健康の社会的決定要因に関する研究

文献情報

文献番号
201303010A
報告書区分
総括
研究課題名
健康の社会的決定要因に関する研究
課題番号
H24-地球規模-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 近藤 尚己(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 高尾 総司(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 藤原 佳典(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 稲葉 陽二(日本大学 法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,885,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOは、健康の社会的決定要因(SDH)に関する委員会報告書の公表(2008)や、Urban HEART(Health Equity Assessment and Response Tool、都市における健康格差の評価・対応ツール)の開発(2010)を行う等、国際的にSDHへの本格的な対応が始まっている。そこで、SDHの状況や対応に関して、国内外の情報を集約するとともに、新たな知見、実践例等を収集・創出・試行・発信することにより、国内外におけるSDHへの対応を促進し、人々の健康を向上させることが本研究の目的である。
研究方法
平成25年度は、Urban HEARTを利用して、国内における評価及び対応方策の検討を行うとともに、Urban HEARTの改訂に向けての専門家会合に参加した。また、日本国内における良い事例についての英語による海外への情報発信に力を入れた。前年度からの継続実施分を含めて、研究班全体では、(1) 国内外の情報収集、(2) 個人・地域データの調査・分析、(3) 新たな対応方策の創出、(4) 対策の試行、(5) 情報の国内外への発信の5本柱で研究を実施した。
結果と考察
国内外の情報収集:健康の社会的決定要因の主要文献に関する研究として、前年度に追加して、SDHに関するWHOの報告書等について、WHO神戸センターの監修を受けて翻訳を行った。SDH政策への取り組みの国際共同の動向に関する研究として、11月にロンドンで行われたMarmot教授の主催するSDH研究者連絡会議に参加した。12月にはErasmus大学のMackenbach教授との意見交換で、政策的介入研究や政策評価研究が求められていること等が示唆された。ソーシャル・キャピタル等に着目したSDHへの介入実践例の収集として、新潟県三条地域振興局及び岡山県吉備中央町における活動事例についてヒアリングを行い、リソースの把握や交換、リーダーシップの状況について明らかにした。
個人・地域データの調査・分析:格差の是正及びソーシャル・キャピタルと健康の関連として、前年度の東京都での調査結果と2010年の全国調査の結果を比較し、東京都では関連がみられなかった認知的社会関係資本である「一般的信頼」が、全国レベルではQOLに影響がある等の結果が得られた。また、2005年市町村別データの分析により、高齢者就業率が高いほど、またジニ係数が低いほど老人医療費が低い等の結果であった。健康格差の継続モニタリングのための指標に関する研究として、スウェーデンの住民登録と死亡登録の個人リンケージデータを用いて健康格差のモニタリング方法を検討した結果、国レベル等の大規模なデータでは、指標値の比・差を用いることが実用面で有利である一方で、状況により格差勾配指数や格差相対指数等を用いることも推奨されると考えられた。
新たな対応方策の創出:WHO Urban HEARTを用いた日本での分析及び対応方策の検討として、日本国内31自治体の介護予防状況についてUrban HEARTを用いて分析を行い、人口規模や地理的条件が異なる各地域における介護予防に関連する健康指標等の状況が明らかとなった。また、その結果一覧を見ながら、ワークショップを行った結果、住宅・自転車・給食等の施策を健康の向上に結びつけること、高齢者が働けるような新しい起業、政策形成における3E(公平性、経済性、選挙での得票)の重要性等が上げられた。WHO Urban HEART改訂作業への参画として、2013年11月6~8日にWHOが開催した専門家会議に参画した。
対策の試行:高齢者の就労支援事業に関するアクション・リサーチとして、東京都A区に開設されたアクティブシニア就業支援センターについて利用者への調査を行った結果、仕事選びには、能力や経験が活かせることが最も重視されている実態が明らかとなり、そのことが仕事探しや雇用のミスマッチにも影響している面があることが推察された。
情報の国内外への発信として、研究班ホームページ及びその他の方法によって、国内向けの情報発信に加えて、愛知県武豊町及び徳島県上勝町におけるソーシャル・キャピタルの醸成が行われた事例の紹介等日本国内でのSDH対策についての海外への英語による情報発信を行った。
結論
海外の研究者等との意見交換、事例及び統計データの収集と分析、ワークショップの実施、アクション・リサーチ等を通じて、SDHに関連する国内外の情報を収集、分析、対応方策の創出等を行った。そして、海外の文書の日本語による発信や、日本国内の事例の英語による情報発信等、研究成果の国内外への発信を行った。

公開日・更新日

公開日
2015-03-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201303010Z