養育支援を必要とする家庭に対する保健医療福祉の連携に関する実践的研究

文献情報

文献番号
201301024A
報告書区分
総括
研究課題名
養育支援を必要とする家庭に対する保健医療福祉の連携に関する実践的研究
課題番号
H25-政策-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
中村 安秀(国立大学法人 大阪大学 大学院人間科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 渕向 透(県立大船渡病院)
  • 佐藤 拓代(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 浅川 恭行(東邦大学 医学部客員講師)
  • 北野 尚美(和歌山県立医科大学 医学部公衆衛生学)
  • 山本 真実(東洋英和女学院大学 人間科学部)
  • 中板 育美(日本看護協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、児童虐待の発生予防の観点から、妊娠期・出産後早期から養育支援を必要とする家庭に対する支援に関して、特に妊娠期・出産後早期からの保健・医療・福祉の連携・協働の実態を明らかにすることにより、継続ケアの視点からライフステージ(妊娠・出産・育児)に沿った保健・医療・福祉の連携・協働の実践的な方法論を提示することにある。ワークショップという手法を駆使し、情報収集とともに新たな気づきを共有することが期待される。
研究方法
従来のように、分担研究班の個々の研究の積み重ねで全体が構成されるという研究ではなく、分担研究者においても連携協働し、融合する形で全体テーマの解明に取り組むことに特徴がある。
①文献的考察(北野)
すでに、妊娠期・出産後早期からの保健医療福祉の連携・協働の必要性に関する文献は数多くある。本研究では、市町村レベルでの報告書や研究会や学会発表などを中心に事例を収集し、好事例の把握に努める。
②ワークショップ(北野、佐藤、中村)
厚生労働省虐待防止対策室の協力を得て、1年目に東京で実施した(「結果」の項で詳述する)。
③産科医療機関実態調査(佐藤、浅川)
 産科医療機関と行政機関(母子保健・児童福祉)との連携・支援の実態や特徴について、調査分析する。分担研究者が日本産婦人科医会の理事であり、産科医療機関の調査協力が得られる予定である。
④研修用教材の作成(山本、佐藤、中板)
 3年目に、①―③の成果として、ライフステージ(妊娠・出産・育児)に沿った保健・医療・福祉の連携・協働の実践的な方法論をまとめた研修用教材を作成する。好事例と教訓を例示するだけでなく、活動実践の中で編み出されたTips(秘訣・コツ)も網羅する予定である。妊娠期・出産後早期から養育支援を必要とする家庭に対する支援体制を構築する際の、具体的な留意点や住民に対する啓発活動の事例などをまとめることにより、取り組みがあまり進んでいない自治体の参考資料とすることができる。また、虐待防止支援に関わる専門職に対するサポート体制も視野に入れる。分担研究者は日本看護協会の理事であり、特定妊婦への支援から始まる虐待予防の視点も加味される。
⑤東日本大震災被災地におけるアクション・リサーチ(渕向)
2年目・3年目に、岩手県気仙地域(大船渡市・陸前高田市・住田町:被災前人口約7.5万人)において、医療機関、母子保健、児童福祉の相互の連携・協働による支援体制の構築をアクション・リサーチとして実施する。気仙地域では、2011年10月より日本小児科学会の気仙地区小児保健医療支援プロジェクト・ワーキンググループとして活動してきた。
結果と考察
厚生労働省虐待防止対策室の協力を得て、2014年2月に東京でワークショップを実施した。病院、保健、福祉の関係者が混合されたチームで議論することにより、連携や協働の促進要因や阻害要因を明らかにすることができ、自治体間の共通点が明らかになると同時に、解決すべき課題に対するヒントを他の自治体から得ることができる。
岩手県(大船渡保健所、一ノ関児相)、東京都三鷹市、神奈川県横須賀市、静岡県沼津市、大阪市枚方市、大阪府泉大津市、鳥取県倉吉市、福岡県糸島市、熊本県熊本市からワークショップに参加した。ワークショップにおいて、自治体間の共通点が明らかになると同時に、解決すべき課題に対するヒントを他の自治体から得ることができ有意義な気づきとなった。共通した意見としてあげられたのは、特定妊婦や養育支援において、データの電子化による情報共有と評価可能なシステムが必要であること、また、妊娠する前の思春期において健康教育を強化していく必要性であった。
結論
ワークショップと実態調査の成果をもとに、3年目に妊娠期・出産後早期から学齢前に至るまでの時期の、ライフステージに沿った継続ケアとしての養育支援体制のあり方を検討し、保健医療福祉の連携協働による虐待予防支援に関するモデル的な組織体制づくりを提示する。このような実践活動から生まれた教材は、厚生労働省や自治体が虐待防止研修を行う際に、非常に有効であろう。また、2年目・3年目に、東日本大震災被災地(岩手県気仙地域)において、医療機関、母子保健、児童福祉の相互の連携協働による支援体制の構築をアクション・リサーチとして実施することにより、保健福祉の人材不足に悩む他の被災地にとっても有用なモデルとなることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201301024Z