
Kinehara M., Kawamura S., Tateyama D et al
Protein Kinase C Regulates Human Pluripotent Stem Cell Self-Renewal
PLoS One , 8 , 1-13  (2013)
原著論文9
Shofuda T, Kanematsu D, Fukusumi H et al
Human Decidua-Derived Mesenchymal Cells are a Promising Source for the Generation and Cell Banking of Human Induced Pluripotent Stem Cells
Cell Medicine , 4 (3) , 125-147  (2013)
原著論文10
Kawabe K, Tateyama D, Toyoda H et al
A novel antibody for human induced pluripotent stem cells and embryonic stemcells recognizes a type of keratan sulfate lacking oversulfated structures
Glycobiology. ,  (3) , 36-322  (2013)
原著論文11
Takayama K., Kawabata K., Nagamoto Y et al
3D Spheroid Culture of hESC/hiPSC-derived Hepatocyte-like Cells for Drug Toxicity Testing
Biomaterials. , 34 (7) , 9-1781  (2013)
原著論文12
Watanabe H, Takayama K, Inamura M et al
HHEX Promotes Hepatic-Lineage Specification Through the Negative Regulation of Eomesodermin.
PLoS One, , 9 (3) , 20-  (2014)
原著論文13
Kinehara M, Kawamura S, Mimura S et al
Protein Kinase C-induced Early Growth Response Protein-1 Binding to SNAIL Promoter in Epithelial-Mesenchymal Transition of Human Embryonic Stem Cells
Stem Cells and Development  (2014)
原著論文14
Takayama K, Kawabata K, Nagamoto Y et al
CCAAT/enhancer binding protein-mediated regulation of TGFβ receptor 2 expression determines the hepatoblast fate decision
Developmen , 141 (1) , 91-100  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2018-05-14

収支報告書

文献番号
201306014Z