文献情報
文献番号
201305004A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO ICD-10(2010)とICD-10告示の構造比較解析に関する研究
課題番号
H25-特別-指定-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大江 和彦(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
研究分担者(所属機関)
- 今井 健(東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、ICD-10 (2010年版)について、既に我が国でICD-10 (2003年版)に基づき告示されたICD告示との内容、分類構造の比較を行い、2010年版の早期の日本版(案)の策定及び国内適応(告示)を行うための基礎資料作成を目的とする。
研究方法
本研究の目的に照らし、傷病名と直接に関係のある「索引」(WHO版Volume3, 日本版 第3巻) を対象とした。WHO ICD-10 (2003年版)と我が国内で既に告示済みの日本語版索引表(2003年第3巻)をベースとし、それ以降に適用するべき変更点を洗い出すためWHOが公表した修正勧告の収集、日本語訳の作成を行った。上記で公表されている1996年〜2012年の全修正勧告をデータベース化し、全件に渡り、ICD-10 2003年版から2010年版に更新するに当たり適用範囲とすべき項目か精査した。得られた修正勧告データベースは、翻訳会社による仮訳を基に、東大病院の研究協力者(医師)による臨床用語への修正作業を経て日本語版修正(案)を作成した。次に、ICD-10 2003年版と2010年版との中間分類・3桁分類・4桁分類の内容と構成の変化について分析を行い、得られた各修正項目について、修正内容の分類を行った。その後、修正勧告と実際の変更内容との齟齬が無いかチェックするため、これらをWHO ICD-10 2003年版に逐次適用した結果、2010年版と同じ結果が得られるか調査を行った。齟齬があったものについてはその原因を分析し、厚生労働省大臣官房統計情報部企画課国際分類情報管理室に確認(必要に応じて同室を介しWHOに確認)の上、本邦の告示案作成上の方針を定めた。
最終的に修正勧告データベースを基に、索引新旧対照表(案)を作成した。修正勧告では、同一項目に対して複数回の変更が成されることもあるが、本邦のICD-10(2010年)告示では、前回(2003年)告示からの最終的な変更結果が求められるため、途中の複数回の変更についてはマージした。また本邦での2010年告示に含める内容として、「適用予定日が 2014年1月までの範囲でWHOが勧告した内容を全て含める」ということが決定されたことに伴い、一部においてはWHO ICD-10(2010年)に含められている内容よりも進んだ勧告範囲を対象とした。
最終的に修正勧告データベースを基に、索引新旧対照表(案)を作成した。修正勧告では、同一項目に対して複数回の変更が成されることもあるが、本邦のICD-10(2010年)告示では、前回(2003年)告示からの最終的な変更結果が求められるため、途中の複数回の変更についてはマージした。また本邦での2010年告示に含める内容として、「適用予定日が 2014年1月までの範囲でWHOが勧告した内容を全て含める」ということが決定されたことに伴い、一部においてはWHO ICD-10(2010年)に含められている内容よりも進んだ勧告範囲を対象とした。
結果と考察
WHOによる修正勧告のうちICD-10 2003年版を2010年版にするのに必要と考えられた項目は3,132件であった。これらを2003年版へ適用し2010年版と比較分析した結果、齟齬があった件数は149件であった。内訳は(1)勧告を適用しても2010年版と一致しない129件, (2)勧告無しで2010年版にて変更されている9件, (3) 適用予定日が2010年よりも後であるが2010年版に含まれている1件, (4)その他微細なEditorial Error等10件である。個別に本邦としての告示案作成上の修正方針を決定した結果、勧告漏れのため本邦の告示として新規勧告案を追加したものは2件存在した。また本邦の告示として、WHO ICD-10 (2010年) よりも後のWHO勧告内容 (2014 年1月まで) も含めた結果、最終的に総数3,447件の修正勧告データベースが得られた。これを基に本邦での現行情報・分類提要適用案・改正の種類を対応させた索引新旧対照表案を作成した。今後の継続的な改正においても、適用予定日の範囲設定を本邦独自に行うことが考えられる。従ってWHO勧告をデータベース化した上で、告示に含めるか否かを別途設定する2段階管理方式が望ましい。本研究の修正勧告データベースは、変更内容、追加・変更前後の文字列を構造化し、項目ごとに適用の可否を設定することで、計算機処理により最新のICD告示内容に反映できるよう設計しており、今後の継続的な更新にも有用な方式であると考えられる。一方で、勧告漏れ、明記されないルール変更、正誤表での対応も取り扱っていく必要があることも判明し、これらについても今後一元的に管理できるよう発展させる予定である。
結論
最新の傷病名に基づく情報収集・分析を可能とするため、ICD-10の最新版である2010年版を早急に国内に適用するという目的の下、WHOの修正勧告データベースを構築し、WHO ICD-10(2003年)とICD-10(2010年)との構造比較を行った。また得られた結果を基に本邦におけるICD-10 (2010年版)告示案の基礎資料として索引新旧対照表案を作成した。今後同様の方式にて管理を続けていくことで、WHO勧告との対応、イレギュラーな変更(勧告漏れ・正誤表)への対応、告示に含める適用予定日の範囲設定などを一元的かつ継続的に管理することが可能となると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2014-08-04
更新日
-