全国の医療機関別の診療行為等に係る有害事象数に関する特別研究

文献情報

文献番号
201305017A
報告書区分
総括
研究課題名
全国の医療機関別の診療行為等に係る有害事象数に関する特別研究
課題番号
H25-特別-指定-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
高杉 敬久(公益社団法人 日本医師会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在わが国には、診療行為等に係る有害事象の発生件数を網羅的に把握する制度はなく、日本医療機能評価機構で行われている医療事故情報収集等事業で報告が義務づけられた一部の医療機関等での発生状況しか把握できない現状である。また、平成20年度の厚生労働科学研究「医療事故事例の発生件数に関する全国調査に関する研究」(研究代表者堀口裕正)でも、対象は病院(対象数4,111施設)に限られており、地域医療のベースを担う診療所における医療事故の発生状況はこれまで把握できていない。
 このため、本研究では無床診療所,有床診療所,および病院を対象に、診療行為に係る有害事象の発生状況について調査し、得られた情報について医療機関の規模や医療提供体制別に発生率や関連要因の分析・検討を行った。
 本研究により全国の医療機関における有害事象の発生件数の推計が可能となり、先行研究の知見と合わせて考察することで、事故調査制度の具体的な体制整備をすすめるべきである。医療界をあげて取り組むべき課題である事故調査制度の創設に向け、地域、医療機関の規模、医療提供体制等に鑑みた体制整備のあり方を提言することで、医療の安全・質の更なる向上へ寄与することが期待される。
研究方法
 本研究では,平成25年4月末時点で日本医師会に会員登録のある病院及び診療所の開設者及び管理者82,369名(内訳は,無床診療所の開設者・管理者が64,405名,有床診療所の開設者・管理者が11,224名,病院の開設者・管理者が6,740名)の約20%である16,544名を対象にアンケート調査票を送付した。送付先には医療機関ごと(無床診,有床診,病院の3分類),及び,都道府県ごとの偏りがないよう調整を加えたうえで,無作為に抽出し調査票を送付して、回答を求めた。
結果と考察
 アンケート集計の結果,報告対象事例数(医療法施行規則9条の23第1項2号に該当する事例の数),及び,そのうちの死亡事例数は、次のとおりであった。
           報告対象事例数   死亡事例数
無床診については    1,299件   うち 3件
有床診については,    218件    うち 1件
有床診については,    218件    うち 1件
 これをもとに,施設あたりの発生確率,外来患者あたりの発生確率,病床数あたりの発生確率,退院患者数あたりの発生確率をもとめ,年間の有害事象数を推計したところ,わが国では約1400~2200件の死亡事例が生じていると推計された。
                          報告対象事例数      死亡事例数
施設あたりの発生確率による推計値    1,152,682件     うち2,270件
外来患者あたりの発生確率による推計値  1,014,418件     うち2,000件
病床数あたりの発生確率による推計値   1,066,296件     うち2,082件
退院患者数あたりの発生確率による推計値  727,939件     うち1,419件
結論
 報告対象事例(医療法施行規則9条の23第1項2号に該当する事例)の範囲は,一義的に明確とはいえないため,約72万~115万件の報告対象事例数の推計はあくまでも計算上の数字に過ぎず現実的な有害事象数とは乖離があると考えられる。これに対し,死亡事例数の推計については,死亡の結果が生じた事例に限定されるため,施設によるブレは比較的小さいと考えられる。
 よって,死亡事例数の推計値である約1400~2200件の推計は妥当な数字であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201305017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により,全国の医療機関(無床診、有床診、病院)における有害事象発生件数の推計値が提供され,今後,医療事故調査制度(院内事故調査の支援体制と第三者機関)を設立する上で参考となるデータを提供したことが専門的・学術的観点からの成果である。
臨床的観点からの成果
本研究により,全医療機関(無床診療所、有床診療所、病院)において、有害事象(死亡事例を含む)の発生リスクを認識したうで、診療にのぞめることが臨床的観点からの成果である。
ガイドライン等の開発
本研究により得られたデータをもとに,公正・中立な院内事故調査の支援体制を構築したうえで、さらに、あるべき第三者機関を創設することになる。本研究は、適切な医療事故調査のガイドラインを策定するための土台作りとなる研究である。
その他行政的観点からの成果
医療事故の調査を通じて、医療安全をはかるという意味において、医療行政の観点からも大きな成果がある。また、院内事故調査において、診療所のみならず、大規模な病院においても、外部支援が必要とされていることが判明したため、外部支援(特に解剖やAi)をいかに行うか、行政施策としても検討されるべきことである。
その他のインパクト
医療機関の規模を問わず、診療所、病院ともに大規模な調査を行った。診療所における有害事象の発生件数についてはわが国初の成果であろう。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201305017Z