文献情報
文献番号
201244003A
報告書区分
総括
研究課題名
京都大学臨床研究ハイウェイを活用した難治疾患・がん等の新規治療法の開発
課題番号
H24-実用化(国際)-指定-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三嶋 理晃(国立大学法人京都大学 医学部付属病院)
研究分担者(所属機関)
- 萩原 正敏(国立大学法人京都大学医学研究科 形態形成機構学)
- 喜井 勲(国立大学法人京都大学医学研究科 形態形成機構学)
- 高橋 良輔(国立大学法人京都大学医学研究科 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(国際水準臨床研究分野)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
76,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的はエクソンスキッピングを誘導するClk阻害剤を、Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬として製造販売承認の取得を目指し、ヒトにおけるPOCの取得である。また、ダウン症患者に好発するアルツハイマー病などの精神疾患に対する治療薬の創出である。
研究方法
【筋ジストロフィー】
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子の異常により、骨格筋でジストロフィンが欠損することが原因となり、発症する極めて重篤な遺伝病である。また、出生男児3,500人に1人の割合で発症する希少疾病でもある。(日本における患者数は約4,000人)現在、DMDに対する有効な治療法はなく、エクソンスキッピング誘導治療の開発等が試みられている。本治療の候補化合物として、様々なアンチセンス・オリゴヌクレオチドが検討され、臨床試験を実施している化合物もある。一方、我々は、エクソンスキッピングを誘導する候補化合物として、低分子化合物(Clk阻害剤)を世界で初めて発見した。本化合物の発見は、エクソンスキッピング誘導療法を低分子化合物により可能とすることによって、遺伝性難治疾患に対する全く新しい、薬物治療法の確立に道を拓いた。本研究では、開発候補化合物の製剤規格化、非臨床GLP試験、GMP合成・製剤化を行った後、医師主導治験でのPOC取得を進める。
【ダウン症患者におけるアルツハイマー病】
ダウン症候群は、母体の出産年齢が35歳以上で約400人に1人と高い割合で発症する染色体異常疾患である。候補化合物の標的因子は、DYRK1Aであり、ダウン症候群の原因である第21番染色体トリソミーのダウン症候群クリティカル領域(DSCR)に位置し、ダウン症患者の脳内で発現が亢進している。また、アルツハイマー病発症の原因として有望視されているタウ蛋白質の異常リン酸化を、DYRK1Aが誘導することが示されている。以上より、DYRK1Aはダウン症候群の精神・神経疾患発症の原因である可能性が高く、その活性を阻害することで、治療や予防が可能になると期待できる。本事業では、1から2年目に神経特異的DYRK1A過剰発現マウスの樹立、ダウン症患者のiPS細胞を使用した評価系構築、バイオマーカーを用いた薬効評価を実施。2から3年目にはiPS細胞を用いた薬効評価及びin vivo行動薬理評価、GLP試験・製剤化検討を実施。4年目にはGMP合成をおこない、5年目から医師主導治験に取り組む。5年目後半より、第Ⅱ相試験を開始し、その段階で、製薬企業への導出を進める。
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子の異常により、骨格筋でジストロフィンが欠損することが原因となり、発症する極めて重篤な遺伝病である。また、出生男児3,500人に1人の割合で発症する希少疾病でもある。(日本における患者数は約4,000人)現在、DMDに対する有効な治療法はなく、エクソンスキッピング誘導治療の開発等が試みられている。本治療の候補化合物として、様々なアンチセンス・オリゴヌクレオチドが検討され、臨床試験を実施している化合物もある。一方、我々は、エクソンスキッピングを誘導する候補化合物として、低分子化合物(Clk阻害剤)を世界で初めて発見した。本化合物の発見は、エクソンスキッピング誘導療法を低分子化合物により可能とすることによって、遺伝性難治疾患に対する全く新しい、薬物治療法の確立に道を拓いた。本研究では、開発候補化合物の製剤規格化、非臨床GLP試験、GMP合成・製剤化を行った後、医師主導治験でのPOC取得を進める。
【ダウン症患者におけるアルツハイマー病】
ダウン症候群は、母体の出産年齢が35歳以上で約400人に1人と高い割合で発症する染色体異常疾患である。候補化合物の標的因子は、DYRK1Aであり、ダウン症候群の原因である第21番染色体トリソミーのダウン症候群クリティカル領域(DSCR)に位置し、ダウン症患者の脳内で発現が亢進している。また、アルツハイマー病発症の原因として有望視されているタウ蛋白質の異常リン酸化を、DYRK1Aが誘導することが示されている。以上より、DYRK1Aはダウン症候群の精神・神経疾患発症の原因である可能性が高く、その活性を阻害することで、治療や予防が可能になると期待できる。本事業では、1から2年目に神経特異的DYRK1A過剰発現マウスの樹立、ダウン症患者のiPS細胞を使用した評価系構築、バイオマーカーを用いた薬効評価を実施。2から3年目にはiPS細胞を用いた薬効評価及びin vivo行動薬理評価、GLP試験・製剤化検討を実施。4年目にはGMP合成をおこない、5年目から医師主導治験に取り組む。5年目後半より、第Ⅱ相試験を開始し、その段階で、製薬企業への導出を進める。
結果と考察
【筋ジストロフィー】
GLP試験に供する低分子化合物(Clk阻害剤)TG003のキログラムスケールの大量合成を目的とした製法検討を進めた。TG003の合成には、アルキル化の条件やカラムクロマト精製の回避など幾つかの項目で検討すべき課題が明らかとなったが、年度内にその課題は解決した。加えて、製剤化検討に必要な情報取得を目的とし、現在の過酷試験の検討を開始した。
【ダウン症患者におけるアルツハイマー病】
バイオマーカーを用いた開発化合物のin vivo薬効評価系の構築に成功し、候補化合物のin vivoにおける薬効が明らかとなった。
マウス胎児脳から単離した神経幹細胞を浮遊系にて培養し、候補化合物の神経細胞に対する安全性につき評価を行ったところ、候補化合物は神経細胞に対する安全性が極めて高いことが明らかとなった。
ダウン症の急性巨核芽球性白血病(AMKL)細胞を入手し、候補化合物の白血病細胞増殖抑制効果につき検討を試みたところ、候補化合物はダウン症の白血病治療にも効果を有することが明らかとなった。
平成24年度の研究結果を踏まえ、本研究は、「筋ジストロフィー」と「ダウン症患者におけるアルツハイマー病」ともに順調に推進している。
GLP試験に供する低分子化合物(Clk阻害剤)TG003のキログラムスケールの大量合成を目的とした製法検討を進めた。TG003の合成には、アルキル化の条件やカラムクロマト精製の回避など幾つかの項目で検討すべき課題が明らかとなったが、年度内にその課題は解決した。加えて、製剤化検討に必要な情報取得を目的とし、現在の過酷試験の検討を開始した。
【ダウン症患者におけるアルツハイマー病】
バイオマーカーを用いた開発化合物のin vivo薬効評価系の構築に成功し、候補化合物のin vivoにおける薬効が明らかとなった。
マウス胎児脳から単離した神経幹細胞を浮遊系にて培養し、候補化合物の神経細胞に対する安全性につき評価を行ったところ、候補化合物は神経細胞に対する安全性が極めて高いことが明らかとなった。
ダウン症の急性巨核芽球性白血病(AMKL)細胞を入手し、候補化合物の白血病細胞増殖抑制効果につき検討を試みたところ、候補化合物はダウン症の白血病治療にも効果を有することが明らかとなった。
平成24年度の研究結果を踏まえ、本研究は、「筋ジストロフィー」と「ダウン症患者におけるアルツハイマー病」ともに順調に推進している。
結論
「筋ジストロフィー」と「ダウン症患者におけるアルツハイマー病」ともに順調に推進し、特に候補化合物のin vivoにおける薬効が明らかになった点は特筆すべきであると考えられ、今後は、動物モデルを用いたPOCの取得を目指した研究を加速すべきである。また、想定外の成果として、白血病および疼痛に対しての治療薬候補化合物が得られたことの意味は大きい。これら難治性疾患に対する治療薬は、社会の強く望むものであり、これら候補化合物についての迅速な研究と臨床展開を進めることには大きな意義があると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2014-01-06
更新日
-