東アジア地域における新たな介護制度の創設過程とわが国の影響の評価等に関する研究

文献情報

文献番号
201301016A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア地域における新たな介護制度の創設過程とわが国の影響の評価等に関する研究
課題番号
H24-政策-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 周三(国立社会保障・人口問題研究所 所長)
  • 増田 雅暢(岡山県立大学 保健福祉学部)
  • 金 貞任(キム ジョンニム)(東京福祉大学 社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化は、わが国や欧米諸国だけでなく、東アジアでも進んでいる。特に韓国や台湾では急速な高齢化が見通されており、高齢者介護制度の構築が急務となっている。実際に、韓国では老人長期療養保険(介護保険)が実施され、台湾でも介護保険の実施が検討されている。これらの国や地域では、社会保障制度の創設過程でわが国を含む諸外国の経験を参考にすることが多い。そこで本研究は、東アジアの中で高齢化が急速に進む韓国、台湾の新たな介護制度の創設過程で、わが国の経験がどのように検討され、制度構築の参考にされたか否かを明らかにすることを目的に実施した。
研究方法
研究方法として、韓国と台湾の人口や社会経済の変化について、統計データを用いた分析を行った。一方、韓国と台湾の介護制度(創設過程および制度の現状と課題)については、それぞれの国や地域の政策当局の資料(政策研究報告書など)、立法当局の資料(会議録)などを収集して分析を行った。これを補足するために、政策当局者や研究者、福祉関係者へのヒアリングも行った。今年度は、台湾は介護保険の検討の動き、介護サービス提供体制整備に重点を置き、韓国は、介護保険実施5年後の到達点と課題に重点を置いた。
結果と考察
韓国や台湾にも社会経済状態等の地域差が考えられ、特に台湾ではこれが公的な介護サービス提供体制の地域差につながっていると考えられる。こうした中、台湾では「介護サービスネット計画」により、介護サービスの地域差を縮小させる形での基盤整備が進められている。認知症対策として、わが国をモデルにしたグループホームがあるが、各種体制は十分ではない。これと並行して、介護サービス法、介護保険法の検討が進められており、わが国などの経験を参考にしている。韓国は「老人長期療養保険」(介護保険)の実施から5年が経過したが、保険給付対象者がわが国より狭い、医療制度との連携や地域密着サービスが出来ていない、日本式のケアマネジメントを採用しなかった、家族療養保護士(家族ヘルパー)のあり方等、わが国と異なる政策対応がもたらした課題に直面している。一方、認知症対策、介護労働者の労働条件の改善等はわが国と共通した課題である。このように、台湾では、介護サービス提供体制の構築と社会保険方式による介護制度の法制化の検討が同時に進められている。介護保険の法制化は2016年を目標としており、特に前者は迅速かつ的確に進めることが重要である。また、20万人以上いる外籍看護工(外国人介護労働者)のあり方も重要な課題である。韓国では、介護保険の実施から5年が経過したことにより、介護制度の到達点と課題が、わが国との相違点が顕著になる形で明らかになった。そのため、韓国と台湾の介護制度の構築・実施の分析を通じて、わが国を含む東アジアの介護制度の相違点と背景(わが国の経験の検討)を明らかにすることが可能であるという知見に至った。
結論
このように、韓国と台湾の介護制度は、わが国等の諸外国の制度を参考にする一方で、わが国との相違点もある。このことから、東アジアの介護制度は多様になると考えられる。「アクティブ・エイジング」が世界的な潮流になる中で、東アジアの介護制度における、わが国の位置、わが国が示しうる知見を明らかに出来る。これをもとにした具体的な政策提言のためには、東アジア諸国・地域の社会経済の多様性への配慮が重要である。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201301016Z