文献情報
文献番号
201302008A
報告書区分
総括
研究課題名
人口動態統計の個票集計による死因別コホート生命表作成に関する研究
課題番号
H25-統計-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 悦司(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平均寿命の根拠となる生命表とは一般には,ある年の各年齢の死亡率を用いたセンサス(もしくは期間)生命表と呼ばれるものである。センサス生命表では,その年の死亡状況は把握できるが,ある年に出生した集団(コホート)の生涯にわたる寿命や死亡状況を把握することはできない。たとえば,大正生まれ男性は戦争で死亡した割合が高く,昭和ヒトケタ出生男性には肝がんによる死亡が高いといわれるが,それらの実態は死因別生命表でなければ把握できない。
本研究では初の試みとして,人口動態統計の死亡票を生年月で集計しコホート生命表を死因別に作成した。また通常の人口動態統計は暦年単位であるが,世代意識はむしろたとえば「東大入試のなかった年(1969年)に大学進学した」「共通一次が始まった年に入学した」というふうに「学年」が中心になるので1月~12月ではなく4月~3月という学年単位に行った。
コホート別死因別の生命表を作成するには死亡個票の集計が必要であるが,個票が分析可能なかたちで残存しているのは1972年以降のみであり,それ以前の記録は紙媒体でも残っていなかったので1972年4月~2012年3月の40年間のみで作成した。
本研究では初の試みとして,人口動態統計の死亡票を生年月で集計しコホート生命表を死因別に作成した。また通常の人口動態統計は暦年単位であるが,世代意識はむしろたとえば「東大入試のなかった年(1969年)に大学進学した」「共通一次が始まった年に入学した」というふうに「学年」が中心になるので1月~12月ではなく4月~3月という学年単位に行った。
コホート別死因別の生命表を作成するには死亡個票の集計が必要であるが,個票が分析可能なかたちで残存しているのは1972年以降のみであり,それ以前の記録は紙媒体でも残っていなかったので1972年4月~2012年3月の40年間のみで作成した。
研究方法
対象コホートは1912年4月~13年3月出生(COHORT1912)より2011年4月~12年3月出生(COHORT2011)の百世代とする。これは大正,昭和,平成の時期である(厳密には1912年4~7月は明治)。
1972年3月以前出生者については1970年10月1日現在国勢調査人口をコホートのスタートとする(当時は沖縄県を含めても1億400万人くらい)。1972年4月以降出生者は出生者全員をコホートとする。海外邦人数も増加しており,人口減少の原因として死亡の他,海外移住もあると考えられるがデータ入手の困難からこれは無視して,死亡のみを扱った。磁気媒体で得られるのが1972年以降なので1972年4月~2012年3月の40年間分のデータを分析した。対象項目は,性,生年月,死亡年月,死因(ICD)である。
1)完全コホート生命表
1972年4月以降出生者は,全ての死亡が把握されるのでそれぞれ学年コホート(4月~3月)の出生者数を分母に死亡率を算出する。
2)部分コホート生命表
1972年3月以前出生者は,全ての死亡を把握できない。そこで1970年10月1日現在の国勢調査人口(出生月別の区分あり)をスタートとして死亡率を算出する。
1972年3月以前出生者については1970年10月1日現在国勢調査人口をコホートのスタートとする(当時は沖縄県を含めても1億400万人くらい)。1972年4月以降出生者は出生者全員をコホートとする。海外邦人数も増加しており,人口減少の原因として死亡の他,海外移住もあると考えられるがデータ入手の困難からこれは無視して,死亡のみを扱った。磁気媒体で得られるのが1972年以降なので1972年4月~2012年3月の40年間分のデータを分析した。対象項目は,性,生年月,死亡年月,死因(ICD)である。
1)完全コホート生命表
1972年4月以降出生者は,全ての死亡が把握されるのでそれぞれ学年コホート(4月~3月)の出生者数を分母に死亡率を算出する。
2)部分コホート生命表
1972年3月以前出生者は,全ての死亡を把握できない。そこで1970年10月1日現在の国勢調査人口(出生月別の区分あり)をスタートとして死亡率を算出する。
結果と考察
各表とも,タテ軸にコホート,ヨコ軸を年齢(0~99歳)で表示した。コホート生命表と累積死亡率については,数値の高低を明らかにするため,高→低を赤→黄→緑の色分けで表示した。累積死亡率については,1971年コホート以前と1972年コホート以後で分母が異なるため,区別して色分けした。各表のレイアウトは,縦軸にコホート,横軸に年齢であり,26死因×性別(2)×3表=156表にa)生存数の2表を加えた計158表からなっている(各表を見開き4頁におさめたので計632頁)。レイアウトにおいて,水平に出現する傾向はコホート(cohort)効果,垂直方向に出現する傾向は加齢(age)効果そして斜めに出現する傾向は時代(period)効果であり,age-period-cohort (APC) 分析とよばれる。下図は女の0~49歳の自殺死亡率であるが,1972~2011年の40年の帯びの中央(1990年前後)に緑色の低い線がみられる。これはこの時代(バブル景気の最中)が,世代,年齢を通じて比較的自殺死亡率が低かった時代であることを示している。初の死因別コホート生命表の作成により,たとえば「戦争を経験した大正世代はそうでない世代より自殺率は高いか低いか」とか「昭和ヒトケタ世代男性の肝がん死亡率は前後世代より高いか」といった疑問に答えることが可能となった。
結論
初の死因別コホート生命表を作成したことにより,どの死因がどの世代に影響しているか分析可能となった。昭和ヒトケタ男性の短命は1980年に大久保らが初めて発見し(厚生の指標1980年2月号),岡本が再確認(厚生の指標2006年11月号)したが,ではどの死因が短命の原因かまでは,死因別の生命表がないため不明であった。死因別コホート生命表により死因別の分析が可能となった。本成果が研究者によって二次利用されれば,これまで不明だった世代ごとの死因の特徴が明らかになるであろう。
公開日・更新日
公開日
2015-06-02
更新日
-