「都市部における医療・介護・福祉等連携のための情報共有システムのあり方」に関する研究

文献情報

文献番号
201301022A
報告書区分
総括
研究課題名
「都市部における医療・介護・福祉等連携のための情報共有システムのあり方」に関する研究
課題番号
H25-政策-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
植村 尚史(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾形 裕也(東京大学 政策ビジョン研究センター)
  • 河手 典彦(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 可部 明克(早稲田大学 人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅療養・介護サービスには、様々な専門職が関与しており、適切なマネジメントのもとで、各専門職が同じ目標を持ってサービスを提供していくためには、情報の共有が不可欠である。専門職間でリアルタイムに情報共有ができれば、適切な治療、処置が可能となる。基幹病院に蓄積されている病歴情報、投薬情報、画像等の検査情報をかかりつけ医が共有することで、在宅においても適切な治療が可能となる。また、患者や家族が治療・サービス内容を理解しやすくなり、相談等がしやすくなるメリットもある。
急性期病院を退院して直接在宅療養に移行することが多い大都市部では、医療、介護のサービスを効率的、効果的に行うため、専門職間の連携が特に求められているが、在宅側に中核となる機関が存在しないことや、急性期病院へ通院する患者が多く、かかりつけ医が機能していないなど、情報共有システム構築が困難な事情も存在する。単に情報共有だけでなく、包括的ケア実現のためのマネジメント体制確立を目指した情報システムを構築していくことが求められる。
本研究は、特定の都市をフィールドにして、各専門職が同じ目標を持って、効率的・効果的に活動できるシステムの構築と、それを活用した包括的なマネジメントのあり方を研究し、それを政策に取り入れていく方法を検討することを目的にしている。
研究方法
病院経営サイドから、病診連携、医療介護連携とそれを進めるための情報システムの導入についてのメリット・デメリットについての検討を行った。
特徴的なシステムを運営している機関、地域を選定し、実地調査を行った。具体的には、地域の多く
の医療機関が参加している長崎県の「あじさいネット」、中核医病院が中心になってつくっている石川県の「けいじゅヘルスケアシステム」を、代表例として、現地調査を行った。
国際的な状況について、OECD事務局において担当者からヒアリング調査を行った。また、フランスのDMPについて、病診連携とか医療と介護の連携との関わり、成果について各方面の専門家からヒアリングを行った。
新宿区の5つの急性期病院について、退院して在宅療養に移行する場合に、専門職間で、どのような情報が、どのようにして伝えられているか、また、その際の問題点は何かについて、関係者に対するヒアリング調査を行った。
結果と考察
ヒアリング調査の結果、大都市部において機能分化と連携が進まない要因は、主にあらゆる患者を囲い込もうという病院側の姿勢にあることがわかった。情報ネットワークが有効に機能している地域の例を参考にしながら、機能分化と連携が病院経営にどのような効果をもたらすのかという観点から、情報ネットワークの役割を考察していくことが必要である。
既存の医療情報ネットワークでは、すでにシステム上の課題の多くをクリアしているが、法的な課題や異なる地域での適用に際しての課題は残されたままである。既存のネットワークを基本として、大都市部への普及モデルを設定するに際しては、このようなシステム上クリアする必要がある課題を抽出し、その解決方策を考察することが必要である。
医療機関間の連携のための情報ネットワークを縦の幹とすれば、医療と介護の連携のための情報ネッ
ワークは横の枝と位置づけることで、両者がつながったシステムを構築できるが、単に、ネットワークがつながるだけでは有効に機能させることは難しい。誰がどのような情報にアクセスするかを制度的に担保するとともに、情報を活用して総合的なケアマネジメントを担う主体についても今後検討していく必要がある。
結論
2年間の研究期間の1年目を終えたところであり、大都市部のモデル的な情報共有システムと包括的ケアマネジメント体制のあり方を具体的に提言するには至っていない。しかし、大規模な病院が多数存在し、そこに通院する住民が多いという大都市部の特徴から,他の地域でみられるような、病院から診療所への一方的な情報提供システムや、診療所と中核とする地域ケアの連携システムは、有効に機能しない可能性が高いことがわかった。大都市部では大規模病院と訪問看護、介護の専門職との間の情報共有や大規模病院への通院者の包括的ケアシステムも検討する必要がある。既存の情報システムのメリットを活かしながら、大都市部の特徴にあったシステムを構築するには、システム参加者の役割と情報の流れに着いての工夫が必要である。このような観点から、平成26年度はモデル的なシステムの構築とその具体的な活用について研究を行っていくこととしている。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201301022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,500,000円
(2)補助金確定額
5,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 136,732円
人件費・謝金 690,866円
旅費 1,430,100円
その他 2,542,302円
間接経費 700,000円
合計 5,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
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