表皮水疱症に対する間葉系幹細胞移植再生医療の実用化研究

文献情報

文献番号
201306006A
報告書区分
総括
研究課題名
表皮水疱症に対する間葉系幹細胞移植再生医療の実用化研究
課題番号
H24-再生-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
玉井 克人(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 一朗(大阪大学 医学系研究科 )
  • 金田 眞理(大阪大学 医学系研究科 )
  • 金田 安史(大阪大学 医学系研究科 )
  • 金倉 譲(大阪大学 医学系研究科 )
  • 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究科)
  • 出沢 真理(東北大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで我々は、表皮水疱症病態で骨髄内間葉系幹細胞が剥離表皮部に集積して皮膚再生に寄与していることから骨髄間葉系幹細胞移植が表皮水疱症治療に有効である可能性を見出した。これらの研究成果を基に「表皮水疱症患者を対象とした骨髄間葉系幹細胞移植臨床研究」の実施を目的として研究を進めている。平成25年度は、コールドラン結果を基に改定した実施計画書の承認を得て、臨床研究を開始した。
研究方法
1)骨髄間葉系幹細胞移植臨床研究の実施
実施計画書の改定・承認:昨年度に実施した骨髄間葉系幹細胞培養コールド・ランの結果を踏まえて平成24年度10月に実施計画書の改訂版を作成・提出していた。その後さらに実施計画書内容の一部変更申請を行って、平成25年6月に最終改訂版実施計画書の承認を得、その内容に従って臨床研究を開始した。
2)骨髄間葉系幹細胞の全身性移植の妥当性評価
全身性骨髄間葉系幹細胞移植の妥当性を証明する目的で、組織壊死因子由来の骨髄間葉系幹細胞血中動員因子であるhigh mobility group box 1をマウス尾静脈より血中投与し、末梢血中に出現する骨髄由来細胞における間葉系幹細胞について、間葉系幹細胞マーカーである血小板増殖因子受容体α(platelet-derived growth factor α, PDGFRα)及び多能性Muse細胞マーカーであるSSEA3を用いて評価した。さらに、GFP骨髄移植マウスへの皮膚移植モデルを用いてHMGB1投与により移植皮膚片に集積した骨髄由来間葉系細胞の皮膚再生誘導効果について解析を進めた。
結果と考察
【結果】
1)間葉系幹細胞移植臨床研究
本年7月から、大阪大学附属病院皮膚科表皮水疱症外来を受診中の、本臨床研究参加を希望する患者およびその家族に改定版臨床研究プロトコールを説明し、臨床研究参加を希望する患者およびその家族のエントリーを開始し、以後実施計画書に従って骨髄間葉系幹細胞移植を実施した。各症例の詳細は以下の通り。
1例目:8月に38歳女性の劣性栄養障害型表皮水疱症患者および性の異なる健常家族ドナー(弟)から臨床研究参加の同意を文章にて取得し、ドナーからの骨髄血20mlを採取して間葉系幹細胞の培養を開始。9月に後頚部から上背部にかけて存在する難治性皮膚潰瘍周囲に培養間葉系幹細胞を移植。
2例目:9月に27歳男性の劣性栄養障害型表皮水疱症患者および性の異なる健常家族ドナー(母親)から臨床研究参加の同意取得し、ドナー骨髄間葉系幹細胞培養開始。10月に右顔面から頚部にかけて存在する難治性皮膚潰瘍周囲に培養間葉系幹細胞を移植。
3例目:11月に40歳女性の劣性栄養障害型表皮水疱症および性の異なる健常家族ドナー(兄)から臨床研究参加の同意を得、ドナー骨髄間葉系幹細胞培養開始。12月に右上背部の難治性皮膚潰瘍周囲に培養間葉系幹細胞を移植。
2)全身性間葉系幹細胞移植の妥当性評価
 GFP骨髄移植マウス背部に新生VII型コラーゲンマウス皮膚を移植した後、HMGB1を尾静脈より投与し、移植片に集積した骨髄由来GFP陽性間葉系細胞の性質と機能について検討した。その結果、HMGB1投与群では非投与群と比較して骨髄由来GFP陽性かつPDGFRα陽性細胞が移植皮膚片内に有意に増加していた。さらに、組織学的観察ではHMGB1投与群で皮膚基底膜部位にVII型コラーゲンの発現が観察され、また皮膚炎症状の抑制、血管新生亢進が観察された。植皮片から回収した細胞分画の中で、骨髄由来GFP陽性PDGFRα陽性間葉系細胞でVII型コラーゲンの発現が確認された。
【考察】
  現時点でいずれの症例においても、自覚的、他覚的異常は認められていない一方で、数ヶ月~数年間上皮化の認められていない難治性皮膚潰瘍が、移植後1月以内に縮小傾向を示している。しかし、3症例ともにHLA主要3遺伝子座のいずれも少なくとも片方のアリルがミスマッチであったことから、移植細胞の長期生着の可能性については現時点では不明である。今後の評価により表皮水疱症に対する骨髄間葉系幹細胞移植の安全性・有効性が確認されることを期待したい。
結論
表皮水疱症患者を対象とした骨髄間葉系幹細胞移植を開始し、3症例への移植を終了した。また、全身性間葉系幹細胞移植治療の妥当性について情報を集積した。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201306006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
49,400,000円
(2)補助金確定額
49,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,143,914円
人件費・謝金 5,212,025円
旅費 0円
その他 12,644,061円
間接経費 11,400,000円
合計 49,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
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