高度電子情報化した適正な保険診療体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201301026A
報告書区分
総括
研究課題名
高度電子情報化した適正な保険診療体制の構築に関する研究
課題番号
H25-政策-一般-009
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
合地 明(岡山大学病院 経営戦略支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 本多 正幸(長崎大学 医歯薬学総合研究科医療情報学)
  • 荒木 孝二(東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
適正な保険診療を行うための病院情報システムの構築。
現行の病院情報システムは医事会計システムの電子化から始まり、診療録電子化へと進められているがこの過程において保険診療における診療録記載の重要性(算定要件の根拠)については見落とされてきた。適正保険請求のためのシステム作りに必要な要件は何か課題を抽出、改善のための機能要件を提案していく。
研究方法
(1)平成25年度:診療報酬請求に係わる問題点(遵守事項)を審査支払機関(支払基金・健保連)ならびに厚生局の指導内容を参考に抽出していく。算定要件等の解釈等の差異が指摘されている。これらの算定要件に対する解釈を含めて、どのような電子カルテ等のシステムがなされるべきかについても、システム作成者において混乱が生じている。これら指導内容に関する診療報酬請求側の問題点を①システムに依存するもの、②システム運用に係わるものに切り分け、病院情報システムに実装可能か否かの検討をメンバーで検討していく。 
現行の病院情報システムにおいて保険診療適応に向けた機能提供の現状把握をシステムベンダーを対象にアンケート調査を行うとともに診療現場に対しても現状の診療報酬請求時に電子カルテシステムと医事会計システムとの間での連携の問題点をアンケート調査を行った。これらのアンケート調査を元に、今後の機能搭載に向けてのあり方につきベンダー関係者を含め検討を行っている。併せて、歯科診療に係る電子カルテの導入状況等に係る現状把握を行い、抽出された課題等の解決に向けた検討を行う。

(2)平成26年度:前年度,抽出をおこなった保険診療に関する遵守事項と現行病院情報システムの  整備(卓越した搭載機能に関してはベンダーの了解を得て公開)共通機能としてのあり方及び歯 科診療に係る電子カルテのさらなる導入等に向けての指針等の作成ならびに診療報酬改訂時におけるシステム対応のあり方等についても検討し、一定の方針を指針等に反映させる。
結果と考察
電子カルテシステムが適正な診療報酬請求に対応できていないという問題に関して歴史的背景において真正性、見読性、保存性のいわゆる電子カルテの三原則に重点が置かれたシステムの構築が進められ、かつ、病院情報システムの導入過程において医事会計システムと電子カルテシステムは独自の開発がなされて来たことが現在の状況を生み出していると考えられた。この間、電子点数表の整備による保険診療請求の適正化も検討されてきたが記録に対する算定要件が重視されるようになってきた現在、電子点数化単独でどこまで改善できるかは今後の課題である。
今回のアンケート結果からもシステムに依存する問題点とパッケージ運用に関する問題点が明らかになってきた。
ベンダーに対するアンケートの項目として地方厚生局から公表されている『個別指導において保険医療機関に改善を求めた主な指摘事項』の項目の中から多くが電子カルテシステムで対応可能という実態を確認した。対応状況においてベンダー間で差はあるものの大規模病院向けのシステムにおいて一応のシステム構築がなされているものが多かった。しかし、同じベンダー内においても中小向けでは実装されていないなど適正な診療報酬請求のための電子カルテ機能として不可欠なものと考えられているのか否か疑問に感じるものもあった。
一方、ベンダーの意見としてパッケージとして機能提供を行っているものの医療機関において必要性を感じないとか運用に合わないからといったユーザー側の意向で使用されない点も指摘されていた。また、別の問題点としてベンダー側としては厚生局などの指摘事項の解釈が不統一でどのようなシステム構築を提供すべきか具体的内容提示を求める意見もあった。
今回のアンケートを通じてユーザーもベンダーもともにシステムの改善に向けての必要性は認めている。しかし、現状は個別対応となっており、この不合理の解消のためにもベンダー間における情報共有を行い、改善を目指す必要性が感じられた。パッケージの運用について中小の一般病院での認識率は低いものと考えられ今後ユーザーに対する保険診療における指導教育の必要性が改めて考えられた。
歯科診療における電子カルテの開発には種々の問題を抱えていることも明らかになってきた。歯科系の複雑な診療報酬請求に対応が困難なこともあきらかになった。さらに歯科系においては医療機関の規模別の比率を考えても診療所向けの電子カルテの開発が望まれる。

結論
保険診療に適合した電子カルテシステムの構築において引き続き、システムのありかたについてベンダー及びベンダーを纏めるJAHISの協力をいただき、意見を聞きながら共有可能な機能要件をまとめ、システムに依存する部分の共有化ならびに運用に関してはユーザー教育が必要である。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201301026Z