文献情報
文献番号
199800187A
報告書区分
総括
研究課題名
緑茶による老年病予防に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
菅沼 雅美(埼玉県立がんセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
- 松島芳文(埼玉県立がんセンター研究所)
- 岡部幸子(埼玉県立がんセンター研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者の主な疾患であるがん、動脈硬化、循環器疾患、及び、糖尿病などの
老年病に対する効果的な予防法の確立が望まれている。本研究は、緑茶による老年病の予
防について、3H-(-)-epigallocatechin gallate(3H-EGCG)を用いた薬理学的研究、及び、生化
学的、分子生物学的な研究を行い、科学的データを提示することを目的とする。次に、疾
患モデルマウスとして、自然発症の高脂血症マウス、間質性肺炎のモデルとなるTNF-alpha
トランスジェニックマウス等を用い、緑茶の老年病に対する予防効果を証明することを目
的とする。
老年病に対する効果的な予防法の確立が望まれている。本研究は、緑茶による老年病の予
防について、3H-(-)-epigallocatechin gallate(3H-EGCG)を用いた薬理学的研究、及び、生化
学的、分子生物学的な研究を行い、科学的データを提示することを目的とする。次に、疾
患モデルマウスとして、自然発症の高脂血症マウス、間質性肺炎のモデルとなるTNF-alpha
トランスジェニックマウス等を用い、緑茶の老年病に対する予防効果を証明することを目
的とする。
研究方法
(1)3H-EGCGを用いた薬理学的研究:3H-EGCG 3.7 MBqを含む0.05%EGCG溶
液をCD-1マウス雄あるいは雌に、経口ゾンデで直接胃に投与した。その後、経時的に血液、
尿、糞便、及び臓器を採取し、オキシダイザーで放射活性を測定した。尿中の放射活性は
HPLCで分析した。(2)茶ポリフェノールによるTNF-alpha産生抑制に関する研究:ヒト胃
がん細胞株 KATO IIIを茶ポリフェノールで処理した。その1時間後、発がんプロモーター、
オカダ酸(50 nM)を加えて更に24時間培養した。培養液中に遊離されたTNF-alphaをELISA
法を用いて測定した。茶ポリフェノールによるTNF-alpha遺伝子発現の抑制は、32P-dCTP存
在下のRT-PCR法で検討した。茶ポリフェノール及びオカダ酸で処理した細胞から、核抽出
物を調整し、AP-1 の結合活性及び、NF-kB の結合活性をゲルシフト法によって検討した。
(3)ECとEGCGの相乗効果:ヒト肺がん細胞株PC-9を3H-EGCG 100 microMの存在下で2時
間培養した後、細胞を溶解して細胞内に取り込まれた放射活性を測定した。この際、非放
射活性の茶ポリフェノールを加えて細胞に取り込まれた放射活性を測定した。EC + EGCG、
EGCG単独、あるいは、 EC単独処理でTNF-alpha遊離抑制効果を検討した。(4)自然発症
高脂血症:SHLマウスはapolipoprotein Eの欠損によって、高脂血症を自然発症するマウスで
あり、埼玉県立がんセンター研究所で維持している。SHLマウスは普通飼料で飼育し、経時
的に血液を採取して、血清総コレステロール値を測定した。動脈硬化については、病理組
織学的に検索した。(5)間質性肺炎のモデルであるTNF-alphaトランスジェニックマウスに
おける緑茶抽出物のサイトカイン発現の抑制:Surfactant protein C遺伝子のプロモーターに、
マウスTNF-alphaの全コーディング領域を接続したキメラ遺伝子を導入したトランスジェニッ
クマウスでは、肺胞II型上皮細胞において、TNF-alphaが特異的に発現する。TNF-alphaトラ
ンスジェニックマウスに緑茶抽出物を0.1%の濃度で、生後直後から、4ヶ月間飲用させた。
実験群は、TNF-alphaトランスジェニックマウスに水を飲用させた未処理群と緑茶抽出物飲
用群の2群と正常マウスの未処理群と緑茶抽出物飲用群の2群の、合計4群とした。肺から総
RNAを抽出し、TNF-alpha、IL-1beta、及びIL-10遺伝子の発現を定量的RT-PCR法で測定した。
液をCD-1マウス雄あるいは雌に、経口ゾンデで直接胃に投与した。その後、経時的に血液、
尿、糞便、及び臓器を採取し、オキシダイザーで放射活性を測定した。尿中の放射活性は
HPLCで分析した。(2)茶ポリフェノールによるTNF-alpha産生抑制に関する研究:ヒト胃
がん細胞株 KATO IIIを茶ポリフェノールで処理した。その1時間後、発がんプロモーター、
オカダ酸(50 nM)を加えて更に24時間培養した。培養液中に遊離されたTNF-alphaをELISA
法を用いて測定した。茶ポリフェノールによるTNF-alpha遺伝子発現の抑制は、32P-dCTP存
在下のRT-PCR法で検討した。茶ポリフェノール及びオカダ酸で処理した細胞から、核抽出
物を調整し、AP-1 の結合活性及び、NF-kB の結合活性をゲルシフト法によって検討した。
(3)ECとEGCGの相乗効果:ヒト肺がん細胞株PC-9を3H-EGCG 100 microMの存在下で2時
間培養した後、細胞を溶解して細胞内に取り込まれた放射活性を測定した。この際、非放
射活性の茶ポリフェノールを加えて細胞に取り込まれた放射活性を測定した。EC + EGCG、
EGCG単独、あるいは、 EC単独処理でTNF-alpha遊離抑制効果を検討した。(4)自然発症
高脂血症:SHLマウスはapolipoprotein Eの欠損によって、高脂血症を自然発症するマウスで
あり、埼玉県立がんセンター研究所で維持している。SHLマウスは普通飼料で飼育し、経時
的に血液を採取して、血清総コレステロール値を測定した。動脈硬化については、病理組
織学的に検索した。(5)間質性肺炎のモデルであるTNF-alphaトランスジェニックマウスに
おける緑茶抽出物のサイトカイン発現の抑制:Surfactant protein C遺伝子のプロモーターに、
マウスTNF-alphaの全コーディング領域を接続したキメラ遺伝子を導入したトランスジェニッ
クマウスでは、肺胞II型上皮細胞において、TNF-alphaが特異的に発現する。TNF-alphaトラ
ンスジェニックマウスに緑茶抽出物を0.1%の濃度で、生後直後から、4ヶ月間飲用させた。
実験群は、TNF-alphaトランスジェニックマウスに水を飲用させた未処理群と緑茶抽出物飲
用群の2群と正常マウスの未処理群と緑茶抽出物飲用群の2群の、合計4群とした。肺から総
RNAを抽出し、TNF-alpha、IL-1beta、及びIL-10遺伝子の発現を定量的RT-PCR法で測定した。
結果と考察
(1)3H-EGCGを用いた薬理学的研究:3H-EGCGをマウス胃に直接経口ゾンデ
で投与し、経時的に血液、臓器、糞便、及び尿の放射活性を測定した。血液中の放射活性
は、3H-EGCG投与1時間後から認められ、その後、放射活性は徐々に増加した。24時間後
の全血液中の放射活性は、投与した約2%に相当した。雄、雌ともに、全身のほとんどの臓
器で有意な放射活性が認められた。尿中の放射活性をHPLCで分析すると3H-EGCGのピーク
と他に5つの3H-放射活性のピークが検出された。これらは、EGCGの代謝産物と考えられる。
即ち、飲用した茶ポリフェノールは吸収されて、血液中に取り込まれ、消化管だけでなく、
吸収されて遠隔臓器の脳や肺にも到達していることが示された。EGCGなどのタンニンは蛋
白質に結合しやすい性質を持つので、蛋白質に結合したEGCGや代謝産物を含めて測定でき
るような系を開発することが必要である。(2) 茶ポリフェノールによるTNF-alpha産生抑
制に関する研究:TNF-alphaはいろいろな老年病の発症や進展に関与しているサイトカイン
である。茶ポリフェノールによるTNF-alpha産生抑制とその作用機構について検討した。茶
ポリフェノール、EGCG、EGC及び、ECGは、BALB/3T3細胞、あるいは、KATO III細胞か
らのTNF-alphaの遊離を濃度に依存して抑制した。しかし、ECは 500 microMの濃度まで、
全く抑制を示さなかった。この結果から、ガロイル基を含む茶ポリフェノールはTNF-alpha
遊離抑制活性をもつことが明らかとなった。EGCGの処理は、オカダ酸によるAP-1 及び
NF-kBの活性化を共に抑制して、TNF-alpha遺伝子の発現を抑制することを見いだした。(3)
ECとEGCGの相乗効果:不活性型のECが3H-EGCGのPC-9細胞への取り込みを促進すること
を見いだした。ECが他の茶ポリフェノールの取り込みを促進して、その効果を増強すると
考えた。ECとEGCGの相乗効果をTNF-alpha遊離抑制で検討した。ECはそれ自身では全く抑
制を示さないが、EGCGと一緒に処理すると、EGCGのIC50を60 microMから15 microMへと
低い濃度にシフトした。即ち、ECは、EGCGのTNF-alpha産生抑制効果を約4倍増強した。す
なわち、不活性型のECは、ガロイル基を持つ茶ポリフェノールの取り込みを促進して、相
乗的に作用していることが示唆された。緑茶そのものの方が老年病のより有効な予防効果
が期待される。(4)自然発症高脂血症(SHL)マウスの解析:SHLマウスを用いて、茶ポ
リフェノールの高脂血症に対する抑制効果を検討するために、まず、血清総コレステロー
ルの経時的な変化、及び、動脈硬化について解析した。SHLマウスは普通飼料の飼育によっ
て、高い血清総コレステロール値を示した。8週齢以降ではほとんどのマウスが約1000
mg/dlの値を示し、これは正常マウスの10倍に相当する。動脈硬化病変は大動脈起始部に限
局していた。このデータを基に、緑茶飲用の血清総コレステロールに対する抑制効果を検
討している。(5)間質性肺炎のモデルであるTNF-alphaトランスジェニックマウスにおける
緑茶抽出物のサイトカイン発現の抑制:水を飲用させた未処理群のTNF-alphaトランスジェ
ニックマウスの肺では、強いTNF-alpha遺伝子の発現が認められた。0.1%の緑茶抽出物を4ヶ
月飲用させたTNF-alphaトランスジェニックマウスの肺では、TNF-alpha遺伝子発現は86%に
抑制された。更に、緑茶抽出物の飲用はIL-1betaとIL-10の遺伝子発現を減少させた。従って、
緑茶の飲用は、TNF-alphaの発現によって二次的に誘導されたIL-1beta、及びIL-10遺伝子の発
現を抑制すると考えられる。病理組織学的には、未処理群の緑茶抽出物処理群の間に差は
認められなかった。
で投与し、経時的に血液、臓器、糞便、及び尿の放射活性を測定した。血液中の放射活性
は、3H-EGCG投与1時間後から認められ、その後、放射活性は徐々に増加した。24時間後
の全血液中の放射活性は、投与した約2%に相当した。雄、雌ともに、全身のほとんどの臓
器で有意な放射活性が認められた。尿中の放射活性をHPLCで分析すると3H-EGCGのピーク
と他に5つの3H-放射活性のピークが検出された。これらは、EGCGの代謝産物と考えられる。
即ち、飲用した茶ポリフェノールは吸収されて、血液中に取り込まれ、消化管だけでなく、
吸収されて遠隔臓器の脳や肺にも到達していることが示された。EGCGなどのタンニンは蛋
白質に結合しやすい性質を持つので、蛋白質に結合したEGCGや代謝産物を含めて測定でき
るような系を開発することが必要である。(2) 茶ポリフェノールによるTNF-alpha産生抑
制に関する研究:TNF-alphaはいろいろな老年病の発症や進展に関与しているサイトカイン
である。茶ポリフェノールによるTNF-alpha産生抑制とその作用機構について検討した。茶
ポリフェノール、EGCG、EGC及び、ECGは、BALB/3T3細胞、あるいは、KATO III細胞か
らのTNF-alphaの遊離を濃度に依存して抑制した。しかし、ECは 500 microMの濃度まで、
全く抑制を示さなかった。この結果から、ガロイル基を含む茶ポリフェノールはTNF-alpha
遊離抑制活性をもつことが明らかとなった。EGCGの処理は、オカダ酸によるAP-1 及び
NF-kBの活性化を共に抑制して、TNF-alpha遺伝子の発現を抑制することを見いだした。(3)
ECとEGCGの相乗効果:不活性型のECが3H-EGCGのPC-9細胞への取り込みを促進すること
を見いだした。ECが他の茶ポリフェノールの取り込みを促進して、その効果を増強すると
考えた。ECとEGCGの相乗効果をTNF-alpha遊離抑制で検討した。ECはそれ自身では全く抑
制を示さないが、EGCGと一緒に処理すると、EGCGのIC50を60 microMから15 microMへと
低い濃度にシフトした。即ち、ECは、EGCGのTNF-alpha産生抑制効果を約4倍増強した。す
なわち、不活性型のECは、ガロイル基を持つ茶ポリフェノールの取り込みを促進して、相
乗的に作用していることが示唆された。緑茶そのものの方が老年病のより有効な予防効果
が期待される。(4)自然発症高脂血症(SHL)マウスの解析:SHLマウスを用いて、茶ポ
リフェノールの高脂血症に対する抑制効果を検討するために、まず、血清総コレステロー
ルの経時的な変化、及び、動脈硬化について解析した。SHLマウスは普通飼料の飼育によっ
て、高い血清総コレステロール値を示した。8週齢以降ではほとんどのマウスが約1000
mg/dlの値を示し、これは正常マウスの10倍に相当する。動脈硬化病変は大動脈起始部に限
局していた。このデータを基に、緑茶飲用の血清総コレステロールに対する抑制効果を検
討している。(5)間質性肺炎のモデルであるTNF-alphaトランスジェニックマウスにおける
緑茶抽出物のサイトカイン発現の抑制:水を飲用させた未処理群のTNF-alphaトランスジェ
ニックマウスの肺では、強いTNF-alpha遺伝子の発現が認められた。0.1%の緑茶抽出物を4ヶ
月飲用させたTNF-alphaトランスジェニックマウスの肺では、TNF-alpha遺伝子発現は86%に
抑制された。更に、緑茶抽出物の飲用はIL-1betaとIL-10の遺伝子発現を減少させた。従って、
緑茶の飲用は、TNF-alphaの発現によって二次的に誘導されたIL-1beta、及びIL-10遺伝子の発
現を抑制すると考えられる。病理組織学的には、未処理群の緑茶抽出物処理群の間に差は
認められなかった。
結論
経口的に飲用した茶ポリフェノールは、脳にも分布することが示され、脳疾患の予防
にも緑茶が有効であると期待される。更に、茶ポリフェノールが互いに相乗的に作用して
いることから、老年病の予防において、緑茶はより効果的な飲み物であると考える。
TNF-alphaは様々な疾患に関与する炎症性サイトカインであり、TNF-alphaの発現が、サイト
カインネットワークを介して次の様々なサイトカインの発現をもたらす。茶ポリフェノー
ルは、TNF-alpha遺伝子の発現、及び遊離を抑制し、サイトカインネットワークによる二次
的なサイトカインの発現も抑制することが明らかとなった。
にも緑茶が有効であると期待される。更に、茶ポリフェノールが互いに相乗的に作用して
いることから、老年病の予防において、緑茶はより効果的な飲み物であると考える。
TNF-alphaは様々な疾患に関与する炎症性サイトカインであり、TNF-alphaの発現が、サイト
カインネットワークを介して次の様々なサイトカインの発現をもたらす。茶ポリフェノー
ルは、TNF-alpha遺伝子の発現、及び遊離を抑制し、サイトカインネットワークによる二次
的なサイトカインの発現も抑制することが明らかとなった。
公開日・更新日
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