無煙タバコ・スヌースに含まれる有害化学物質の定量と健康影響評価に関する研究

文献情報

文献番号
201305015A
報告書区分
総括
研究課題名
無煙タバコ・スヌースに含まれる有害化学物質の定量と健康影響評価に関する研究
課題番号
H25-特別-指定-020
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 無煙タバコは,タバコ葉の燃焼を伴わずに使用するタバコ製品であり,諸外国で使用が拡大している。また,この無煙タバコ製品は,幾つかの種類があり,我が国においてもこれまでにガムタバコの「ファイアー・ブレイク」や2010年に「かぎタバコ」製品が販売され,2013年8月には「SNUS」が販売開始された。スヌースは,タバコ葉を詰めたポーションと呼ばれる小袋を口腔内に含み使用する無煙タバコである。本研究では,国産SNUSの2銘柄と海外産スヌースの3銘柄及び1銘柄のsnuff製品中の有害化学物質の分析を行い、あわせて健康影響について文献的な考察を行うことを目的とした。
研究方法
 我々のグループは,WHOタバコ研究室ネットワーク(TobLabNet)に参画し,タバコ煙中の有害化学物質の分析・測定を国内で唯一継続してきた。今回対象化学物質としたのは,上記WHO TobLabNetで測定標準化が進められ分析が実施されている化学物質,および米国FDAがタバコ会社等に報告を求めた有害化学物質リストを参考に,依存性・発がん性が高い物質およびそれらの生体内吸収を高める可能性のある物質,WHO Technical Report Series, No. 955において上限値を推奨している物質などを次のように選択した。
 ニコチン,タバコ特異的ニトロサミン(TSNA),添加物(グリセロール類),重金属,及び自然放射性核種Polonium-210(Po-210)。     
 測定対象としては、今回販売となった国産Snusの2銘柄と海外産Snusの3銘柄及び1銘柄のSnuff製品とした。
結果と考察
 ニコチン含有量(mg/g)は,国産タバコ銘柄が6.4と9.2であり,海外産銘柄は9.1-15.6であった。
 次に4種類のTSNAの合計量(ng/g)は,国産タバコ銘柄が,4180と5230であり,海外産銘柄は,1120-8990となった。海外産Snuffが,8990 ng/g wetと高い含有量であったが,海外産Snusは国産銘柄よりも低値であった(1120-2390 ng/g wet)。また,WHO Technical Report Series 955では,無煙タバコ製品の2種類の発がん性TSNAであるN’-ニトロソノルニコチン(NNN)と4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン(NNK)の合計量を2000 ng/g乾燥重量以下にすることを提唱している。本研究の結果では,国産銘柄の合計量(ng/g wet)が2840と3560であり,上限値を越えていた。
 測定対象グリセロール類3種中propylene glycolとglycerolの2種が検出・定量できた。Propylene glycolの濃度範囲は4.83-54.15 mg/gであり,銘柄間の最小値及び最大値で10倍以上の差が認められた。また,Glycerolの濃度範囲は57.56及び57.46 mg/gとなり,国内向け製品2銘柄でのみ検出された。
 重金属は測定対象重金属類9種中6種(Cr,Mn,Co,Cu,Zn,Cd)が検出・定量できた。定量可能であった重金属のうち銘柄別では,カドミウム(Cd)が国内向けのsnus製品であるZERO STYLE SNUSシリーズ2銘柄共に検出されず,海外銘柄は0.1-0.3μg/gの濃度範囲を示した。また亜鉛(Zn)はZERO STYLE SNUSシリーズ2銘柄が5.0及び5.6μg/gであったのに対し,海外銘柄は9.1-20.1μg/gの高い濃度範囲を示した。
 Po-210量は葉g当たり海外産タバコ4銘柄の平均値は,6.0±1.1 mBq/gであった(濃度範囲は,5.0-7.2 mBq/g)。また,国産タバコ2銘柄の平均値は,8.5±0.9 mBq/g(ZSS MINTが8.8 mBq/g,ZSS REGが8.3 mBq/g)となり,若干ではあるが国産タバコ銘柄のPo-210が高値となった。
結論
 紙巻きタバコと異なり燃焼を伴わない無煙タバコは,Harm reductionとして有害性が低いニコチン伝達手段との意見もあるが,禁煙意思のある喫煙者の禁煙機会を奪い,紙巻きタバコとの併用になる,あるいは非喫煙者のゲートウェイになる可能性など問題も大きい。さらに幼小児の誤飲の可能性も高い。このような点から,今後,国内においてSNUSを含めた無煙タバコ製品の規制枠組みを早急に決定し,施行する必要が急務である。
 本研究班成果をもとに,厚生労働省から注意喚起が発出された。同時に,日本学術会議から緊急提言が出された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201305015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
WHO Technical Report Series 955では,発がん性が強く,既存の手法を用い濃度を実質的に削減できる可能性があることから,無煙タバコ製品の2種類のタバコ特異的ニトロサミンTSNAであるNNNとNNKの合計量を2000 ng/g乾燥重量以下に規制することを優先課題として提言した。本研究の結果では,国産銘柄のNNN,NNK合計量(ng/g wet)が2840と3560であり,上限値を越えており継続したモニタリングが必要である。
臨床的観点からの成果
紙巻きタバコと異なり燃焼を伴わない無煙タバコは,Harm reductionとして有害性が低いニコチン伝達手段との意見もあるが,禁煙意思のある喫煙者の禁煙機会を奪い,紙巻きタバコとの併用になる,あるいは非喫煙者のゲートウェイになる可能性など問題も大きい。さらに幼小児の誤飲の可能性も高い。このような点から,今後,国内においてSNUSを含めた無煙タバコ製品の規制枠組みを早急に決定し,施行する必要が急務である。
ガイドライン等の開発
厚生労働省・がん対策・健康増進課「無煙たばこ・スヌースの健康影響について」(H25年8月30日にホームページ掲載)
厚生労働省・がん対策・健康増進課長通知「無煙たばこ・スヌースの健康影響について」(健が発1028第1号 平成25年10月28日)
その他行政的観点からの成果
厚生科学審議会・地域保健健康増進栄養部会「たばこの健康影響評価専門委員会」に報告し情報公開した。
その他のインパクト
平成26年4月17日毎日新聞朝刊において「低ニコチンのからくり」と題して研究成果の関連情報が紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
稲葉洋平,内山茂久,欅田尚樹.
国産たばこ製品の有害性の評価
日本小児禁煙研究会雑誌 , 3 (2) , 31-39  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201305015Z