文献情報
文献番号
201302009A
報告書区分
総括
研究課題名
受療行動調査による患者の満足度と意識・行動等の現状と推移、相互の関連性およびその規定要因に関する研究
課題番号
H25-統計-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
村上 義孝(滋賀医科大学 医学部社会医学講座医療統計学部門)
研究分担者(所属機関)
- 松山 裕(東京大学大学院 情報学環・学際情報学府)
- 宮下 光令(東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
村上 義孝 滋賀医科大学医学部社会医学講座医療統計学部門准教授から東邦大学医学部医学科社会医学講座医療統計学分野教授に異動。
松山 裕 東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授から東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻生物統計学分野教授に異動。
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、受療行動調査に対して患者調査、医療施設特性をもつ医療施設調査と突合することで、患者の満足度と意識・行動等の現状と推移(経時変化)、相互関連性および規定要因を検討することである。この3つの分担課題の達成のために4つのテーマ、課題1. 患者の満足度と意識・行動等の分布の推移と相互関連性の評価、課題2. 患者の満足度等の施設間差とその規定要因の検討、課題3-1. 患者の満足度や療養生活の質の指標等の現状の分布と課題3-2.規定要因の評価、を設定し、初年度の基礎的検討を行った。
研究方法
受療行動調査・患者調査・医療施設調査を統計法第33 条に基づく申請により入手・突合し、各課題にあわせた解析データを作成した。課題1では過去6調査の患者満足度を示す調査項目に焦点をあて、外来6項目(診察までの待ち時間、診察時間、医師による診察、医師との対話、診察時のプライバシー、全体的な満足度)、入院6項目(医師による診察、医師との対話、医師以外のスタッフ、病室でのプライバシー、食事の内容、全体的な満足度)について病院規模別に経時変化を示した。課題2では患者満足度に影響を与える医療施設特性の探索を目的とし、医療施設調査27項目と患者満足度との関連について検討した。課題3-1では、1)傷病分類に基づき患者の主傷病を分類し、傷病分類ごとに心身状態の分布について比較検討した。また2)受療行動調査におけるがん患者の結果と一般市民集団との違いを昨年度実施した調査結果との違いを比較した。課題3-2では平成23年受療行動調査のがん患者を対象に、療養生活の質に影響を及ぼす要因を探索する目的で、「からだの苦痛がある」、「痛みがある」、「気持ちがつらい」の各項目を反応変数としたロジスティック回帰を実施した。
結果と考察
課題1では外来患者における全体的な満足度では入院ほど明瞭でないものの、特定機能病院と小病院で満足割合の増加と不満割合の減少、療養病床を有する病院で不満割合の減少傾向がみられたが、大・中病院では明瞭な変化がなかった。入院患者における全体的な満足度の推移では、特定機能・大・小病院で満足割合の増加と不満割合の減少が観察され、中病院でも不満割合の減少傾向がみられたが、満足割合については変化がみられなかった。その他、外来患者の項目をみると、待ち時間、診察時間、医師による診察、医師との対話、診察時のプライバシーなどで各々、変化が観察された。入院患者の項目をみると、医師による診察、医師との対話、医師以外のスタッフの対応、食事の内容などで各々、変化が観察された。
課題2では、病院種別をみると入院で特定機能病院、大、中、小病院、療養病床の順に満足割合が低下、不満割合が上昇する傾向がみられ、それらの差は満足割合で9.4%と大きく、不満割合で1.8%であった。開設者別では、外来で開設者が国のとき高い満足と低い不満が、反対に公的医療機関のとき低い満足と高い不満の傾向がみられた。入院では満足・不満割合はともに開設者が国・その他のとき高い満足と低い不満が、医療法人・個人で低い満足と高い不満の傾向がみられた。他に満足割合に差がみられた項目として入院では医育機関、委託(給食、滅菌、保守・医療機器、検体検査)、研修の実施状況が、外来では受動喫煙防止対策、医療安全体制(全般)、院内感染施設内回診、緩和ケア病棟の有無、研修の実施状況などがあった。
課題3-1では、主要疾患別の療養生活の質の指標は「からだの苦痛がある」「痛みがある」に関しては筋骨格系及び結合組織の疾患ではいと答えた人の割合が外来・入院ともに70%程度と高く、他の疾患では神経系の疾患、呼吸器系の疾患でやや高く、外来で20~40%、入院で40~60%程度であった。「気持ちがつらい」に関しては精神及び行動の障害で50~60%と高く、他の疾患では外来で20~40%、入院で40~50%であった。昨年行った同一質問による一般市民の調査結果と比較検討した結果、いずれの項目も入院では一般市民より高値であったものの、外来では「からだの苦痛がある」「痛みがある」に関しては一般市民とあまり差がなく、「気持ちがつらい」は外来がん患者のほうが一般市民より高値であった。
課題3-2では、がん患者に対して療養生活の質の指標の規定要因を検討した結果、年齢が75歳以上であつこと、膵臓がんの患者は療養生活の質が低く、前立腺がんの患者は療養生活の質が相対的に高かった。
課題2では、病院種別をみると入院で特定機能病院、大、中、小病院、療養病床の順に満足割合が低下、不満割合が上昇する傾向がみられ、それらの差は満足割合で9.4%と大きく、不満割合で1.8%であった。開設者別では、外来で開設者が国のとき高い満足と低い不満が、反対に公的医療機関のとき低い満足と高い不満の傾向がみられた。入院では満足・不満割合はともに開設者が国・その他のとき高い満足と低い不満が、医療法人・個人で低い満足と高い不満の傾向がみられた。他に満足割合に差がみられた項目として入院では医育機関、委託(給食、滅菌、保守・医療機器、検体検査)、研修の実施状況が、外来では受動喫煙防止対策、医療安全体制(全般)、院内感染施設内回診、緩和ケア病棟の有無、研修の実施状況などがあった。
課題3-1では、主要疾患別の療養生活の質の指標は「からだの苦痛がある」「痛みがある」に関しては筋骨格系及び結合組織の疾患ではいと答えた人の割合が外来・入院ともに70%程度と高く、他の疾患では神経系の疾患、呼吸器系の疾患でやや高く、外来で20~40%、入院で40~60%程度であった。「気持ちがつらい」に関しては精神及び行動の障害で50~60%と高く、他の疾患では外来で20~40%、入院で40~50%であった。昨年行った同一質問による一般市民の調査結果と比較検討した結果、いずれの項目も入院では一般市民より高値であったものの、外来では「からだの苦痛がある」「痛みがある」に関しては一般市民とあまり差がなく、「気持ちがつらい」は外来がん患者のほうが一般市民より高値であった。
課題3-2では、がん患者に対して療養生活の質の指標の規定要因を検討した結果、年齢が75歳以上であつこと、膵臓がんの患者は療養生活の質が低く、前立腺がんの患者は療養生活の質が相対的に高かった。
結論
当初設定の3課題の検討をおこない、医療施設規模により患者満足度の推移傾向に違いのあること、患者満足度に影響を与える医療施設特性が存在すること、新導入の療養生活の質指標の基本特性などが、研究班初年度の基礎的検討から明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2015-06-02
更新日
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