都市と地方における地域包括ケア提供体制の在り方に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201301021A
報告書区分
総括
研究課題名
都市と地方における地域包括ケア提供体制の在り方に関する総合的研究
課題番号
H25-政策-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
西村 周三(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山内 直人(大阪大学大学院)
  • 園田 眞理子(明治大学理工学部)
  • 井上 由起子(日本社会事業大学専門職大学院)
  • 所 道彦(大阪市立大学大学院)
  • 藤原 朋子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 鎌田 健司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 藤井 麻由(北海道教育大学国際地域学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
藤井麻由氏の所属機関が、国立社会保障・人口問題研究所から北海道教育大学国際地域学科に変更。

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、人口学、保健学、建築学、社会学、経済学、公共政策学等の学際的な観点から、超高齢社会における地域包括ケア提供体制のあるべき姿を、地域特性や地域課題が異なる都市と地方別に明示した上で、実現に向けた具体的な政策手法の検討と政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
本研究では5つのサブテーマ(1.先行事例分析、2.人口・世帯・住宅動向分析及び地域類型化の検討、3.医療・介護需要及び提供体制分析、4.世帯の経済・雇用状況分析、5.総合データベース構築)を設定し、これらテーマ毎に、現状分析、課題抽出、課題解決策の検討を行う。本年度は、テーマ1に関し、ヒアリング(3県・13市町村・23事業者)及び視察(高齢者住宅など延べ21カ所)を、テーマ2に関し、社人研の人口データに基づく①市町村別死亡者数の将来推計方法の開発、②地域の類型化手法の開発、③後期高齢者の都道府県間人口移動分析などを、テーマ3に関し、既存データやアンケートに基づく①在宅医療提供体制/要介護認定率の地域差分析、②認知症者の出現率分析、③在宅医療受給者特性及び受給率分析を、テーマ4に関し、既存データに基づく地域経済と高齢者の就業・収入状況の関連性分析を、テーマ5に関し、人口・世帯/医療・介護/経済状況に関する都道府県総合データベース構築を実施した。
結果と考察
テーマ1に関し、様々な先進事例(自治体、事業所)を調査した結果、一般的な自治体向けには、①先進事例の取り組み自体の紹介ではなく、現在の状態に至ったプロセスやノウハウに係る情報が重要である、②市町村を継続的に支援するためには、都道府県の役割が重要であるなどがわかった。
テーマ2に関し、①各時期の年齢別人口に整合し、暦年・満年齢を時間単位とする動態数を求める方法による、市区町村別人口動態数(男女別出生数、男女年齢5歳階級別死亡数等)の将来推計方法の開発、②人口指標と社会経済指標を用いた多変量解析による、市町村の類型化ができた。また、首都圏における後期高齢者の人口移動分析から、①東京都は後期高齢者が大幅に転出超過であるのに対し、埼玉・千葉・神奈川では「85歳以上」で20‰を超える高い純移動率が確認された、②東京都から転出した後期高齢者の約70%が埼玉・千葉・神奈川に転出していたなどがわかった。
テーマ3に関し、①診療所数が多いという競争的な環境が在宅療養支援診療所(在支診)の開設につながることが示唆される一方で、在宅看取りというニーズとマッチしていない可能性があった、②訪問診療受給率をみると、「要支援」2.8%、「要介護1」4.0%に対し、「要介護4」23.8%、「要介護5」45.0%と、要介護3以降で受給率が急増していた、③近畿地区A市の認知症者の出現率(8.4%)を性別にみると、男性5.4%、女性10.7%と女性の方が高く、年齢別では、80歳から出現率が急上昇していたなどがわかった。
テーマ4に関し、①県内総生産の順位の推移をみると、人口規模に比例して総生産額の順位が決定されていた、②1人当たり県内総生産の地域格差は近年縮小傾向がみられた、③第三次産業従業者割合が高くなると高齢者の就業率が低くなる傾向がみられた一方で,雇用形態は高齢者の就業率に必ずしも影響していなかったなどがわかった。
テーマ5に関し、市町村職員による施策立案に貢献するようなデータベースの構築・提供を目的として、今年度は都道府県を主として整備した。
近年、地域包括ケアに関する研究は、社会的にもその注目度が増し、さまざまな角度から広範囲になされている。類似の研究と比べた本研究の特徴は、次の点にある。第一に、近年日本で急速に関心を呼んでいる「人口減少」「高齢化」「少子化」という現象に配慮しつつ、地域の将来像を垣間見るという視点をおいたこと、第二に、今後ますます重要性を増すと思われる「医療と介護との連携」という観点に視野をおいて分析を進めたこと、第三に、多くの地域の実例を基礎に議論ができるよう、日本全国の先行事例を幅広く収集するよう努めたこと、第四に、今後のこの種の研究の発展に寄与するよう、各種のデータベースの整備に努めたことである。本研究は、研究対象となる範囲が多方面にわたるため、データの利用可能性について、多方面の研究者間の情報交換がきわめて有効であった。
結論
地域包括ケアシステムを構築するためには、①人口・世帯動向を含む地域特性の把握、②地域包括ケアを構成する住まい、医療、介護、生活支援・介護予防の各領域の実態把握、③地域課題に対する解決策の検討と推進といった、市町村の地域マネジメント力強化に加えて、それをバックアップする都道府県の役割の強化、地域類型に応じた国の施策展開も重要となる。これを研究面から側面支援するためには、地域類型別の総合的な課題整理と対応策の提言が重要となる。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201301021Z