新型インフルエンザ等を起因とする急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する体外式膜型人工肺(ECMO)療法の治療成績向上の為のシステム構築

文献情報

文献番号
201305025A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ等を起因とする急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する体外式膜型人工肺(ECMO)療法の治療成績向上の為のシステム構築
課題番号
H25-特別-指定-024
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
竹田 晋浩(日本医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 氏家 良人     (岡山大学 医学部)
  • 行岡 哲男    (東京医科大学 医学部)
  • 森島 恒雄( 岡山大学 医学部)
  • 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター 救命集中治療部)
  • 増野 智彦(日本医科大学 医学部)
  • 落合 亮一(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦におけるH1N1インフルエンザに対するECMOの治療成績は、他の先進国の生存率が70%以上であったのと比べて本邦は半分(約35%)と、著しく劣っていた。この状況を改善させるために、我が国のARDSに対するECMO療法の現状と成績の評価、改善点の抽出を行いその改善点を基に、包括した教育法や手引き等の作成を行う事が目的とされた。
研究方法
1)本邦のECMO療法の実態調査を行うためにアンケート調査。
2)英国におけるEMCOセンター(Severe respiratory failure centre)設立に関する調査。
3)ECMO療法に関する医療提供のあり方及びECMO療法導入済み患者搬送の検討。
4)ECMOシミュレーション・ラボ。
5)日本集中治療医学会との共同企画。
6)成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン作成。
結果と考察
1)対象は日本呼吸療法医学会と日本集中治療医学会の評議員323人。回答率は57%(184人)。重症呼吸不全に対しECMO治療ができると回答した人は87%。同様に全国救命救急センターへ調査を行った。265施設、回答45施設(17%)。重症呼吸不全に対しECMO治療ができると回答した施設は98%。しかし、呼吸不全に対しECMOを行うための世界標準器材を整備している施設は10%以下。さらに世界標準の治療成績を維持するための症例数を治療している施設は皆無であった。本邦でのECMOが如何に、不十分な認識の基に行われているか判明した。
2)英国National Health ServiceによるECMOセンターを訪問し、重症呼吸不全に対するECMOを含めた治療センター設立の要件を確認した。ECMO センターの基準、ECMOのエビデンスの確認、評価基準、National Health ServiceによるECMOの位置づけ、具体的なECMOセンターの管理システム、ECMOセンターの成績評価基準の設置などを確認した。
3)シミュレーション人形、ECMO器材を含む実際の医療器機全てを装備した状態で、救急車を用い、日本医科大学付属病院と都立小児医療センターとの間でECMO患者搬送のシミュレーションを行い、問題点を検討した。
4)当初、研修室の大きさより、最大40名での開催を考えていたが、各施設から多数の応募により57名での開催となった。これでもかなりの施設にお断りの連絡を入れた。この反響はECMOに携わる各施設の治療に対するレベルを上げようとする関心の表れだと考える。
今回のシミュレーションは、ECMO Simulation1として、実際の患者データを元に、<講師対受講者>という形で治療方針におけるDiscussionをおこなった。受講者からは、各ライセンスに関わらず活発な意見交換がみられ、講義内容を真剣に聞き入っている姿が見られた。
ECMO Simulation2は機器を数台そろえ、カロリンスカECMOセンターにならったECMOシステムの説明、回路内圧の把握、トラブルシューティングをおこなった。なかでも<人工肺交換>を実際にチームでおこない、ECMO治療におけるチーム体制の重要さを再認識できたと考える。最後に参加者に対しアンケートに協力して頂いたが、<シミュレーション内容について>は94%の<ためになった>という回答が得られた。
5)第41回日本集中治療医学会学術集会、開催地:京都、開催日時:平成26年2月28日~3月2日。シンポジウム:重症呼吸不全に対するECMO治療システムをどう構築するか。ECMOプロジェクトによる症例検討会。ECMOシミュレーション・ラボの基本方針について。これらを開催した。
6)新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業(重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の病態解析・診断・治療に関する研究)、新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業(成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究)および本研究事業の3つの研究班による合同作成で行われた。

結論
本邦でのECMOが如何に、不十分な認識の基に行われているか判明した。これにより、今後はさらなる啓蒙活動が必要であることが確認された。関連学会との共同企画は、医療従事者に対しECMOを啓蒙する活動となるであろう。
治療成績を改善させる為には、本邦でのECMOセンター設立が必須である。その基準作り、ならびに実際のセンター設立方法を決めることに進んでいけると思われる。そのためには、より安全に患者搬送ができるようなる必要がある。
また、レベルの高いシミュレーションラボは今後も必要であり、全国レベルでの医療技術の向上を行うことが可能になると思われる。
重症患者発症時に、このガイドラインを基にECMO治療の方向性が参考にされる。

公開日・更新日

公開日
2016-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201305025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦でのECMOが如何に、不十分な認識の基に行われているか判明した。これにより、今後はさらなる啓蒙活動が必要であることが確認された。関連学会との共同企画は、医療従事者に対しECMOを啓蒙する活動となるであろう。また、レベルの高いシミュレーションラボは今後も必要であり、全国レベルでの医療技術の向上を行うことが可能になると思われる。
臨床的観点からの成果
治療成績を改善させる為には、本邦でのECMOセンター設立が必須である。その基準作り、ならびに実際のセンター設立方法を決めることに進んでいけると思われる。そのためには、より安全に患者搬送ができるようなる必要がある。
ガイドライン等の開発
成人の新型インフルエンザ治療ガイドライン作成。
新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業(重症のインフルエンザによる肺炎・脳症の病態解析・診断・治療に関する研究)、新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業(成人の重症肺炎サーベイランス構築に関する研究)および本研究事業の3つの研究班による合同作成で行われた。
その他行政的観点からの成果
英国National Health ServiceによるECMOセンターを訪問し、重症呼吸不全に対するECMOを含めた治療センター設立の要件を確認した。ECMO センターの基準、ECMOのエビデンスの確認、評価基準、National Health ServiceによるECMOの位置づけ、具体的なECMOセンターの管理システム、ECMOセンターの成績評価基準の設置などを確認した。治療成績を改善させる為には、本邦でのECMOセンター設立が必須である。
その他のインパクト
イギリスBBC放送、夕方のニュースで我々研究班のグレンフィールド病院ECMOセンター訪問の様子が放送された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第44回日本集中治療医学会学術集会。シンポジウム:インフルエンザ重症患者へのECMO治療の効果の推移
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
第41回日本集中治療医学会学術集会。1)シンポジウム:重症呼吸不全に対するECMO治療システムをどう構築するか。2)ECMOプロジェクトによる症例検討会。3)ECMOシミュレーション・ラボ。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
2017-06-13

収支報告書

文献番号
201305025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,460,149円
人件費・謝金 0円
旅費 3,919,943円
その他 2,335,189円
間接経費 0円
合計 7,715,281円

備考

備考
既存の物品の使用により、従来計画していた物品費購入が必要なくなったため。

公開日・更新日

公開日
2016-05-30
更新日
-