ICF(国際生活機能分類)の普及を促進するためのツールとしてのWHO-DASの活用可能性に関する研究

文献情報

文献番号
201302005A
報告書区分
総括
研究課題名
ICF(国際生活機能分類)の普及を促進するためのツールとしてのWHO-DASの活用可能性に関する研究
課題番号
H25-統計-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 東野 定律(静岡県立大学経営情報学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際生活機能分類(以下、「ICF」という。)は、人間の生活における「身体機能・身体構造」、「活動」、「参加」等に対して、それぞれの行為等を国際的に共通となるようコード化したものである。このため、ICFが保健、医療、福祉等分野で共通言語として利用されることによって、分野間での相互理解の推進等が図られるとされてきた。
世界保健機関(以下、「WHO」という。)では、ICFの活用を含めたツールとしてWHO-DAS2.0が公表されており、日本国においても、このWHO-DSA2.0を用いることで、ICFを臨床現場で認識してもらい、普及されるものと考えられている。また、このWHO-DASを具体的に活用することにより、わが国で用いられている各種のアセスメントツールとの対比等も可能となる。しかし、WHO-DAS2.0については、使用言語の歴史的、文化背景からの単語、文書の持つ意味合いを適切に反映させる作業(日本語化)が完成していない。本研究では、① WHO-DAS2.0の日本語版の作成を行うと共に、②実際に現場での活用を可能とするために、調査を実施し、臨床適応の可能性について検証を行う。これらを通して、WHO-DAS2.0やICF概念による評価の国内適応の課題、対策等を明確化し、普及・定着の方策を検討することを目的とした。
研究方法
本研究では、まず学識経験者、保健・医療・福祉の臨床家によって構成された研究委員会を組織し、WHO-DAS2.0の評価票及び、マニュアルを精査し、WHO-DAS2.0日本語版及びメニュアルの開発を行った。その後、二つの調査(①独居要介護高齢者を対象としたWHO-DAS2.0日本語版を用いた面接調査、②入院患者を対象としたICFを用いた調査)を実施し、この調査結果を分析することで、WHO-DAS2.0やICFの概念を用いた評価項目の国内への適応の課題、対策等について検討した。
結果と考察
研究の結果、今回WHO-DAS2.0日本語版及びマニュアルを開発したが、マニュアルには回答の例示が少なく、項目の内容がわかりにくい、理解できないとの被評価者の指摘が多く、評価項目自体への疑問や、その意義に関しての意見もあり、これらの項目が選定された理由や、調査の意義をわかりやすく説明した副読本の開発も必要と考えられた。また、同時に日本で初めて、ICF評価項目(Generic core set 7項目)を用いた調査を実施した。その結果、WHO-DAS2.0と関連するd(activity)項目における日常生活、報酬を伴う仕事については、入院医療をしている者の評価は困難であった。また、これ以外の項目であれば既存のアセスメントツールのほうが利便性は高いことが明らかになった。さらに独居高齢者への調査と同様、WHO-DASの項目の評価基準のあいまいさには、翻訳された日本語にも当然ながら影響しており、臨床現場で評価する際には、多くの臨床家にとっては、利用が難しいとの評価がされた。
結論
WHO-DAS2.0は、ICF概念に基づくアセスメントツールとして、注目されるツールとなっているが、国際的にもICFの概念や、これらを利用した評価ツールの普及には課題があるとされている。本研究の結果からも、 WHODAS2.0やICFにもとづく評価ツールについては、わが国に導入するにあたっては、課題が多いことが示された。一方、本研究の成果として、WHO-DAS2.0日本語版の開発がなされた。しかし、これをすぐに利用することは、難しく、本研究で開発したWHO-DAS2.0日本語版を活用し、さらに調査を重ね、調査に際してのガイドラインを整備していくことが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201302005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
WHO-DAS2.0は、ICF概念に基づくアセスメントツールとして、注目されるツールとなっているが、国際的にもICFの概念や、これらを利用した評価ツールの普及には課題があるとされている。本研究では、WHO-DAS日本語版の開発を行ったが、WHODAS2.0やICFにもとづく評価ツールをわが国に導入する際の課題も同時に明らかにされ、臨床適応には今後の引き続きの研究が必要と考えられた。
臨床的観点からの成果
WHO-DAS2.0については、ICFを基にしたアセスメントツールであり、個人の主観的視点に絶対的な優先を置いている生物心理社会的モデルの国際レベルでの利用の拡大と、これと同時に新しい分類法の促進によって、そのニーズが増加している。しかし、わが国における臨床適応には課題が多いことが本研究から明らかになった。具体的には、主観による評価であること、その評価する際の基準のあいまいさから今後、評価基準の統一に際して相当の工夫が必要であり、加えて、評価に際してのガイドラインの開発が求められると考えられた。
ガイドライン等の開発
本研究の結果、フィールドテストを基にしたWHO-DAS2.0日本語版の修正が行われ、評価やこの指標を活用する際の留意点が集積された。 
その他行政的観点からの成果
厚生労働省が実施する各種統計調査における新規項目の検討の際、本研究の成果が参考とされた。
その他のインパクト
ICFを普及する厚生労働統計協会の実施する講座において、本研究成果を取り上げ、普及啓発を行った。
ICFを普及する厚生労働省主催のシンポジウム(平成28年2月21日)で本研究成果を取り上げ、普及啓発を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
厚生労働省が主催するICFシンポジウムで講演し、ICFおよびWHO-DASの普及啓発を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T Tsutsui, M Otaga, S Higashino, A Cottenicin.
How to implement ICF-basedassessment tools into clinical practice in Japan?
経営と情報 , 26 (2) , 1-15  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
2018-06-11

収支報告書

文献番号
201302005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
1,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 246,949円
人件費・謝金 1,240,229円
旅費 105,380円
その他 407,433円
間接経費 0円
合計 1,999,991円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
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