ヒト胚性幹細胞をドナー細胞とする再生医療の汎用性向上のための基盤技術の創成

文献情報

文献番号
201306004A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胚性幹細胞をドナー細胞とする再生医療の汎用性向上のための基盤技術の創成
課題番号
H23-再生-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 生殖・細胞医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 末盛 博文(京都大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞・組織加工医薬品等による再生医療は、ヒトの臓器や組織の確保が難しいわが国の医療状況下において強く期待されており、研究の進歩に伴う技術的な実現可能性の高まりとともに、医療としての実用化を望む声がますます強くなっている。その中で、わが国をあげて再生医療の実用化に向けた動きが急速に進められており、特にヒト由来の多能性幹細胞、すなわち間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)について、近い将来に予想される製品の評価を円滑に進めるための準備を早期に行う必要がある。各種幹細胞の実用化のために必要な要件を開発初期から示すことは、これらをより迅速に実用化するために必須である。「細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確認申請記載要領(薬食審査発0420第1号平成22年4月20日)」に従い、ES細胞の安全性・有効性に関する検討を行う。具体的には原材料及び製造関連物質、製造工程、 加工した細胞の特性解析、最終製品の形態・包装、製造方法の恒常性及び妥当性、製造方法の変更、製造施設・設備の概要、感染性物質の安全性評価、最終製品の品質管理法、試験方法のバリデーション、規格及び試験方法の妥当性、試験に用いた検体の分析結果、細胞・組織加工医薬品の非臨床安全性試験、細胞・組織加工医薬品等の効力又は性能を裏付ける試験、細胞・組織加工医薬品等の体内動態、臨床試験に関して詳細に検討し、細胞医療の安全性及び有効性に関するデータの蓄積と周辺基盤技術を構築する。特に小児難治性疾患(特に先天性代謝異常症)に対する再生移植療法応用を視野に入れた早期実用化に資することを目的とする。
研究方法
再生医療原料基準(案)を意識したうえで、臨床試験研究に提供できる新たなES細胞の培養を行った。特に、幹細胞を未分化状態に保つための維持培養に必須の要素について検討を行った。その際に用いた材料について情報を収集し、その妥当性について検討した。
結果と考察
不死細胞を原材料とすれば、対象疾患の治療に必要な細胞の製造を大量かつ安定的に行うことが可能である。
1. 新たに樹立されたヒトES細胞を用いた。臨床試験研究に提供する新たなES細胞の培養工程に関する検討を行った。本年度は、昨年度に引き続き未分化度試験、細胞純度試験をパッケージとして行った。
2. 新たに樹立されたヒトES細胞株に関して感染症について検査し、否定試験を行った。細菌・真菌否定試験(好気性) 、細菌・真菌否定試験(嫌気性) 、糸状性真菌否定試験 、エンドトキシン、マイコプラズマ否定試験、培養細胞ウイルス否定試験(HCV-RNA、HBV-DNA、パルボウイルス DNA、HTLV-1 プロウイルス DNA、HIV-1 プロウイルス DNA)を行い、すべて陰性であった。

本研究はES細胞に特化して研究を推進する。ES細胞はその増殖能、多分化能より、将来的に期待されており、最適のドナー細胞の選択肢となりつつある。これを異種由来の影響を排除して完全ヒト型培養システムの下で行う意義は大きい。より安全性の高い再生医療基盤を社会へ提示することが可能となる。
結論
本研究によりES 細胞の完全ヒト型培養法の確立を通じて、細胞調整・培養法の標準化ならびにヒト幹細胞の規格化に重点を置いた。対象とする細胞はES 細胞であるが、ここで得られた成果は、細胞治療を行うにあたっての基準として他のヒト幹細胞への応用を図ることが可能であり、わが国における再生医療を安全に実施するための共通技術として広い分野で貢献できた。さらに、このような科学的共通基盤に基づいた再生医療の推進が、治療効果の判定に有用であるばかりか、社会的信頼を得、国民の合意形成にも貢献することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201306004B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト胚性幹細胞をドナー細胞とする再生医療の汎用性向上のための基盤技術の創成
課題番号
H23-再生-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 生殖・細胞医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 陽治(国立食品医薬品衛生研究所)
  • 末盛 博文(京都大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞・組織加工医薬品等による再生医療は、ヒトの臓器や組織の確保が難しいわが国の医療状況下において強く期待されており、研究の進歩に伴う技術的な実現可能性の高まりとともに、医療としての実用化を望む声がますます強くなっている。その中で、わが国をあげて再生医療の実用化に向けた動きが急速に進められており、特にヒト由来の多能性幹細胞、すなわち間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)について、近い将来に予想される製品の評価を円滑に進めるための準備を早期に行う必要がある。各種幹細胞の実用化のために必要な要件を開発初期から示すことは、これらをより迅速に実用化するために必須である。「細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確認申請記載要領(薬食審査発0420第1号平成22年4月20日)」に従い、ES細胞の安全性・有効性に関する検討を行う。具体的には原材料及び製造関連物質、製造工程、 加工した細胞の特性解析、最終製品の形態・包装、製造方法の恒常性及び妥当性、製造方法の変更、製造施設・設備の概要、感染性物質の安全性評価、最終製品の品質管理法、試験方法のバリデーション、規格及び試験方法の妥当性、試験に用いた検体の分析結果、細胞・組織加工医薬品の非臨床安全性試験、細胞・組織加工医薬品等の効力又は性能を裏付ける試験、細胞・組織加工医薬品等の体内動態、臨床試験に関して詳細に検討し、細胞医療の安全性及び有効性に関するデータの蓄積と周辺基盤技術を構築する。特に小児難治性疾患(特に先天性代謝異常症)に対する再生移植療法応用を視野に入れた早期実用化に資することを目的とする。
研究方法
臨床試験研究に提供できる新たなES細胞の培養を行った。特に、幹細胞を未分化状態に保つための維持培養に必須の要素について下記の5項目を中心に検討を行った。
1. 原材料の確認を行った。
2. 製造関連物質の確認を行った。
3. 製造工程バリデーションを行った。
4. 加工した細胞の特性解析を行った。
5. 感染性の否定試験を行った。
結果と考察
原材料及び製造関連物質については、試薬メーカー、実験器具メーカーの協力のもと、成分開示から安全性試験の実施状況、原産地証明等の書類を入手し、生物由来原料のみならず、化学合成にて生産される試薬類にいたるまでの安全性の確認を行った。製造工程、加工した細胞の特性解析項目については、現在ES細胞のバンク化を進めており、そのための特性解析項目が決定した。バンク化の考え方を整理し、マスターセルバンク(MCB)、ワーキングセルバンク(WCB)を作製した。感染性の否定試験については、ヒトES細胞株に関して特にB型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、成人T細胞白血病(HTLV)、パルボウイルスB19感染症について検査し、否定試験を行い、すべて陰性であった。正常なヒト胚由来細胞から作成されるES細胞は無限に増加する特性を有しているうえに、正常な機能を有する多様な細胞への分化能をもつ細胞である。また、均質な細胞集団として大量培養が可能であり、これをバンキングすることにより長期安定して供給することが可能となる。従って、ヒトES細胞を原材料とすれば、対象疾患の治療に必要な細胞の製造を大量かつ安定的に行うことが可能である。
結論
現在までに国内で2施設がその樹立機関として認定されている(京都大学、国立成育医療研究センター)。しかしながら臨床応用を開始するまでは多くの基盤研究ならびに細胞の整備が必要となる。本申請に用いるES細胞は、主任研究者である梅澤(樹立責任者18諸文科振第832号平成19年3月5日)らが、樹立初期から「ヒトES細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針案」を意識した、樹立・培養を行った。このES細胞を用いた再生医療が現実味を帯びてきている。ES細胞自体を生体内マイクロデバイスとして利用する新たな治療戦略を現実するために必要なステップとして、1) 原材料及び製造関連物質の明確化(体外受精胚の起源・選択理由の明示、ドナー選択の倫理的妥当性、培養方法、培養材料の明示等)、2) 製造工程の明確化、3) 最終製品の品質管理法の確立がある。このような世界的な状況の中で、ヒトES細胞の維持および可塑性の分子基盤を明確にすることを目指し、その評価・検証システムの元にES細胞の提供までを視野に入れた「ヒト胚性幹細胞をドナー細胞とする再生医療の汎用性向上のための基盤技術開発」は再生医療促進にとって必要不可欠なものである。

公開日・更新日

公開日
2015-03-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201306004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒト胚性幹細胞をドナー細胞とする再生医療の汎用性向上のために、原材料及び製造関連物質、製造方法の恒常性及び妥当性、施設・設備の概要、感染性物質の安全性評価、試験方法のバリデーション、規格及び試験方法の妥当性に関して、我が国における再生医療等製品及び特定細胞加工医薬品の原料としてヒト胚性幹細胞を分析した。
臨床的観点からの成果
再生医療製品の原材料に対する考え方を整理し、要素技術に対する具体的な検討を加えたことで、細胞治療の臨床応用に資するモデルを提示できた。
ガイドライン等の開発
・「再生医療等製品原料基準のあり方に関する検討WG」において、医薬品医療機器等法における生物原材料基準に関し、研究代表者を通じて情報提供がなされた。第1回 平成25年6月28日(金)第2回 平成25年8月2日(金)第3回 平成25年10月1日(火)第4回 平成25年10月29日(火)第5回 平成25年12月17日(火)
・「再生医療等の安全性確保等のための基準策定に関する研究班」に参画し、ES細胞の安全性に関わる情報提供を行った。


その他行政的観点からの成果
ES細胞研究は、人工多能性幹細胞の臨床応用を先導することができる再生医療技術となりうる。ヒトES細胞をはじめとする未分化性の非常に高いヒト細胞は、原料として理論的に無限に増殖させることが可能であることより、品質を一定にでき、一ロットのスケールを増すことができることより、再生医療での重要な細胞ソースとなる。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishino K, Toyoda M, et al.
DNA methylation dynamics in human induced pluripotent stem cells over time
PloS Genet , 7 (5) , e1002085-  (2011)
doi: 10.1371/journal.pgen.1002085

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2017-05-30

収支報告書

文献番号
201306004Z