妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する研究 

文献情報

文献番号
201301031A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する研究 
課題番号
H23-政策-若手-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
水主川 純(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 竹次(独立行政法人国立国際医療研究センター 小児科)
  • 新保 卓郎(独立行政法人国立国際医療研究センター 医療情報解析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
1,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会保障審議会の児童虐待による死亡事例に関する報告では、実母の主な問題点として望まない妊娠、妊婦健診未受診が挙げられている。児童虐待予防には、妊娠中から医療機関と関係機関が連携した対応が必要である。本研究は妊娠期から行う児童虐待予防の介入法の構築を目的とした。
研究方法
妊娠期から行う児童虐待予防のための支援および効果的な子育て支援策について検討した。
結果と考察
妊娠期から児童虐待予防のために支援が必要であると判断される妊婦の把握方法については、母子健康手帳交付や妊婦健康診査の機会に妊婦と関わる者が職種や分娩取扱いの有無によらず、児童虐待予防のために妊娠期から支援を行うことの重要性について認識を高めることが重要であろう。支援体制の確保については、各施設設内だけでなく、関係施設間における緊密な連携体制の構築が望まれる。育児能力や愛着形成に関する評価に関しては、多職種の連携により妊婦の発言や言動に関する情報共有を行い、客観的に評価することが重要である。母児の支援者や家庭内および地域における育児環境を含めた評価も重要であり、状況に応じ、母児の支援者に対する支援も考慮することが必要である。また、支援拒否が生じる可能性があるため、そのような状況が生じた際の具体的な対応についても予め検討しておくことは、継続的な支援体制の確保に有用であろう。
養育の不安要因を認める症例では、児の父親と音信不通である症例、37週未満の前期破水、早産、小児科入院、人工乳栄養などが多く、医学的理由により母子同室の機会が限られていることや医療従事者との関わりに消極的になる可能性が示唆された。産前の管理入院期間も活用し、養育に関する不安要因の軽減や解消につとめていくことが重要であろう。児の発育・発達に伴い、栄養方法だけでなく、保護者の児への関わり方が変化することが示された。いずれの月齢においても、育児支援者が存在しない症例が認められることが明らかになった。保健所などの外部施設を利用した育児の実施は、児の月齢が進むにつれ高まった。早い月齢に家庭における育児支援者が存在せず、行政機関による支援が必要な場合は、家庭訪問などを活用した支援を考慮する必要があると考えられた。育児に関する情報発信に関しては、育児に取り組んでいる人やその家族に対し、正確な情報を伝えることが重要であり、インターネットを活用した情報発信が効果的であろう。
結論
妊娠期から児童虐待予防のための支援を行うためには、妊婦健康診査などを活用し、養育に関連する不安要因を早期に把握することが重要である。関係機関の緊密な連携体制や多職種による育児能力や愛着形成に関する客観的な評価、母児の支援者に関する評価は、養育に関連する不安要因の軽減や解消を図るための支援を考案するために必要であろう。妊娠期、分娩期、育児期に関わるそれぞれの関係者の切れ目のない連携により、育児環境の変化や児の月齢に応じた支援が継続的に行われることが児童虐待予防に重要である。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201301031B
報告書区分
総合
研究課題名
妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する研究 
課題番号
H23-政策-若手-014
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
水主川 純(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 竹次(独立行政法人国立国際医療研究センター 小児科)
  • 新保 卓郎 (独立行政法人国立国際医療研究センター医療情報解析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会保障審議会の児童虐待による死亡事例に関する報告では、実母の主な問題点として望まない妊娠、妊婦健診未受診が挙げられている。児童虐待予防には、妊娠中から医療機関と関係機関が連携した対応が必要である。本研究は妊娠期から行う児童虐待予防の介入法の構築を目的とした
研究方法
妊婦健康診査未受診・不定期受診症例における問題点と養育支援に関する現状、児童相談所への通告と乳児院入所の関連要因、妊娠期の養育支援のあり方および効果的な子育て支援策について検討した。
結果と考察
妊婦健康診査未受診や受診回数が少ない症例に関しては、妊娠中に周産期管理や育児環境に関する評価を十分に行うことが困難であった。社会保障制度の利用開始が妊婦健康診査の定期受診や周産期管理、保健指導の実施、周産期予後の向上に寄与することが示唆された。児童相談所への通告の関連要因として、若年、未入籍、児の父親と音信不通、人工妊娠中絶経験、精神疾患などが示された。乳児院入所の関連要因として、妊婦健診未受診、小児科入院などが示された。また、養育に関する不安要因を認める症例では、医学的理由により母子同室の機会が限られていることや医療従事者との関わりに消極的になる可能性が示唆された。
養育に関する不安要因を認める妊婦に対する支援は限られた時間で行われているのが現状であった。母子健康手帳交付などは必ずしも支援の契機になっておらず、これらの支援の問題点として、関係機関の連携体制や役割分担が不明確であることが挙げられた。また、母児の支援者に対する支援や支援困難事例への対応策を考慮することの重要性が指摘された。より早期から児童虐待予防のための支援を行うためには、妊婦と関わる者が職種によらず、妊娠期からこのような支援を行うことの重要性について認識を高め、養育に関する不安要因の把握に努めることが重要であろう。支援体制の確保については、各施設設内だけでなく、関係施設間における緊密な連携体制の構築が望まれる。育児能力や愛着形成に関する評価に関しては、多職種の連携により妊婦の発言や言動について客観的に評価することが重要である。
分娩後、妊娠・分娩に関わった医療従事者と母児が関わる機会は減る。周産期ハイリスク妊婦票を作成し、この票に基づき、社会的経済的問題を抱える妊婦から出生した児の小児科外来におけるフォローアップ率は高まった。妊娠期の情報に基づき、児を継続的にフォローアップしていくことは児童虐待予防に有用であることが示唆された。したがって、分娩後に小児科や地域の関係機関にしっかり引き継ぐことが重要であると考えられた。児の発育・発達に伴い、栄養方法だけでなく、保護者の児への関わり方が変化することが示された。育児環境の変化や児の発育に応じた効果的な支援や正確な情報発信が必要であろう。
結論
妊娠期から児童虐待を予防するためには、切れ目のない連携による支援体制が妊娠期、分娩期、育児期のそれぞれの期間に関わる支援者により築かれていくことが重要であると考えられた。本研究により明らかになった養育に関する不安要因、支援の問題点、効果的な育児支援法および今後取り組むべき課題に基づき、医療機関、行政機関、地域社会が連携し、妊娠期から児童虐待を予防するための支援が積極的に行われることが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201301031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
児童相談所への通告や乳児院入所に関連する要因が明らかになった。妊婦健康診査を通じた児童虐待予防のための支援の現状や問題点が明らかになり、養育に関する不安要因の把握法や養育能力に関する評価法など支援法が示された。成果は医療機関や行政機関から反響があり、講演などによる啓発につながった。
臨床的観点からの成果
社会保障制度の利用が妊婦健康診査受診に与える影響が示された。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
「健やか親子21(第2次)」育てにくさに寄り添う母子保健のあり方検討ワーキンググループにおいて本研究で示された養育に関する不安要因を認めた妊婦に対する切れ目のない連携による支援体制の確保に関する情報を提供した。
その他のインパクト
妊娠期から行う児童虐待予防のための介入法構築に関する討論会を開催し、医療従事者、保健所や児童相談所の職員などによる意見交換や情報共有が行われた。日本医師会、市民公開講座、自治体の講習会、執筆などにより研究成果に関する講演や啓発活動を行った。政府広報オンラインの「妊娠期からの切れ目のない相談と支援」において妊娠期からの養育支援の重要性について情報提供が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
26件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
1. Kakogawa J, Sadatsuki M, Ogaki Y, et al.
Effect of Social Service Prenatal Care Utilization on Perinatal Outcomes among Women with Socioeconomic Problems in the Tokyo Metropolitan Area.
ISRN Obstet Gynecol.  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
2018-06-19

収支報告書

文献番号
201301031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,610,000円
(2)補助金確定額
1,610,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 169,716円
人件費・謝金 29,700円
旅費 479,970円
その他 720,614円
間接経費 210,000円
合計 1,610,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-