文献情報
文献番号
201302011A
報告書区分
総括
研究課題名
OECD準拠のSystem of Health Account2011(SHA2.0)に準じた推計方法の開発と推計
課題番号
H24-統計-指定-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
満武 巨裕(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構)
研究分担者(所属機関)
- 田中 滋(慶應義塾大学大学院 経営管理研究科)
- 福田 敬(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
国民の保健医療支出は、傷病の治療に要する医療費のみならず、健康増進・疾病予防、健康管理、医療保障制度の運営費等も含めて捉える必要がある。OECD(経済協力開発機構)は、2000年に保健医療支出を推計するガイドラインであるSHA(A System of Health)を公表した。SHAは、2011年に改訂版が完成し、2016年度から改訂版に準じた保健医療支出が公表される予定である。
本研究では、日本と諸外国のSHAデータの対象範囲、算定方法を考慮しながら、SHAの改訂版(SHA2011)に準拠した日本の保健医療支出を推計し、SHA改訂の影響について検討する。
本研究では、日本と諸外国のSHAデータの対象範囲、算定方法を考慮しながら、SHAの改訂版(SHA2011)に準拠した日本の保健医療支出を推計し、SHA改訂の影響について検討する。
研究方法
SHA1.0とSHA2011マニュアルをもとに、改訂の範囲・定義について述べる。次に、SHA2011に準拠した総保健医療支出の推計を行う。推計方法は、基本的にSHA1.0の方法論に基づき、SHA2011更新による変更部分を別途推計することで、試算する。推計対象期間は、1995年度から2010年度とする。機能 (HC)、財源 (HF)、資金(FS)の経年変化からSHA改訂の影響を観察する。
結果と考察
SHA改訂としては、①資本形成支出の分離(資本形成支出は、総保健医療支出から除外されSHA1.0における経常保健医療支出と同様となった)、②境界領域の精緻化(保健医療分野の支出と他の社会経済的活動の支出の境界の定義を明確化し、特に、長期ケアと予防の部分が改訂された)、③ 分類(基本3分類:機能(HC)、供給主体(HP)、財源(HF)に加えて、保険料等の拠出に関する費用負担分類である資金(FS))の更新が行われた。
SHA2011準拠の総保健医療支出は、SHA1.0準拠と比べて長期ケア費の増大により介護保険導入(2000年)以後に増大した。SHA1.0準拠の2010年度の総保健医療支出は約45.8兆円、対GDP比率で9.5%であるが、SHA2011準拠では、約51.8兆円、対GDP比率で10.7%となった。財源(HF)分類は、社会保障基金による支出が増加したが、2000年以降の全体構成割合に大きな変化はない。一方、資金(FS)分類は、2010年に政府拠出費用が家計部門を上回った。
保健医療支出の国際比較の際には、国によって医療費の定義や保険対象範囲が異なるため、事実上のグローバルスタンダードであるSHA準拠の推計値が用いられることが多い。日本の総保健医療支出は、厚生労働省から公表される医療保険制度下における支出の国民医療費に加えて、一般薬、正常分娩や歯科自由診療など医療保険の対象外の費用、介護、予防、公衆衛生、医療機関の施設整備のための費用、医療保険の運営費用等も含む。その結果、SHA1.0準拠でも国民医療費と比較すると約2-3割高いが、SHA2011準拠により更に高くなる。
多くの先進国は、医療費水準を抑制する政策目標の一つとして、患者負担や家計負担を高めるなどしたが、日本は、同時に政府部門による資金(FS)を増やすことで、最終支出段階での財源 (HF)の割合を一定に保っていることが観察された。
日本はこれまで、対GDP比でOECD諸国の平均以下であったが、2012年から平均を超え、2016年にSHA2011準拠に統一されると、OECD加盟国の中でも上位となることが予想できる。皆保険制度を導入して約50年、介護保険制度を導入して約10年が過ぎた日本の財源と資金構造は、保険制度改革を行う先進諸国だけでなく、これから皆保険制度や介護保険制度を導入しようとしている開発途上の国々にも示唆を与えるものと考えられる。
SHA2011準拠の総保健医療支出は、SHA1.0準拠と比べて長期ケア費の増大により介護保険導入(2000年)以後に増大した。SHA1.0準拠の2010年度の総保健医療支出は約45.8兆円、対GDP比率で9.5%であるが、SHA2011準拠では、約51.8兆円、対GDP比率で10.7%となった。財源(HF)分類は、社会保障基金による支出が増加したが、2000年以降の全体構成割合に大きな変化はない。一方、資金(FS)分類は、2010年に政府拠出費用が家計部門を上回った。
保健医療支出の国際比較の際には、国によって医療費の定義や保険対象範囲が異なるため、事実上のグローバルスタンダードであるSHA準拠の推計値が用いられることが多い。日本の総保健医療支出は、厚生労働省から公表される医療保険制度下における支出の国民医療費に加えて、一般薬、正常分娩や歯科自由診療など医療保険の対象外の費用、介護、予防、公衆衛生、医療機関の施設整備のための費用、医療保険の運営費用等も含む。その結果、SHA1.0準拠でも国民医療費と比較すると約2-3割高いが、SHA2011準拠により更に高くなる。
多くの先進国は、医療費水準を抑制する政策目標の一つとして、患者負担や家計負担を高めるなどしたが、日本は、同時に政府部門による資金(FS)を増やすことで、最終支出段階での財源 (HF)の割合を一定に保っていることが観察された。
日本はこれまで、対GDP比でOECD諸国の平均以下であったが、2012年から平均を超え、2016年にSHA2011準拠に統一されると、OECD加盟国の中でも上位となることが予想できる。皆保険制度を導入して約50年、介護保険制度を導入して約10年が過ぎた日本の財源と資金構造は、保険制度改革を行う先進諸国だけでなく、これから皆保険制度や介護保険制度を導入しようとしている開発途上の国々にも示唆を与えるものと考えられる。
結論
SHA2011に準拠することにより、2000年以降の保健医療支出が増大する(2010年度、対GDP比1.2%の増加)。増加の主要因は、機能(HC)分類の長期ケアの定義変更である。それに伴って、財源(HF)分類の社会保障基金による支出も増加するが、HF分類の構成割合に大きな変化はない。資金(FS)分類は、政府の拠出額が家計部門を上回った(2010年度)。日本は、増大する保健医療支出に対し、政府部門による拠出を増やすことで、最終支出段階(HF)での負担割合をほぼ一定に保っていることを示している。
SHAの目的は、保健医療制度の導入・変更の成果をモニタリングする分析枠組みを提供することである。SHA2011により、医療・介護を含む保健医療全体の費用支出や負担構造、制度変更等に伴う支出への影響をより正確にとらえることができるようになった。
SHAの目的は、保健医療制度の導入・変更の成果をモニタリングする分析枠組みを提供することである。SHA2011により、医療・介護を含む保健医療全体の費用支出や負担構造、制度変更等に伴う支出への影響をより正確にとらえることができるようになった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-02
更新日
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