多施設ヒト幹細胞臨床研究による3次元再生皮下軟骨の有効性確認

文献情報

文献番号
201306010A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設ヒト幹細胞臨床研究による3次元再生皮下軟骨の有効性確認
課題番号
H24-再生-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高戸 毅(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大友 邦(東京大学 医学部附属病院)
  • 星 和人(東京大学 医学部附属病院)
  • 荒川 義弘(東京大学 医学部附属病院)
  • 小室 美子(東京大学 医学部附属病院)
  • 岡崎 睦(東京医科歯科大学 大学院)
  • 飯野 光喜(山形大学 医学部)
  • 新田 尚隆(独)産業技術総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
31,968,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
われわれは世界に先駆けて力学強度と3次元形態を有する3次元皮下再生軟骨を開発した。現在、東京大学医学部附属病院において、口唇口蓋裂の鼻変形患者に3次元皮下再生軟骨を移植するヒト幹細胞臨床研究を実施している。しかし今回の臨床研究を通じて、治験実施に向けての3つ課題として、有効性エビデンスを補強すること、多施設研究が未実施であること、製造プロセスと品質管理法が煩雑であることが明らかとなった。本研究ではこれらの課題を解決し、治験実施に資する臨床データを作成し、速やかに治験に移行することを目的とし、現在実施中の臨床研究に対して、有効性の評価項目を追加し、研究機関に東京医科歯科大学と山形大学を加える改訂版ヒト幹細胞臨床研究実施する。
研究方法
1. 有効性評価法の確立
1-1) 3次元皮下再生軟骨の非侵襲的評価
有効性評価法を確立するため、現在の製造法に則り、実験的にヒト3次元皮下再生軟骨を作製した。ヌードラット背部皮下へ移植後、産総研に搬送し、超音波、CT、MRIなどを用いて、再生軟骨組織を非侵襲的に評価した。その後、再生軟骨組織を摘出し、組織学的評価ならびに生化学的評価を行った。さらに、臨床機を用いた測定プロトコールの作成を行った。
1-2) 対照群(従来法)のデータ作成
昨年に引き続き、自家腸骨移植法を施行した患者に対し、現行のヒト幹細胞臨床研究での評価項目を実施し、プロスペクティブに経過を追跡した。
2. 多施設臨床研究の実施
2-1)  採取した軟骨組織および製造した再生軟骨の搬出入技術の確立と実証
再生医療推進法の成立に伴い、インプラント型再生軟骨の製造を医療機関外に委託することが可能となる。そこで、インプラント型再生軟骨の製造場所を検討し、医療施設への組織搬出入技術を確立し、その有効性を検討した。
2-2) 多施設間でのトレーサビリティー構築
東京大学医学部附属病院内で運用されているトレーサビリティーを、東京医科歯科大学や山形大学でも共有できるようインターネット化を検討し、実証実験を継続した。
3.製造検査の効率化
無菌試験、マイコプラズマ否定試験(培養法・DNA染色法)などを、培養液の濁度やマイコプラズマPCRなどで一部代替えするための科学的検証を行った。
4. 改定版ヒト幹細胞臨床研究の申請書作成
多施設臨床研究に向けて、ヒト幹細胞臨床研究申請書の作成を進めた。
結果と考察
1. 有効性評価法の確立
1-1) 3次元皮下再生軟骨の非侵襲的評価
100%ヒト耳介軟骨細胞を使用した移植組織では、移植後2週から8週にかけて成熟が進行し、良好な軟骨成熟が観察された。一方、線維芽細胞が混入している再生軟骨では、ほとんど軟骨再生が認められなかった。また、産総研で行った測定結果から、TB面積, GAG, COL2 ELISAなどの軟骨基質蓄積のマーカーは、MRI測定値と高い正の相関を示すことが明らかとなった。また、モリブデンX線管球を用いることにより、ヌードラットへ移植された再生軟骨組織を詳細に撮像することが可能であった。また、ファントムを用いて、臨床機種での撮像条件の検討を行った。モリブデンX線管球のスペクトルに近い臨床機種として、マンモグラフィーを選定した。
1-2) 対照群(従来法)のデータ作成
昨年度に引き続き、自家腸骨移植法を施行した患者に対し、現行のヒト幹細胞臨床研究での評価項目(有害事象の有無、血液検査、疾患関連QOL評価、生活活動度評価、顔面形態評価)を実施した。
2. 多施設臨床研究の実施
2-1) 採取した軟骨組織および製造した再生軟骨の搬出入技術の確立と実証
東京医科歯科大学および山形大学においてヌードラットに移植された再生軟骨組織は、移植後8週で組織学的、生化学的に、良好な軟骨成熟像を示した。
2-2) 多施設間でのトレーサビリティー構築
東京大学医学部附属病院内で運用されているトレーサビリティーを、東京医科歯科大学医学部附属病院、山形大学医学部附属病院で共有できるようインターネット化を検討した。
3. 製造検査の効率化
東京大学医学部附属病院で行った自主臨床研究の3症例で回収した最終培養上清を用いて、Mycoplasma PCRを行った。サイクル数40が陰性、サイクル数50以上が陽性となることを確認することにより、マイコプラズマ否定試験の代替とすることが可能であることが示唆された。
4. 改定版ヒト幹細胞臨床研究の申請書作成
改定版ヒト幹細胞臨床研究の申請書において、再生軟骨組織の製造場所を検討した。
結論
インプラント型再生軟骨の非侵襲的評価法として、MRI測定値, モリブデンX線管球を選定した。また、製造場所を検討し、施設におけるインプラント型再生軟骨の作製と、医療施設への組織搬出入技術が有効であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201306010Z