諸外国における医療制度改革と日本への適用可能性に関する研究

文献情報

文献番号
201301014A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国における医療制度改革と日本への適用可能性に関する研究
課題番号
H24-政策-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松本 勝明(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 智章(北海道大学 大学院法学研究科)
  • 片桐 由喜(小樽商科大学 商学部)
  • 白瀬 由美香(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 松本 由美(熊本大学 商学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,100,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表者 松本勝明 北海道大学大学院公共政策学連携研究部(平成24年4月1日~25年8月31日)→国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部(平成25年9月1日以降) 研究分担者 松本由美 (社)全日本病院協会全日病総研(平成24年4月1日~25年3月31日)→熊本大学教育学部(平成25年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化の進展、医療技術の進歩などに伴い医療費が増大する一方で、経済が低迷し、財政赤字が拡大するなかで、質の高い医療を効率的に提供するとともに、増加する費用を安定的かつ公平に賄える制度が求められている。このことは、先進諸国に共通する重要課題となっている。
このような状況を踏まえ、本研究は、近年、医療制度に関して様々な改革が実施され、多くの議論が積み重ねられているドイツ・フランス・イギリスを対象として、医療制度(医療保障制度及び医療供給体制)が直面する課題及びそれに対応した制度改革について把握・分析し、改革の効果と問題点を明らかにするとともに、日本への適用可能性を探ることを目的とする。
研究方法
平成25年度においては、まず、各国で行われた改革の日本への適用可能性を検討するうえで追加的に必要な情報を洗い出し、不足する情報を補うための文献調査及び現地の関係団体、専門研究機関などの訪問調査を実施した。
そのうえで、平成24年度の研究成果及び上記補足調査の結果を基に、研究代表者及び研究分担者の間での討議などを通じて検討を行い、医療制度改革の重要な論点ごとに、この三か国で実施された改革のなかから日本においても有効と考えられるものを抽出し、それらを適用した場合に想定される効果と問題点を検討し、取りまとめた。
結果と考察
これら三か国の改革のなかには、次のように、医療制度改革の重要な論点に関して、日本での改革を考えるにあたって重要な示唆を与える改革が含まれている。「公私関係」に関しては、民間医療保険の代替的・補完的な活用があげられる。「診療報酬」に関しては、出来高払いに伴う問題への対応、DRGなどによる在院日数の短縮化、ジェネリックの誘導政策などがあげられる。「競争、保険者の役割」に関しては、保険者が自らの判断で取り組むことができる余地の拡大や被保険者による選択の拡大があげられる。「医療保険財政の安定と負担の公平」に関しては、費用負担者でありサービス受給者である国民の前での議論の場を設定することがあげられる。「新たな薬剤及び診断・治療方法の導入」に関しては、有用性評価の導入があげられる。「平等な医療アクセスの確保」に関しては、入院及び外来診療の供給に関する計画の策定、医師の技能の評価、免許の更新制度、チーム医療の経済的評価があげられる。「医療供給者間の連携」に関しては、連携強化のための制度的な枠組みの位置づけとインセンティブの強化があげられる。「質の確保」に関しては、医療の質に関する指標の策定と医療機関の評価・認証制度があげられる。
ただし、これらの改革を実際に適用するにあたっては、日本の実情を踏まえそれぞれに検討すべき課題がある。
結論
この三か国の改革には、日本の改革にとって重要な示唆を与えるものが含まれている。これらの全てが直接的に日本に適用できるというわけではないが、その考え方や手段の適用について日本の実情を踏まえた検討を行うことにより、日本の政策への反映が可能であることが明らかとなった。
本研究の成果は、日本における医療制度改革に関する政策の検討にとって重要な基礎資料となるものであり、政策の選択肢を拡大するとともに、その効果や実施可能性を高めることに貢献するものである。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201301014B
報告書区分
総合
研究課題名
諸外国における医療制度改革と日本への適用可能性に関する研究
課題番号
H24-政策-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松本 勝明(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 智章(北海道大学 大学院法学研究科)
  • 片桐 由喜(小樽商科大学 商学部)
  • 白瀬 由美香(国立社会保障・人口問題研究部 社会保障応用分析研究部 )
  • 松本 由美(熊本大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
研究代表者 松本勝明 北海道大学大学院公共政策学連携研究部(平成24年4月1日~25年8月31日)→国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部(平成25年9月1日以降) 研究分担者 松本由美 (社)全日本病院協会全日病総研(平成24年4月1日~25年3月31日)→熊本大学教育学部(平成25年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化の進展、医療技術の進歩などに伴い医療費が増大する一方で、経済が低迷し、財政赤字が拡大するなかで、質の高い医療を効率的に提供するとともに、増加する費用を安定的かつ公平に賄える制度が求められている。このことは、先進諸国に共通する重要課題となっている。
このような状況を踏まえ、本研究は、近年、医療制度に関して様々な改革が実施され、多くの議論が積み重ねられているドイツ・フランス・イギリスを対象として、医療制度(医療保障制度及び医療供給体制)が直面する課題及びそれに対応した制度改革について把握・分析し、改革の効果と問題点を明らかにするとともに、日本への適用可能性を探ることを目的とする。
研究方法
まず、日本における医療制度の現状と問題点を把握し、検討を行うことにより、医療制度改革に関する重要な論点となるべき事項を整理した。
つぎに、文献研究を基に前記論点に沿った検討を行い、各国の課題及び実施された改革の内容などを把握したうえで、現地の担当行政機関、関係団体、専門研究機関などを訪問し、ヒアリング調査及び資料収集を行った。併せて、研究協力者から、各国の医療制度改革に関する先行研究などに関する情報を得た。
これらに基づき、前記の論点ごとに、各国が直面する課題、実施された制度改革の基本的考え方、具体的内容、効果及び問題点並びに三か国の共通点及び相違点を明らかにするとともに、他国と比較した各国改革の特徴及びそれをもたらした要因、日本にとって重要と考えられる点を考察した。
さらに、これらの調査研究の成果に基づき、三か国の制度改革から日本においても有効と考えられるものを抽出し、それらを適用する場合に想定される効果と問題点を検討し、取りまとめた。
結果と考察
この三か国においては、全ての国民に質の高い医療を保障することが医療制度改革の共通した目的となっている。これと併せて、ドイツ・フランスにおいては、医療保険財政の安定を確保することが主要な目的となっている。一方、これらの目的を達成するための中心的な手段は国により大きく異なっている。
ドイツの改革の特徴は、当事者間の競争の促進及び事業主負担の軽減に重点が置かれていることである。その背景には、費用抑制のための公的介入が持続的な効果を挙げなかった経験や、国際競争が激化するなかで賃金コストの増加が国内雇用の減少をもたらすことへの危惧がある。フランスの改革の特徴は、補足的医療組織による普遍的な医療給付の実現と包括的な医療供給のコントロールにある。その背景には、分立した保険制度が不平等を生み出す恐れがあること及び医療アクセスの確保についての政策的重要性が高いことがある。イギリスの改革の特徴は、多くの予算を投入することにより医療サービスの質と量を確保しようとする点にある。この背景には、長期にわたる予算抑制により、患者に対する十分な医療が確保できなかったことがある。
これら三か国の改革のなかには、医療制度改革の重要な論点である「公私関係」、「診療報酬」、「競争、保険者の役割」、「医療保険財政の安定と負担の公平」、「新たな薬剤及び診断・治療方法の導入」、「平等な医療アクセスの確保」、「医療供給者間の連携」及び「質の確保」に関して、日本の改革を考えるにあたって重要な示唆を与えるものが含まれている。ただし、実際に適用するにあたっては、日本の実情を踏まえてそれぞれに検討すべき課題がある。
結論
これら三か国が実施している具体的な政策を比較すると、共通する方向性が存在するとともに、各国の制度の現状やこれまでの経緯などを反映した重要な相違点がみられる。
三か国で行われている改革は、その全てが直接的に日本に適用できるというわけではないが、その考え方や手段の活用について日本の実情を踏まえた検討を行うことにより日本の政策への反映が可能であることが明らかとなった。
本研究の成果は、日本の医療制度改革に関する政策の検討にとって重要な基礎資料となるものであり、政策の選択肢を拡大するとともに、その効果や実施可能性を高めることに貢献する。

公開日・更新日

公開日
2014-08-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201301014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究を通じて、ドイツ、フランス、イギリスで実施された医療制度改革の基本的考え方、具体的内容、効果及び問題点、他国と比較した各国改革の特徴及びそれをもたらした要因、日本にとって重要と考えられる点、三か国間の重要な共通点と相違点などの情報が得られた。
また、各国で実施された改革の中から日本においても有効と考えられる改革を抽出し、それらを適用する場合に想定される効果と問題点を明らかにした。
臨床的観点からの成果
本研究を通じて、日本における医療制度改革に関する政策の検討にとって重要な基礎資料となる情報及び示唆が得られた。これらは、政策の選択肢を拡大するとともに、その効果や実施可能性を高めることに貢献するものである。
また、この成果は、医療保険の保険者団体、医療供給者の団体、医療従事者の職能団体のそれぞれが医療の質と効率性の向上に自らが果たすべき役割や医療制度の在り方を検討するにあたっても重要な基礎資料となるものである。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成25年11月に開催された北海道大学大学院法学研究科社会保障法研究会において、本研究の中間的な成果についての報告を行い、研究者及び専門家との意見交換を行った。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
松本勝明
「第5章ドイツ-医療保険財政制度の改革-」
『社会保障の国際比較研究』 , 79-98  (2014)
原著論文2
松本勝明
「メルケル政権下の医療制度改革-医療制度における競争-」
『海外社会保障研究』 ,  (186) , 16-27  (2014)
原著論文3
松本勝明
「ドイツ医療保険における予防接種の位置づけ」
『社会保険旬報』 ,  (2551) , 22-29  (2013)
原著論文4
松本勝明
「ドイツ医療保険における薬剤支給―価格規制と競争―」
『後発医薬品による医療費適正化に関する調査報告書』 , 1-23  (2013)
原著論文5
松本勝明
「医療保険の公私関係―ドイツにおける変化と今後の方向―」
『フィナンシャル・レビュー』 ,  (111) , 90-110  (2012)
原著論文6
加藤智章
「フランスにおける医療費適正化の試み」
『健保連海外医療保障』 ,  (99) , 8-15  (2013)
原著論文7
片桐由喜
「医療サービスの情報提供と評価-日本とイギリスの比較を中心に-」
『週刊社会保障』 ,  (2748) , 50-55  (2013)
原著論文8
松本由美
「フランスにおける医療の質の確保に関する政策」
『熊本大学教育学部 紀要』 ,  (62) , 275-281  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201301014Z