NICU及びGCU入院新生児の乳児虐待発症予防を目指した多種専門職参加型の診療体制を構築するための研究

文献情報

文献番号
201301033A
報告書区分
総括
研究課題名
NICU及びGCU入院新生児の乳児虐待発症予防を目指した多種専門職参加型の診療体制を構築するための研究
課題番号
H25-政策-若手-013
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山田 律子(尾田 律子)(国立国際医療研究センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 赤平 百絵(国立国際医療研究センター 小児科)
  • 松下 竹次(国立国際医療研究センター 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、妊娠への認識低下、妊婦健診未受診、保護者の育児能力不足や育児支援体制の欠落などより良好な育児環境下にない新生児が増加している。特に新生児治療室に入院した児は、医療介入や出生早期の母子分離などにより、発育・発達の問題に加えて社会的問題が顕在化することが多い。
それら新生児・保護者を支援するために、多種専門職における医療(研究1)および退院支援(研究2)サービスの介入や充実を図ること、標準化した評価票を用いて、早期に支援が必要な家庭を抽出し多種専門職による定期的な協議を行なうこと(研究3)、さらに病院間地域連携協議会の継続的・定期的開催を行い情報共有する制度のモデル作成すること(研究4)を目的にする。これら育児支援は乳児虐待予防に最も貢献すると思われる。
研究方法
研究1.医療の多種専門職の導入:従来の医師・看護職に加え、コメディカル(薬剤師・理学療法士・臨床工学技士・放射線技師・臨床検査技師)が参加し、患者介入の可能性を検討した。母乳ケアなどリソースが不足している職種では、病院内外の専門職間交流の可能性を検討した。
研究2.退院支援のための多種専門職の導入:従来の医療ソーシャルワーカー(MSW)、臨床心理士、地域保健師に加え、新たに子ども家庭支援の専門ワーカーとの連携を強化や母児同室の可能性について検討する。さらに多種専門職会議を推進するため新生児特定集中治療室退院調整加算の基準の拡大について検討する。
研究3.都市型と地方型の周産期危険因子の解析の研究:国際医療研究センター及び研究協力病院(倉敷成人病センター)で出生し、新生児室および新生児治療室に入院した新生児とその家族を後方視的に検討する
・評価票:①妊娠~出産、②社会的背景、③育児、④家庭環境・家族背景・育児環境を網羅している。
・多種専門職会議:医師、看護職、臨床心理士、MSWで定期的に協議し、該当児にはMSWが介入する。
・育児支援:母児同室による育児手技の向上、家族の心理ケアの充実、地域の社会資源投資(保健師、子ども家庭支援センター、児童相談所、訪問看護)などのサポートを行う。
・退院先の決定と地域支援、フォローアップ体制の構築:外来や社会的資源による見守り体制を強化する。
 以上の過程が適切に行われ、子どもに利益のある支援になっているかを検討する。
研究4.地域病院間連携モデルの設立と検討:医療職が参加可能な病院間地域連携協議会を病院立地地区に設置し、該当患児情報の共有化・一元化を計ることを検討した。さらに、行政職が地区病院共有のキッズマネージャー(仮称)として職務できるかの可能性を検討する。
結果と考察
研究1.医療の多種専門職の導入:従来の医師・看護職に加え、コメディカルが参加した。服薬指導、小児薬物療法認定薬剤師の導入、看護職と協力した理学療法の導入、在宅医療の臨床工学技士の役割、放射線技師により頭部外傷への介入があった。母乳ケアに対しては、病院内外の看護職の専門職間交流の実施により、効果的な医療サービスに発展した。
研究2.退院支援の多種専門職の導入:従来のMSW、臨床心理士、地域保健師に加え、新たに子ども家庭支援の専門ワーカーとの連携を強化する。多種専門職会議を推進するため新生児特定集中治療室退院調整加算の基準の拡大が重要と思われた。
研究3.都市型と地方型の周産期危険因子の解析の研究:国際医療研究センター及び研究協力病院(倉敷成人病センター)で出生し、新生児治療室に入院した新生児とその家族を後方視的に検討したところ、周産期危険因子をスクリーニングし必要な介入(社会資源の導入)を行うことは、乳児虐待予防に結びつくことが示唆された。
研究4.病院間地域連携モデルの検討:医療職が参加可能な病院間地域連携協議会を新宿区に設置し、該当患児情報の共有化・一元化を計ることを取り決めた。行政職員が地域病院群に参加していく方式、キッズマネージャー制度の可能性を検討した。キッズマネージャーの的確な職種として、保健師、医療ソーシャルワーカーの資格があげられた。
結論
1.新生児治療室の医療サービスの向上には、医師・看護職に加えて、コメディカルの介入や専門職間交流は有効だと思われた。
2.退院支援サービスの向上には、院内および院外の多種専門職の介入が有効だと思われた。母児同室の病院内での有効活用は可能と思われた。新生児特定集中治療室退院調整加算の基準の拡大により、多種専門職会議の定例化を推進できると思われた。
3.標準化した評価票によるスクリーニングにより、適切なMSWの介入や育児支援ができると思われた。
4.単独医療機関だけでなく、地域病院の連携を深めて情報共有していくことが乳児虐待予防のための育児支援に重要である地域病院間連携による情報共有によって、子ども虐待防止の啓蒙に役立つと思われた。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201301033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,800,000円
(2)補助金確定額
1,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 124,215円
人件費・謝金 390,600円
旅費 541,400円
その他 543,785円
間接経費 200,000円
合計 1,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
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