我が国における金属摩耗粉による人工股関節置換術合併症の調査研究

文献情報

文献番号
201303025A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における金属摩耗粉による人工股関節置換術合併症の調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-地球規模-指定-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 寛和(関西医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋山 治彦(岐阜大学 医学部 整形外科)
  • 菅野 伸彦(大阪大学 医学部・運動器医工治療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,650,000円
研究者交替、所属機関変更
秋山治彦 京都大学医学部・整形外科より岐阜大学医学部・整形外科へ移動

研究報告書(概要版)

研究目的
Metal-on-Metal(MoM)人工股関節置換術total hip arthroplasty (以下THA)は、金属摩耗粉metal debrisに対する生体反応によると考えられる疼痛や偽腫瘍と呼ばれる腫瘤性病変を誘発することがあり、比較的術後短期間で再手術を要したり、広範な軟部組織壊死により再置換が困難となる例も報告されている。このMetal-on-Metal (MoM)人工股関節術後Adverse reactions to metal debris (ARMD)の診断と治療経過の日本での現状を明らかにするため、アンケートによる二次調査を行うことと、海外におけるMoM人工股関節置換術合併症の発症および再置換の実態を調査するため、諸外国で実施されている人工関節レジストリーを調査することが目的である。
研究方法
本邦では、23226関節のMoM人工股関節インプラントが使用されており、製造販売7社のMoM機種使用実績5位までの施設と、50例以上使用した施設を合わせた102施設に対して昨年度調査を行い、回答を得た82施設を今回の二次調査対象とした。アンケートにより、ARMD症例経験の有無を確認し、有の場合は、患者背景、インプラント情報、臨床症状、診断のための画像所見、再手術に関する情報、再手術後の経過を調査した。また海外の実態調査は、レジストリーの登録コンプライアンスの高いAustralian Orthopaedic Association National Joint Replacement Registry、Canadian Joint Replacement Registry、European Arthroplasty Register、National Joint Registry(英国)、The New Zealand Joint Registryなどにおいて、それらの最新の年次報告書を調査した。
結果と考察
39施設(48%)からアンケートの回答が得られた。31施設(79%)でMoM-ARMD症例があった。MoMのARMD症例は、2012年調査時の100例から204例増加し、304例となった。再手術は46例から50例増加し、96例となった。ARMD診断時期は2012年が最多で、2004年以降、増加し続けていた。MoM-THA後1年未満でARMDと診断された症例もあるが、術後1から4年で診断される例が多く、4年以降では症例数が少なくなっていた。英国では再置換術までの期間は初回術後5-7年が最も多かった。再置換率は9年でBHR・ASR・Cormet2000表面置換がそれぞれ8.11・36.4・16.34%で、Corail/PinanacleのMoMが19.89%と極めて高率であった。オーストラリアではこれまでに26,6465症例が登録され、再置換術は44,729症例が登録されている。21,946股にMoMが使用され、12年間での再置換率は18.1%であった。特に骨頭径が36mm以上、年齢が75歳以上、女性で再置換が多く、金属に関連した病理像を呈したのは骨頭径が36mm以上で7.2%、32mm以下では0.2%であった。カナダでは56,942症例が登録され、1,438症例の再置換術が登録されている。MoMインプラントは2003年から2011年までに表面置換型が2,119股、大径骨頭モデュラー型(36mm以上)が1,629股、ステム型が1,383股使用され、5年の再置換率は、表面置換型が3.5%、大径骨頭モデュラー型が5.9%、ステム型が2.8%であった。
結論
今後も、MoM人工股関節置換術に関しては、諸外国および我が国の人工関節レジストリーによるARMDおよび再置換術の発生頻度を継続的に監視し、広く報告する必要がある。また、個々の症例の詳細調査および解析により、ARMDの診断および治療指針を作成し、我が国の整形外科医に周知し、MoM人工股関節置換術の今後の適応および術後患者の慎重な経過観察を継続して行く必要があると思われる。 

公開日・更新日

公開日
2015-07-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201303025Z