疫学研究に係る倫理審査委員会の実態把握と臨床研究に係る倫理審査委員会等との比較研究

文献情報

文献番号
201305036A
報告書区分
総括
研究課題名
疫学研究に係る倫理審査委員会の実態把握と臨床研究に係る倫理審査委員会等との比較研究
課題番号
H25-特別-指定-019
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
玉腰 暁子(北海道大学大学院 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田代 志門(昭和大学)
  • 松井 健志(独立行政法人国立循環器病研究センター)
  • 會澤 久仁子(独立行政法人国立循環器病研究センター)
  • 磯 博康(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,247,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「疫学研究に関する倫理指針」(平成19年文部科学省・厚生労働省告示第1号)については、平成26年4月の改正指針の施行を目指し、現在厚生科学審議会科学技術部会に設置された「疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会」による会議において見直しの検討が進められている。この見直しでは「臨床研究に関する倫理指針」(平成20年厚生労働省告示第415号)と統合する方向で検討が進められているが、その際の論点のひとつとして各研究機関における倫理審査委員会の質のばらつきが指摘され、その改善策につき議論されている。しかし、臨床研究に係る倫理審査委員会については、指針により委員会情報の年1回の厚生労働大臣等への報告が義務付けられていることからある程度の実態は把握されている一方で、疫学研究に係る倫理審査委員会については報告規定がないことから、実態を知る手段がない。また、侵襲性を伴う臨床研究については、倫理審査委員会を地域毎に拠点・標準化し、対象者への侵襲性が高い研究は拠点化した委員会で審査を行うことが提案されている。一方、多くの疫学研究は侵襲性が低いことから、引き続き各研究機関が設置する倫理審査委員会を活用することが想定され、その倫理審査の質の実態把握と一定以上の質の確保は喫緊の課題である。
そこで、主に疫学研究を審査している倫理審査委員会を対象とする調査を実施した。
研究方法
全国の医学、公衆衛生学、歯学、薬学、看護学、理学療法・作業療法学、放射線科学、検査学、栄養学、体育学等の「疫学研究に関する倫理指針」の対象となる研究を行っていると推測される学術分野の研究機関(合計599か所)宛に調査依頼を行った(対象選定の詳細は、研究報告書p.2を参照)。
調査は郵送により実施し、調査への回答をもって、研究に同意したとみなした(複数の倫理審査委員会を持つ場合の対象倫理審査委員会確定方法は研究報告書p.2を参照)。調査項目は、今までに実施された倫理審査委員会を対象とする調査、ならびに現在臨床倫理指針で登録が求められている項目を参考に確定した(研究報告書資料2調査票を参照)。調査票は8月に送付、9月を締め切りとし、再依頼を1回行った。なお、回答は無記名とし、回答された個別情報は研究班と厚労省内のみで共有し外部には出ないこと、その情報をもって個別の行政的指導などには使用しないことを周知した。
結果と考察
調査の結果、委員構成や委員名簿の公開等に関し、指針の規定から外れている審査委員会が存在することが明らかとなり、この割合は臨床研究倫理審査委員会報告システムに報告されていない施設で高い結果であった。また、審査を効率・迅速化するための仕組みである迅速審査の仕組みを持っていない施設が3割程度あった。委員会を支える事務局体制については、回答のあった施設中、教員/研究職員0人が5割、事務局員1人以下が4割と十分とは言えず、監査も約半数の施設では行われていなかった。研究者に対する教育研修、倫理審査委員に対する研修も、現状では十分とは言えないが、施設単位での対応には限界があり、教育コンテンツの開発や地域・学会単位等での研修会開催などが必要と考えられた。
結論
現在進められている指針の見直しでは、これらの現状を踏まえ、よりわかりやすい指針とする一方、遵守を容易にする資源確保と環境整備も重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201305036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
委員構成や委員名簿の公開等に関し指針の規定から外れている審査委員会が存在すること、審査を効率・迅速化するための仕組みである迅速審査の仕組みを持っていない施設が3割程度あること、事務局体制が不十分であることなど、研究の質を保つための倫理審査委員会の課題を明らかにした。一方で、現状を考えると、施設単位での対応には限界があり、教育コンテンツの開発や地域・学会単位等での研修会開催などが必要と考えられた。
臨床的観点からの成果
本研究により明らかとなった倫理審査委員会の実態は2015年4月に施行された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」策定過程に活かされた。したがって、今後実施される人を対象とする医学系研究に関しては、今まで以上に適切な形で審査が行われるものと期待される。
ガイドライン等の開発
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」につき検討していた平成25年12月13日開催第8回疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議で中間報告を行った。
その他行政的観点からの成果
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を検討する疫学研究に関する倫理指針及び臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る合同会議で把握された倫理審査委員会の現状とその課題を報告し、倫理審査のあり方や教育研修に関する指針の定めに示唆を与えた。
その他のインパクト
調査結果を周知するため、CRCと臨床試験のあり方を考える会議(研究倫理審査の標準化/集約化を目指して)、日本生命倫理学会(変革期の倫理審査委員会 これから10年の課題)、日本疫学会(疫学研究の倫理と規制 ―倫理的に妥当な疫学研究を実施するために―)の各総会時にシンポジウムや教育講演を企画、報告し、関連分野の研究者と討議した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(2015年4月1日施行)中の倫理審査のあり方や教育研修に関する指針の定めに示唆を与えた。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
2018-06-12

収支報告書

文献番号
201305036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,521,000円
(2)補助金確定額
5,417,832円
差引額 [(1)-(2)]
103,168円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,027,373円
人件費・謝金 297,255円
旅費 736,732円
その他 2,082,472円
間接経費 1,274,000円
合計 5,417,832円

備考

備考
当初の予定より旅費が少なくすんだため。

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-