文献情報
文献番号
201306007A
報告書区分
総括
研究課題名
重症心不全に対する骨格筋筋芽細胞シート移植による心筋再生治療の実用化研究
課題番号
H24-再生-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 宮川 繁(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
- 齋藤 充弘(国立大学法人大阪大学 医学部附属病院)
- 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性の拡張型心筋症の治療において、これまでの補助人工心臓より心臓移植への橋渡し治療のみでは、限界があるのが現状である。この限界を克服するために、本研究では、筋芽細胞シートの臨床応用の継続を行い、最終的には、その効果の検討と、保険医療化を目指している。
本年度は、拡張型心筋症に対する新規治療の開発のため、筋芽細胞シートの臨床応用を中心に研究を行った。また、ヒト重症心不全に対する筋芽細胞シート治療の可能性、安全性を解析する評価方法の確立を行うとともに、医師主導型治験の申請を行う。
本年度は、拡張型心筋症に対する新規治療の開発のため、筋芽細胞シートの臨床応用を中心に研究を行った。また、ヒト重症心不全に対する筋芽細胞シート治療の可能性、安全性を解析する評価方法の確立を行うとともに、医師主導型治験の申請を行う。
研究方法
1.拡張型心筋症患者に対する筋芽細胞シート移植
当院にて重症拡張型心筋症患者に対して、骨格筋採取を行い、当院未来医療センターのCell processing centerにて、GMP基準を満たす筋芽細胞を単離し、温度応答性培養皿を用いて、筋芽細胞シートを作成する。新規植え込み型定常流人工心臓を装着し、筋芽細胞シート移植を行い、細胞シートによる人工心臓よりの"Bridge to Recovery"を目指す。また、人工心臓を装着していない拡張型心筋症患者に対する筋芽細胞シート移植を行う。
2.筋芽細胞シート移植治療の可能性、安全性を適切に評価できるようなシステムの開発
3.細胞培養施設(CPC)で製造される細胞製剤の薬事対応を担保するCPC図書作成に必要な施設・製造・品質保証要件を検討する。
当院にて重症拡張型心筋症患者に対して、骨格筋採取を行い、当院未来医療センターのCell processing centerにて、GMP基準を満たす筋芽細胞を単離し、温度応答性培養皿を用いて、筋芽細胞シートを作成する。新規植え込み型定常流人工心臓を装着し、筋芽細胞シート移植を行い、細胞シートによる人工心臓よりの"Bridge to Recovery"を目指す。また、人工心臓を装着していない拡張型心筋症患者に対する筋芽細胞シート移植を行う。
2.筋芽細胞シート移植治療の可能性、安全性を適切に評価できるようなシステムの開発
3.細胞培養施設(CPC)で製造される細胞製剤の薬事対応を担保するCPC図書作成に必要な施設・製造・品質保証要件を検討する。
結果と考察
1.筋芽細胞シート臨床研究
ヒト幹細胞臨床研究指針に適合した、安全性を主要評価項目とする臨床研究で、重症拡張型心筋症及び虚血性心筋症17例において筋芽細胞シート移植を完遂し、テルモ社治験において4例施行した。人工心臓装着した拡張型心筋症患者に関しては、4例移植を完遂している。本グラント開始から、拡張型心筋症6例、虚血性心筋症患者3例に対して筋芽細胞シート移植を行った。全ての症例で手術は完遂し、筋芽細胞シートに関連した有害事象は認めていない。
これまでの、一部の筋芽細胞シート移植患者において左室のリバースレモデリングが認められ、症状、運動耐用能の改善を認めている。また、筋芽細胞シート移植を行った患者の術前のデータを参考に、"The Seattle Heart Failure Model"を用いて、予測生命予後を算出し、実際の生命予後と比較した。筋芽細胞シート移植を受けた患者は、予測生命予後と比較して、良好である可能性があると思われる。
2.筋芽細胞シート移植治療の可能性、安全性を適切に評価できるようなシステムの開発
臨床研究を行い、様々な心不全に関するパラメーターを集積することができた。最終的に、筋芽細胞シート移植の効果に関するエンドポイントは生命予後の延長であると考えているが、生命予後の解析には時間を要するため、生命予後と相関するパラメーターを検索する必要がある。
3.細胞培養施設(CPC)で製造される細胞製剤の薬事対応を担保するCPC図書作成に必要な施設・製造・品質保証要件の検討
GMPではハードウエアとソフトウエアの両立が必要で、ハードとしての施設・設備・機器と、ソフトとしての文書・製造・試験方法・清掃・組織・教育訓練を両輪として初めて成り立つ品質保証システムを確立した。
4.心筋症に対する筋芽細胞シートの医師主導型治験への申請
また、HM0801臨床研究は拡張型心筋症7例、虚血性心筋症8例を施行し、2013年に終了し、現在最終報告書を作成している。本報告書は、企業治験のデータとともに、薬事承認の参考データとしてPMDAに提出予定である。H25年に、拡張型心筋症、虚血性心筋症に対する筋芽細胞シートの安全性、有効性を評価するHM1303臨床研究がヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会にて承認され、H26年より開始している。また、拡張型心筋症における筋芽細胞シート治療の医師主導型治験の準備のため、PMDAに対面助言、事前面談を行った。
考察:筋芽細胞シート移植手術は全て安全に完遂されており、術後筋芽細胞シート移植に関連した有害事象は認められていない。また、生命予後の延長の可能性、症状、運動耐用能の改善等の可能性が示唆された。これらのデータをもとに、心不全に対する有効性の評価指標の確定と、再生医療特有のスタディデザインを考案することが必要である。虚血性心筋症に対する企業治験、大阪大学での虚血性心筋症に対する臨床研究のデータを元に、薬事申請を行う予定である。また、今回、拡張型心筋症に対する筋芽細胞シートの臨床研究、医師主導型治験を行うことにより、同治療の拡張型心筋症への適応拡大を行う予定である。
ヒト幹細胞臨床研究指針に適合した、安全性を主要評価項目とする臨床研究で、重症拡張型心筋症及び虚血性心筋症17例において筋芽細胞シート移植を完遂し、テルモ社治験において4例施行した。人工心臓装着した拡張型心筋症患者に関しては、4例移植を完遂している。本グラント開始から、拡張型心筋症6例、虚血性心筋症患者3例に対して筋芽細胞シート移植を行った。全ての症例で手術は完遂し、筋芽細胞シートに関連した有害事象は認めていない。
これまでの、一部の筋芽細胞シート移植患者において左室のリバースレモデリングが認められ、症状、運動耐用能の改善を認めている。また、筋芽細胞シート移植を行った患者の術前のデータを参考に、"The Seattle Heart Failure Model"を用いて、予測生命予後を算出し、実際の生命予後と比較した。筋芽細胞シート移植を受けた患者は、予測生命予後と比較して、良好である可能性があると思われる。
2.筋芽細胞シート移植治療の可能性、安全性を適切に評価できるようなシステムの開発
臨床研究を行い、様々な心不全に関するパラメーターを集積することができた。最終的に、筋芽細胞シート移植の効果に関するエンドポイントは生命予後の延長であると考えているが、生命予後の解析には時間を要するため、生命予後と相関するパラメーターを検索する必要がある。
3.細胞培養施設(CPC)で製造される細胞製剤の薬事対応を担保するCPC図書作成に必要な施設・製造・品質保証要件の検討
GMPではハードウエアとソフトウエアの両立が必要で、ハードとしての施設・設備・機器と、ソフトとしての文書・製造・試験方法・清掃・組織・教育訓練を両輪として初めて成り立つ品質保証システムを確立した。
4.心筋症に対する筋芽細胞シートの医師主導型治験への申請
また、HM0801臨床研究は拡張型心筋症7例、虚血性心筋症8例を施行し、2013年に終了し、現在最終報告書を作成している。本報告書は、企業治験のデータとともに、薬事承認の参考データとしてPMDAに提出予定である。H25年に、拡張型心筋症、虚血性心筋症に対する筋芽細胞シートの安全性、有効性を評価するHM1303臨床研究がヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会にて承認され、H26年より開始している。また、拡張型心筋症における筋芽細胞シート治療の医師主導型治験の準備のため、PMDAに対面助言、事前面談を行った。
考察:筋芽細胞シート移植手術は全て安全に完遂されており、術後筋芽細胞シート移植に関連した有害事象は認められていない。また、生命予後の延長の可能性、症状、運動耐用能の改善等の可能性が示唆された。これらのデータをもとに、心不全に対する有効性の評価指標の確定と、再生医療特有のスタディデザインを考案することが必要である。虚血性心筋症に対する企業治験、大阪大学での虚血性心筋症に対する臨床研究のデータを元に、薬事申請を行う予定である。また、今回、拡張型心筋症に対する筋芽細胞シートの臨床研究、医師主導型治験を行うことにより、同治療の拡張型心筋症への適応拡大を行う予定である。
結論
本研究にて、筋芽細胞シート移植術の安全性を確認することができた。また、有効性の可能性を探索することが可能であり、医師主導型治験へステップアップする基本情報を得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2015-03-03
更新日
-