文献情報
文献番号
201305002A
報告書区分
総括
研究課題名
呼吸器機能障害の身体障害認定に関する研究
課題番号
H25-特別-指定-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
木村 弘(奈良県立医科大学 医学部 内科学第二講座 )
研究分担者(所属機関)
- 金澤 實(埼玉医科大学 呼吸器内科)
- 小林 弘祐(北里大学 大学院医療系研究科)
- 久保田 勝(北里大学 医学部呼吸器内科学)
- 仲村 秀俊(埼玉医科大学 呼吸器内科)
- 今村 知明(奈良県立医科大学 医学部 健康政策医学講座)
- 吉川 雅則(奈良県立医科大学 医学部 内科学第二講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現行(2014年3月現在)の身体障害者呼吸器機能障害の認定基準においては、認定の基準となる「指数」を算出するための肺活量の予測式として、1948年に米国人を対象にえられたBaldwinの予測式が用いられているが、この式は日本人の実態を反映していない。また、活動能力(呼吸困難)の程度においては、わが国のみでしか用いられていないFletcher, Hugh-Jones(F-H-J)分類が旧態依然として用いられている。
本研究は、(1)換気機能の指標である「指数」をえるための 予測肺活量の基準値の式を、Baldwinの予測式から日本呼吸器学会の予測式に変更する必要性、(2)活動能力の程度をF-H-J分類から修正MRCスケールに改める必要性と現状の認定基準の問題点に関して、実態調査およびアンケート調査を通して検討することを目的とした。
本研究は、(1)換気機能の指標である「指数」をえるための 予測肺活量の基準値の式を、Baldwinの予測式から日本呼吸器学会の予測式に変更する必要性、(2)活動能力の程度をF-H-J分類から修正MRCスケールに改める必要性と現状の認定基準の問題点に関して、実態調査およびアンケート調査を通して検討することを目的とした。
研究方法
検討1:現行の認定基準ではBaldwinの予測式による予測肺活量から算出した予測肺活量1秒率(%)を指数として使用している。日本人を対象とした検討では、日本呼吸器学会(JRS)が予測式としてJRS2001およびJRS2013を公表している。本検討ではBaldwin、JRS2001、JRS2013各予測式による予測肺活量を性別、年齢、身長により比較した。また、2012年度の匿名化された某2県での呼吸器機能障害認定者の申請時データを使用して、予測式変更による障害等級別認定者数の変化を血液ガス分析による判定とあわせて総合的に検討した。957例(男性715例、女性242例)を対象とし、指数はノモグラムによる記載値ではなく、Baldwinの予測式から再計算した数値を用いた。ノモグラムによる値と実際の計算値とを比較してノモグラムの整合性についても検討した。
検討2:「Baldwinの予測式から日本呼吸器学会の予測式への変更」ならびに「Fletcher, Hugh-Jones分類からMRCスケールへの変更」の2点について、呼吸器内科専門医の賛同が得られるか否かを調査するとともに呼吸器機能障害の身体障害認定全般について、呼吸器内科専門医から広く意見を聴取した。対象は日本呼吸器学会代議員および日本呼吸器学会認定施設、関連施設に所属する呼吸器内科専門医とし、アンケート用紙を送付して調査を行った。
検討2:「Baldwinの予測式から日本呼吸器学会の予測式への変更」ならびに「Fletcher, Hugh-Jones分類からMRCスケールへの変更」の2点について、呼吸器内科専門医の賛同が得られるか否かを調査するとともに呼吸器機能障害の身体障害認定全般について、呼吸器内科専門医から広く意見を聴取した。対象は日本呼吸器学会代議員および日本呼吸器学会認定施設、関連施設に所属する呼吸器内科専門医とし、アンケート用紙を送付して調査を行った。
結果と考察
検討1:若年者、低身長者以外においては、Baldwinの予測肺活量に比べJRSによる予測肺活量は大きく、なかでもJRS2001よりJRS2013にて大きかった。よって、指数はJRS予測式の使用により小さくなった(指数:Baldwin>JRS2001>JRS2013)。予測式変更で、指数判定上位移行例はJRS2001を用いた場合で109例(11.4%)、JRS2013を用いた場合で187例(19.5%)であった。動脈血酸素分圧による判定とあわせた検討では、最終的な判定等級上位移行例はJRS2001 32例(3.5%)、JRS2013 71例(7.7%)であった。指数が40を超えて申請していない症例の存在を加味すると、予測式変更により10%弱の認定者数増加あるいは判定等級上位移行が予想された。JRS2013への変更は時間を要するため、まずJRS2001に変更後、改めてJRS2013に変更するか、JRS2013変更への対応が整うまで待って変更するかを検討する必要がある。ノモグラムでの指数とBaldwin予測式から算出した指数とを比較すると約10%で5以上の解離を認めていた。
ノモグラムの使用は誤差が大きく等級判定に影響するため、指数は予測式から算出すべきと考えられた。検討2:アンケート調査の回答率は32.6%(409/1253)であった。換気機能の指標である指数において「Baldwinの予測式からJRSの予測式への変更」ならびに身体活動能力判定における「Fletcher, Hugh-Jones分類から修正MRCスケールへの変更」に対し、それぞれ86.3%と80.4%と高い割合で賛同が得られた。
ノモグラムの使用は誤差が大きく等級判定に影響するため、指数は予測式から算出すべきと考えられた。検討2:アンケート調査の回答率は32.6%(409/1253)であった。換気機能の指標である指数において「Baldwinの予測式からJRSの予測式への変更」ならびに身体活動能力判定における「Fletcher, Hugh-Jones分類から修正MRCスケールへの変更」に対し、それぞれ86.3%と80.4%と高い割合で賛同が得られた。
結論
今回抽出した認定患者の検討からは、指数算出時に用いる予測式の変更による認定者数の増加、一部等級上位への移行が予測されたが、認定者数の変化は小さい範囲に抑えられると考えられた。また、呼吸器機能障害患者は他の身体障害に比較して認定者数も少なく、対応による財政的影響は他疾患よりも比較的抑えられると推測される。
全国の呼吸器専門医に対するアンケート調査から、「Baldwinの予測式から日本呼吸器学会の予測式への変更」ならびに「Fletcher, Hugh-Jones分類からMRCスケールへの変更」には賛成意見が多数を占めた。一方で現在の基準は様々な問題点を内包しており、継続的な検討の必要性が示唆された。
全国の呼吸器専門医に対するアンケート調査から、「Baldwinの予測式から日本呼吸器学会の予測式への変更」ならびに「Fletcher, Hugh-Jones分類からMRCスケールへの変更」には賛成意見が多数を占めた。一方で現在の基準は様々な問題点を内包しており、継続的な検討の必要性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-05-28
更新日
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