縦断的レセプトデータを用いた医療・介護サービス利用状況の地域間比較

文献情報

文献番号
201301034A
報告書区分
総括
研究課題名
縦断的レセプトデータを用いた医療・介護サービス利用状況の地域間比較
課題番号
H25-政策-若手-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
成瀬 昂(東京大学 大学院医学系研究科(地域看護学分野))
研究分担者(所属機関)
  • 辻 哲夫(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 飯島 勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 吉江 悟(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 永田 智子(東京大学 大学院医学系研究科(地域看護学分野) )
  • 蔭山 正子(東京大学 大学院医学系研究科(地域看護学分野) )
  • 岩本 康志(東京大学 経済学研究科)
  • 両角 良子(富山大学 経済学部)
  • 湯田 道生(中京大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、地域の医療計画・介護計画を立案するのは各市町村、および都道府県の役割である。各機関は、自身の管轄地域の医療・介護の資源状況を把握し、住民アウトカムの改善に向けて計画をたて、努力することが義務付けられている。在宅看取りの達成率が地域間で大きく異なることがないよう、フォーマル・インフォーマル資源を整備することは、計画立案の重要な視点となる。本研究は、医療・介護計画立案の最小単位である「市町村」に着目し、在宅医療の推進という視点から、地域のサービス資源の充・不足状況とその原因を明らかにすることを目的とする。
初年度は、「要支援・要介護高齢者の発生を抑える」、「要支援・要介護高齢者の重度化を予防する」の2つの課題に注目し、これらの取り組みについて、地域のサービス資源の充・不足状況とその原因を明らかにすることから開始した。
なお、本研究は、高齢化が進行し、人口流出が続いている地方の都道府県の事例として「福井県」を分析対象とした。
研究方法
初年度は、以下の3つに取り組んだ。
まず、福井県の国民健康保険組合連合が管理する医療・介護給付レセプトデータと特定健診受診者データ、同県の広域連合が管理する後期高齢者医療制度の医療レセプトデータ、および各市町が管理する介護予防事業対象者データを活用し、市町住民の生活実態を把握するための契約手続きとデータ抽出プログラムの開発を行った。このシステムは、種類の異なる保険に加入する者について、同一個人を連結し、住民の医療・介護等資源の消費状況を多面的に把握すること、および、同一個人に関する経時データを連結し、住民の資源消費状況を縦断的に把握することを目指した。
さらに、糖尿病・高血圧・脳血管性疾患(脳梗塞・脳内出血)に焦点をあて、福井県内17市町の疾患関連レセプトの人口あたり発生率の比較、5市町で特定健診での疾患関連指標データの比較と生活習慣・受療行動に対する住民の嗜好性に関するヒアリングを行った。これにより、糖尿病・高血圧・脳血管性疾患(脳梗塞・脳内出血)について、診断を受ける前の住民の疾患発生リスクを把握することを目的とした。
また、高齢者の介護予防・要介護度の悪化予防に関連する現状と課題を整理するため、介護予防事業データ、および介護給付費データの解析を行った。高齢者の要介護認定率の市町間比較、各市町で行われている介護予防事業の実施状況・効果評価、要介護1~2の認定を受けた高齢者の予後12か月の要介護度の悪化者割合の市町間比較、を行った。さらに、17市町のうち県北部3市町、県南部2市町の計5市町のみを対象に、在宅医療・介護サービスの利用に関する住民の嗜好性に関するヒアリングを行った。これにより、要支援・要介護認定率、および要介護度の悪化率に市町間で差が生じる原因について、仮説を探索した。
結果と考察
まず、国民健康保険組合連合が管理する医療・介護給付レセプトデータと特定健診受診者データ間あで同一個人を特定・連結しうるプログラムが完成した。
レセプト等データ解析、5市町の保健業務担当者へのヒアリング、住民調査の分析を通して、市町間で糖尿病、高血圧、脳血管性疾患の入院・入院外レセプトの発生率と要支援・要介護認定者の発生率が大きく異なっていることが明らかになった。その背景には(1)住民の医療・介護、および生活習慣に対する規範意識、(2)住民の産業構造、(3)医療等資源へのアクセシビリティがある可能性が示唆された。次年度以降、市町の在宅医療・介護の現状を評価する場合は、(1)~(3)を考慮した解析と結果の解釈が必要である。
結論
「要支援・要介護高齢者の発生を抑える」、「要支援・要介護高齢者の重度化を予防する」の2つの課題に注目し市町の現状を俯瞰的に把握した。その結果、レセプト等データを解析、また結果を解釈する際に考慮すべき市町特性が明らかになった。2年目には、まず、市町の(1)住民の規範、(2)産業構造、(3)資源へのアクセシビリティ、を指標化することから始める。これには、人口重点を中心とした住民生活環境のスコアリング手法、および、Geographc information system を活用した産業人口・医療等資源の空間密度、を活用する予定である。レセプト等データと、(1)~(3)に関する市町の指標との関連を明らかにすることで、各市町のサービス提供体制の課題・改善策を具体的に提示することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201301034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,200,000円
(2)補助金確定額
2,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 27,333円
人件費・謝金 429,216円
旅費 423,220円
その他 1,120,231円
間接経費 200,000円
合計 2,200,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-