文献情報
文献番号
201243004A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の根本治療・予防を目指すβアミロイド抑制薬のfirst in man,proof of concept試験
課題番号
H23-実用化(臨床)-指定-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩坪 威(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 荒川義弘(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院 )
- 大友 邦(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院 )
- 百瀬敏光(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院 )
- 齊藤延人(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院 )
- 窪田直人(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院 )
- 辻 省次(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院 )
- 後藤 順(東京大学 大学院医学系研究科医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(早期・探索的臨床試験研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
115,390,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、老年者認知症の主因となる、ADの発症メカニズムに即した疾患修飾療法(根本的治療法)を、本邦において医師主導治験を実行することにより確立することを目的とする。Aβ からなる脳アミロイド蓄積はAD病理の最初期に特異的に出現し、家族性AD病因遺伝子変異がAβ 蓄積を促進することから、孤発例を含めたADの病因因子と考えられている。しかし認知機能評価をエンドポイントとする従来のAβ 降下療法の治験には未だ成功例がない。その理由は、(1)神経細胞の変性脱落を防止する疾患修飾療法の効果判定には認知機能のみならず鋭敏な画像診断やバイオマーカーが必須 (2)従来治験の対象となってきた軽症~中等症ADでは既に神経変性が進行しており、超早期に病因となるAβ の降下療法の効果が乏しい、等が考えられる。本研究の特徴は次の点に集約される。(1)主対象薬であるTAK-070は、現在抗Aβ 療法の標的分子として最有望視されているBACE1の阻害薬であり、前臨床薬理・安全性試験が全て完了した薬剤を東京大学が完全に権利を取得、医師主導・First in Human (FiH)試験に使用可能という希有な条件を満たしている。
研究方法
TAK-070のFirst in man第I相試験を実行する。医薬品医療機器総合機構と第I相試験開始前の薬事戦略相談を施行する。単回投与試験(12名x4投与量)につづき健常者12名x4投与量 (10, 25, 50,100 mg/日)での16日間連投試験を東大病院Phase 1ユニットにおいて実行し、体内動態、安全性を検証する。得られたデータは東大病院早期探索開発推進室において保管、解析を行い、システム監査も受ける。
結果と考察
アルツハイマー病の病因タンパク質であるアミロイドβ(Aβ)の産生酵素BACE1の阻害剤であるTAK-070のFirst in Human試験を健常高齢者において開始し、次年度以降のproof of concept試験を円滑に開始するための準備的研究が順調に行われた。武田薬品工業からTAK-070に関する一切の権利の移譲を受け、治験薬原末を入手、治験薬の製造を委託し納品された。医薬品医療機器総合機構と第I相試験開始前の薬事戦略相談を施行し、第I相試験治験実施計画書の合意とTAK-070主要代謝物のサル長
期安全性試験実施の推奨を受けた。その推奨を受け検討し、実際に実施する為の予備毒性試験を計画・遂行した。その結果、長期毒性試験のプロトコール案を確定することが可能となり、次年度にGLP準拠試験として実施できる見込みとなった。抗アルツハイマー薬治験に必須であるアミロイドPETを施行するために必要なセットアップを東大放射線部核医学部門に準備し、 GMP基準でのアミロイド PETプローブ薬の製造評価体制を確立し、企業からのアミロイドPETプローブ薬を用いた受託試験の遂行により確認できた。TAK-070の治験薬概要書を作成、第I相試験治験実施計画書の策定ならびにPOC試験の評価方法について検討を行った。第I相試験の治験計画届書を厚生労働省に提出し、受理された。H25年3月より健康男性高齢者(60~85歳)12例を対象に、二重盲検下にTAK-070の10 mgの単回投与を開始した。今後、順次25、50、100 mgと増量させ、単回投与試験終了後、同各用量の16日間反復投与を実施する計画である。
期安全性試験実施の推奨を受けた。その推奨を受け検討し、実際に実施する為の予備毒性試験を計画・遂行した。その結果、長期毒性試験のプロトコール案を確定することが可能となり、次年度にGLP準拠試験として実施できる見込みとなった。抗アルツハイマー薬治験に必須であるアミロイドPETを施行するために必要なセットアップを東大放射線部核医学部門に準備し、 GMP基準でのアミロイド PETプローブ薬の製造評価体制を確立し、企業からのアミロイドPETプローブ薬を用いた受託試験の遂行により確認できた。TAK-070の治験薬概要書を作成、第I相試験治験実施計画書の策定ならびにPOC試験の評価方法について検討を行った。第I相試験の治験計画届書を厚生労働省に提出し、受理された。H25年3月より健康男性高齢者(60~85歳)12例を対象に、二重盲検下にTAK-070の10 mgの単回投与を開始した。今後、順次25、50、100 mgと増量させ、単回投与試験終了後、同各用量の16日間反復投与を実施する計画である。
結論
H24年度の研究活動によりTAK-070の治験薬の製造を委託し、その臨床試験への適用に関する非臨床ならびに先行臨床研究の結果を十分に解析・把握できた。 特に、PMDAとの治験開始前の医薬品戦略相談を通し、治験に必要な事項の把握、および非臨床試験、特に毒性試験・薬物動態試験の結果を基にしたヒトでの治験実施可能性の検討機会を得た。これらの準備により、画期的AD治療薬TAK-070の医師主導、first in human治験が実行可能となった。
公開日・更新日
公開日
2013-09-02
更新日
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