ICD11オミックスサブ情報モデル(iCOs)の妥当性に関する実証研究

文献情報

文献番号
201302002A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD11オミックスサブ情報モデル(iCOs)の妥当性に関する実証研究
課題番号
H24-統計-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 純(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 博(東京医科歯科大学 難治疾患研究所生命情報学・生命情報)
  • 今井 健(東京大学 医学部付属病院 企画情報運営部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではWHO-ICD11改訂に資するため、ICD11のコンテンツモデルに組み込むことのできるICD11オミックスサブ情報モデル(iCOs)の妥当性と性能に関する実証的検討を、東京医科歯科大学網羅的疾患分子病態データベース iCOD などの臨床オミックスデータベースの臨床オミックス実データ、NCKなどのオントロジー実データを用いて行うことを目的とする。本年度は平成24年度の成果に基づき、上記実データを用いたデータベース構築を行い、提案方式の妥当性並びに限界性能について検証を行った。
研究方法
昨年度、拡張を行ったICD11オミックスサブ情報モデル(ICD11 Omics Subinformation model: iCOs) をデータベース構築のためのモデルとし、東京医科歯科大学の統合的臨床オミックスデータベース(Integrated Clinical Omics Database: iCOD)を検証用の実データとして用いた。iCODは、統合データベースプロジェクトの一環として構築され、肝胆膵外科、大腸外科、及び口腔外科に入院した患者約400名を対象に、カルテから収集した病歴、診断、検査、外科的治療、内科的治療、予後の情報、及び看護師が聞き取った生活習慣情報と、病理標本よりレーザダイセクションで切り出した患部における網羅的遺伝子発現情報を集積したものである。全体で34個のテーブルからなるリレーショナルデータベースとして構成されている。本研究では実データをiCOsモデルで格納しデータベース構築を行うが、目的はモデルの限界性能の検証であるため、各患者の症例の詳細内容を直接用いる訳ではない。そこでiCODに対して連結不可能匿名化を施した上で、類似ダミーデータに置換した結果を借用し研究を行った。次にiCOsモデルで実データを格納し、多施設の臨床オミックスデータベースを構築する上での課題を検討した。iCOsはデータの関係を記述した情報モデルでありデータベーススキーマではない。実際には患者数が膨大になった場合の格納方法、ICD11やNCKといった静的な外部知識と動的に追加・変更される患者情報の切り分けの問題など、実データ格納上の検討課題があり、それら技術的要請に対する解決方針を定めた。最後に上記解決方針に基づき、iCOD実データをiCOs形式のXMLに変換し、データベースを構築した。また構築されたデータベースに対し、臨床オミックス研究で必要と考えられる検索の可否について検討を行った。
結果と考察
昨年度に拡張を行ったICD11オミックスサブ情報モデル(ICD11 Omics Sub information model: iCOs) に基づき、東京医科歯科大学統合的臨床オミックスデータベース iCODの実データを格納する際の課題を明らかにし、解決方針に従って実データベースを構築した。結果、(1) SS-MIX2と親和性の高いデータベース全体構造の導入、(2) 外部知識と患者臨床情報の分離、(3) Reference-IDを用いた複雑な参照構造の表現、(4) 共通参照レイヤーと各DB固有の名前空間の分離、といった工夫により、実データを問題なく格納できることを確認した。
結論
本研究の方式により構築された臨床オミックス研究データベースは、多施設間の情報共有・交換のための中間ストレージとして機能し、共通参照レイヤーの情報粒度で横断的な検索が可能である。また個々の患者臨床データの情報項目は、iCOsモデルを通じて対応するICD11エンティティと対応づけられており、ICD11のコンテンツモデルで記述された疾患特性 (一般的医学知識) と相互に参照することが可能である。今後は、より細かい情報粒度での検索クエリの実現のため、RDFデータベース上でのSPARQLクエリの利用とOWLレイヤーでのメタ情報記述の組み込みを検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201302002B
報告書区分
総合
研究課題名
ICD11オミックスサブ情報モデル(iCOs)の妥当性に関する実証研究
課題番号
H24-統計-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 純(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 博(東京医科歯科大学 難治疾患研究所生命情報学・生命情報)
  • 今井 健(東京大学 医学部付属病院 企画情報運営部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICD11改訂に資するため、平成22年度厚生労働科学研究費補助金(統計情報総合研究事業)「ICD11におけるオミックス情報モデルの研究」の成果であるICD11臨床オミックス情報モデル(ICD11 Omics Sub information model: iCOS)の妥当性に関する多角的実証研究を行う。
研究方法
まず、iCOsモデルの妥当性検証を行うにあたり必要不可欠なユースケースを設定した。さらにiCOsモデルによる「実臨床オミックスデータベースの記述可能性」を検証するため、東京医科歯科大学の網羅的分子病態データベース (iCOD) を例として用い、iCOsモデルとの情報項目マッピングを行った。得られたマッピング結果から、iCOsモデルの不備を明らかにし、モデルの拡充を行った。修正したiCOSモデルはAltova XML Spy を用いてXML Schemaとして記述した。拡充を行ったICD11オミックスサブ情報モデル(ICD11 Omics Subinformation model: iCOs) をデータベース構築のためのモデルとし、東京医科歯科大学の統合的臨床オミックスデータベース(iCOD) を検証用の実データとして用いた。次にiCOsモデルで実データを格納し、多施設の臨床オミックスデータベースを構築する上での課題を検討した。iCOsはデータの関係を記述した情報モデルでありデータベーススキーマではない。実際には患者数が膨大になった場合の格納方法、ICD11やNCKといった静的な外部知識と動的に追加・変更される患者情報の切り分けの問題など、実データ格納上の検討課題があり、それら技術的要請に対する解決方針を定めた。最後に上記解決方針に基づき、iCOD実データをiCOs形式のXMLに変換し、データベースを構築した。また構築されたデータベースに対し、臨床オミックス研究で必要と考えられる検索の可否について検討を行った。
結果と考察
近年のオミックス医学の発達に伴い、臨床情報とオミックス情報を統合してデータマイニング手法により解析し、種々の医学的知見の発見に応用しようとする研究が盛んになりつつある。従って、将来的にそのような臨床オミックスデータを多施設間で統合的に解析するための方法論の確立は極めて重要である。本研究でモデル設計の原理として設定した”2-layer model” はこのようなデータベース統合の際に良く問題となる共通情報粒度の設定といった問題に対し、1つの解決策を与えるものであり、本研究の大きな特徴の1つである。同様に、Time courseの記述モジュールは、元来静的な情報の記述を目的としたiCOsに対して、時系列情報の記述能力を与えるものであり、本研究の2つ目の大きな特徴である。次に、臨床オミックスデータを多施設間で統合的に解析するための方法論の確立と提案方式の妥当性並びに限界性能について検証であるが、ICD11, NCKといった外部参照知識ベースと動的に追加・変更される患者臨床データ(iCOD) を分離し、SS-MIX2と同様のデータ構造を採用した。これによりデータの追加や変更に伴う操作が簡便で取り扱い容易な、多施設間の情報共通・交換のための臨床オミックスデータ中間ストレージを実現しており、これが提案方式の大きな特徴の一つである。さらに、外部参照知識ベースと各患者臨床データの全てが、同一のiCOsモデルに基づいて記述されており、各タグの参照IDを用いて互いに情報を辿ることができる。これにより、特定の患者症例から、ICD11の疾患特性記述を参照したり、逆にICD11の疾患記述から、その疾患に関連する患者のオミックスデータを取得したりすることが可能である。これらは多施設データベースの共通参照レイヤーとして、iCOsの情報粒度を統一的に用いた利点であり、これもまた本研究の大きな特徴となっている。
結論
ICD11臨床オミックス情報サブモデル(ICD11 Omics Sub information model: iCOs)の開発とその妥当性の検討は、オミックス医学をICD疾病分類に組み込むための要に位置づけられる研究であり、医学研究、臨床医療を含めた医学全体の発展に貢献することができる。さらに現実的な利用観点での実証を行った臨床オミックス情報モデルの提示は、網羅的オミックス情報の医学研究応用をデータ交換の効率性を向上という観点から加速することができる。現在ICD11の改訂が進められているが、本研究で開発したiCOsモデルによる臨床オミックス研究データベース構築方式は、ICD11のオミックス領域への可用性を高め国際社会に貢献するのみならず、今後ますます発展していくと見込まれる臨床オミックス研究の情報学的基盤として重要な役割を果たすと期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201302002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
事実上の国際標準であるICD11において日本が主導的に開発検討提案しているiCOSを、臨床オミックス実データを用いて実証した本研究は、今後大きく発展を遂げると思われるオミックス医学の発展に日本が大きく寄与し国際的にも主導的な役割を果たすことを決定づけることができる。また、電子化転換の節目となるICD11において、オミックス医療という将来医療を決定づける研究であり、日本が世界に貢献する歴史的な成果となることが期待できる。
臨床的観点からの成果
iCOSの開発とその妥当性の検討は、オミックス医学をICD疾病分類に組み込むための要に位置づけられる研究であり、網羅的オミックス情報の医学研究応用をデータ交換の効率性を向上という観点から加速することができる。また、ISO標準であるGSVMLと親和性を持つiCOSが、現実的な観点で利用できることを実証することは、コスト低減、時間短縮、効率向上などの観点から、将来にわたって大域的に日本国民の保健・医療・福祉の向上の一助となることができる。
ガイドライン等の開発
医療情報の標準化に関する戦略/厚生労働省ICD室(2013.5.14)
これからの情報通信分野における取り組むべき課題/自由民主党本部/情報通信戦略調査会(2013.5.22)。
ISO-TC215で、発展系としてのOML、WGMLが、国際標準化されることとなった。
OMLはISをめざし、WGMLはTRをめざす。
その他行政的観点からの成果
WHO-FIC ITC委員会において、中心的検討議題の一つとして取り上げられている。
ITC委員会及びSEG幹部会議において、戦略的項目の一つとして取り上げられ、2017年メキシコWHO-FIC会議で検討されることとなった。
その他のインパクト
特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ISO TC215で、アメリカ、カナダ、韓国などと国際協調して国際標準化の検討が始まった。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
2018-07-04

収支報告書

文献番号
201302002Z