トコジラミの効果的な防除法並びに調査法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201305005A
報告書区分
総括
研究課題名
トコジラミの効果的な防除法並びに調査法の開発に関する研究
課題番号
H25-特別-指定-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 敦彦(一般財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 知幸(一般財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
  • 皆川 恵子(哘 恵子)(一般財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
  • 海鉾 亨(數間 亨)  (一般財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
  • 永廣 香菜(一般財団法人日本環境衛生センター 環境生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,144,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在わが国で問題になっているトコジラミは、強い殺虫剤剤抵抗性を示す集団が多く、その現状を把握するとともに、有効な殺虫剤等の検討、評価や、まだ確立されていない標準的な調査法の検討を行い、最終的には一般でも行える対処法を確立し、一般向け冊子を作成することを目的とした。

研究方法
 わが国各地で採集したトコジラミについて、殺虫剤の標準的評価法である微量滴下法や残渣接触法等を用いてそれらの薬剤感受性や吸血昆虫用忌避剤等の効果を調べるとともに、抵抗性集団に対する種々の薬剤等の効力や抵抗性評価のためのキットの有用性、生息密度調査に用いる各種トラップの捕集性能等を実地試験等で評価した。
結果と考察
 日本各地の10カ所から採集したトコジラミについて感受性試験を行った結果、多くの地域でピレスロイド剤に対する強い抵抗性が発達していることが明らかとなった。これらのほとんどの集団に対しては有機リン剤やカーバメート剤が有効であることを確認したが、一部地域では有機リン剤やカーバメート剤に対しても抵抗性を示す集団の存在が確認され、それらに対してはネオニコチノイド系の薬剤が有効であることが明らかとなった。また、抵抗性評価用の試作キットの有用性が確認された。
 吸血昆虫用忌避剤の有効成分であるディートはトコジラミに対しても吸血抑制効果があること、処理エリア内への侵入を防ぐ効果があることを確認した。殺虫剤処理によらない方法としては、洗濯洗剤の致死効果や温度による増殖性の違いについて評価を行い、通常の使用量による洗濯洗剤の効果は低いこと、15℃を下回る温度にならないと増殖は抑制されないことが明らかとなった。
 ピレスロイド剤抵抗性トコジラミが多数発生している現場において、一般人が入手しやすい家庭用
エアゾール剤の実地における効力評価を実施し、メトキサジアゾンやプロポクスルを有効成分として
含有する家庭用エアゾール剤が有効であることを確認した。また、現場での評価や基礎試験の結果から、各種のトコジラミ用やゴキブリ用トラップは、製品により差は認められるが、調査や駆除効果の判定に利用できると判断した。
 以上の結果や既知の情報を基に、一般家庭向けの平易な文章による小冊子案を作成した。
結論
 日本各地で問題化しつつあるトコジラミは、強いピレスロイド剤抵抗性を示す集団が多いが、有機リン剤やカーバメート剤はこれらの集団に対しても有効と考えられた。しかし、一部地域からはこれらの薬剤に対する抵抗性集団が見出され、警戒が必要である。また、ネオニコチノイド系薬剤は、有機リン剤やカーバメート剤に抵抗性を示す集団に対しても有効であることが確認された。
 吸血昆虫用忌避剤はトコジラミの吸血や侵入に対して有効であると判断された。一方で、洗濯による致死効果は低いであろうこと、温度による制御は難しいと判断された。
 実地試験の結果、一般家庭で対処する場合、薬剤としては、多くの地域でプロポクスルやメトキサジアゾンを含有するエアゾール剤が有効であると考えられた。また、各種の市販トラップは、トラップにより捕獲性の違いは認められるが、生息密度調査に利用できると判断された。
 

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201305005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
殺虫剤に対して抵抗性を示すトコジラミに対して有効と考えられる薬剤について各種試験を実施し、ピレスロイド剤に対して抵抗性を示す集団に対しては有機リン剤やカーバメート剤が有効であること、有機リン剤やカーバメート剤に抵抗性を示す集団に対してはネオニコチノイド系薬剤が有効であることを確認した。
臨床的観点からの成果
実地試験により、各種薬剤の発生現場での評価を行い、数種製剤の有用性を確認した。この結果から、一般でも入手できるエアゾール剤のうち、カーバメート系薬剤を含有する製剤であれば、ピレスロイド剤に対して抵抗性を示すトコジラミが発生してしまった場合でも対処が可能であることを確認した。
ガイドライン等の開発
一般向けのトコジラミ対策マニュアル(冊子)案の作成。
その他行政的観点からの成果
トコジラミが問題となっている施設は、建築物衛生法の対象となっている建築物(旅館やホテル、入浴・スポーツ施設など)や一般家庭が多い。今回の研究結果から、有効な薬剤や調査法などが明らかとなり、これらの結果に基づく冊子などによる情報発信を行うことや建築物維持管理マニュアルへの収載により公衆衛生の向上への貢献が期待される。間接的な成果としては、抵抗性集団に対しても有効な薬剤や製剤の開発、知識の普及や意識改革などが期待される。
その他のインパクト
自治体向け講習会(「ねずみ・衛生害虫駆除技術研修会」年1回開催)、環境衛生監視員向け研修会などで成果について報告し、啓発を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
ペストロジー学会誌
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
日本衛生動物学会大会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
28件
厚生労働省・自治体・業界団体主催研修会等での成果報告

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
橋本知幸
ディートによるトコジラミの吸血行動の阻止効果
ペストロジー , 20 (2) , 113-115  (2013)

公開日・更新日

公開日
2016-06-24
更新日
2023-06-09

収支報告書

文献番号
201305005Z