文献情報
文献番号
201243002A
報告書区分
総括
研究課題名
脳/心血管領域におけるアンメットニーズに対応する創薬研究
課題番号
H23-実用化(臨床)-指定-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 小室 一成(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学講座)
- 松村 泰志(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学講座、医療情報学講座)
- 名井 陽(大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部)
- 玉井 克人(大阪大学大学院 医学系研究科 再生誘導医学寄附講座)
- 中神 啓徳(大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科)
- 宮川 繁(大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科学講座)
- 南野 哲男(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学講座)
- 平田 雅之(大阪大学大学院 医学系研究科 脳神経外科学講座)
- 前田 和久(大阪大学大学院 医学系研究科 生体機能補完医学寄附講座)
- 大薗 惠一(大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学講座)
- 高倉 伸幸(大阪大学 微生物研究所 環境応答研究部門)
- 山下 俊英(大阪大学大学院 医学系研究科 分子神経科学講座)
- 齋藤 洋一(大阪大学産学連携本部 脳神経制御外科学講座)
- 梅垣 昌士(大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
- 赤澤 宏(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学講座)
- 齋藤 充弘(大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部)
- 平 将生(大阪大学医学部附属病院 卒後教育開発センター)
- 中谷 大作(大阪大学大学院 医学系研究科 循環器内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(早期・探索的臨床試験研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
107,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大阪大学の早期・探索的臨床試験拠点整備事業では、世界的にも急務とされる「脳・心血管領域におけるアンメットニーズ」に対応するため、総合大学として学内の薬学系、工学系研究科などはもとより、(独)医薬基盤研究所や北里大学など他研究機関、製薬企業各社との連携により、『シーズ探索から臨床応用への共同開発や橋渡し研究を行う創薬基盤形成』を目的としている。本研究事業は先の基盤を基に以下6つの重点シーズについて、早期の臨床試験実施を目指す。
1.骨髄間葉系幹細胞血中動員因子を用いた末梢循環不全に伴う難治性皮膚潰瘍治療薬開発 2.血管新生作用を有する新規ペプチドの虚血性潰瘍への応用 3.左室補助人工心臓(LVAS)を装着した拡張型心筋症に対する液性免疫異の解明とアフェレーシス治療の確立 4.ドラッグデリバリーシステムを用いた急性心筋梗塞治療薬の開発 5.オキシム誘導体徐放性マイクロスフェアー(ONO-1301MS)製剤の重症心不全への適応 6.慢性心不全治療薬としてのHGFプラスミドの開発
1.骨髄間葉系幹細胞血中動員因子を用いた末梢循環不全に伴う難治性皮膚潰瘍治療薬開発 2.血管新生作用を有する新規ペプチドの虚血性潰瘍への応用 3.左室補助人工心臓(LVAS)を装着した拡張型心筋症に対する液性免疫異の解明とアフェレーシス治療の確立 4.ドラッグデリバリーシステムを用いた急性心筋梗塞治療薬の開発 5.オキシム誘導体徐放性マイクロスフェアー(ONO-1301MS)製剤の重症心不全への適応 6.慢性心不全治療薬としてのHGFプラスミドの開発
研究方法
シーズ1.損傷組織が放出するHMGB1の骨髄間葉系幹細胞遊走活性ドメインペプチドを用いた末梢循環不全性皮膚潰瘍治療薬開発を進めた。シーズ2.これまで開発を進めてきた血管新生作用と抗菌活性を併せ持つ新規ペプチドを血清で処理させたのちの分解産物をMALDI-TOF/MSを用いて測定した結果、この分解産物の中の20個のアミノ酸の一部のアミノ酸をD体で置換した新規ペプチド(SRペプチド)を作成した。シーズ3.抗心筋抗体陽性のDCM症例において、アフェレーシス療法により心筋抗体を透析除去することで、心機能が改善されることが報告されている。そこで、LVADを装着した患者を対象にアフェレーシス治療による心機能の改善を検討する臨床研究を行う。シーズ4. 我々は、ナノサイズリポソームが障害心筋へ特異的に集積し、リポソームに封入された心保護薬の薬効増強と副作用軽減することを世界に先駆けて見出した。本技術を用い、リポソーム製剤を新規心筋梗塞治療薬としてアカデミア創薬することを目指し、平成24年度末までに、薬効薬理試験、薬物動態試験、製剤最適化を終了し、阪大病院薬剤部内でGMPリポソーム製造装置を稼働した。シーズ5.現在重症心不全患者には、埋め込み型補助人工心臓(LVAD)が実施されているが、社会復帰には尚、問題点が多い。また、長期培養を有する自己細胞移植療法は、汎用性および緊急使用の面で問題点も多い。これらに代わり、治療効果が高く、細胞培養を不要(セルフリー)とする、低分子合成化合物の製剤化による心臓移植・LVAD装着の回避、およびLVAD離脱を目指した心臓の再生医療への期待は大きい。シーズ6.大阪大学で発見されたHGFヒト肝細胞増殖因子)プラスミドの臨床での安全性の確認とPOCの取得を目標に、拡張型心筋症、拡張相肥大型心筋症、および虚血性心筋症を基礎疾患とする慢性心不全を対象として、開胸下でHGFプラスミドを心筋へ直接注入投与する医師主導治験を計画している。
結果と考察
シーズ1.HMGB1の骨髄間葉系幹細胞血中動員活性ドメインペプチドのアミノ酸配列を改変し、より血中で安定的に作用して間葉系幹細胞を血中動員するペプチドを得るための最適化作業を進めた。シーズ2.得られた新規治療用ペプチドの薬理薬効試験において創修復作用の促進を認めた。現在、治験に向けた非臨床試験を遂行中である。シーズ3.選択式血漿成分吸着器としてAMT-0902-1(イムソーバTR)を購入し、LVAD装着者のうちDCM患者に対しFIHを実施し、心抑制性心筋抗体との関連も検討した。シーズ4.GMPリポソーム製造装置で製造するリポソーム製剤のロット間の均一性試験を行った。また、薬効薬理試験の用量を基に、リポソーム製剤を用いた安全性薬理試験・毒性試験をGLPで実施した。シーズ5.低分子合成化合物であるオキシム誘導体の徐放性製剤(ONO-1301MS)を、心臓に直接投与することにより、各種内因性修復因子(HGF、VEGF、IGF-1、SDF-1等)が産生促進され、骨髄細胞から梗塞部へ修復細胞が誘導されることにより、心機能の改善等に有効性があることを、各種重症心不全モデルにおいて確認した。シーズ6.遺伝子治療用医薬品の関連指針への適合について、確認申請用書類の内、臨床部分の概要案は作成を完了、続いて安全性非臨床部分の完成を目指している。これと並行してPMDA薬事戦略相談の書類準備も行なった。
結論
本研究事業のシーズは、いずれもアカデミア発のシーズをアカデミア主導で臨床試験まで目指すものであり、基礎的研究成果の社会還元に向けた一層のかそくならびに国際協商力の強化に資するものである。
公開日・更新日
公開日
2013-07-11
更新日
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