集団生活の場における肝炎ウイルス感染予防ガイドラインの作成のための研究

文献情報

文献番号
201240008A
報告書区分
総括
研究課題名
集団生活の場における肝炎ウイルス感染予防ガイドラインの作成のための研究
課題番号
H23-実用化(肝炎)-指定-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
四柳 宏(東京大学大学院医学系研究科・医学部 生体防御感染症学)
研究分担者(所属機関)
  • 森屋 恭爾(東京大学大学院医学系研究科・医学部 感染制御学)
  • 正木 尚彦(国立国際医療センター国府台病院肝炎・免疫研究センター)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター・臨床研究センター)
  • 森兼 啓太(山形大学検査部)
  • 小松 陽樹(東邦大学佐倉医療センター 小児科)
  • 惠谷 ゆり(大阪府立母子保健総合医療センター 消化器・内分泌科)
  • 稲松 孝思(東京都健康長寿医療センター 臨床検査科)
  • 米澤 敦子(NPO法人東京肝臓友の会)
  • 山田 光子(NPO法人東京肝臓友の会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 B型肝炎、C型肝炎は輸血をはじめとする血液を媒介として伝播する感染症である。感染の防止のためには体液に触れる際に十分な注意が必要である。保育所や老人福祉施設でも医療の現場同様標準予防策の徹底が望まれるが、これらの施設に勤務する人を対象とした指針、ガイドラインがないため、有効な対策がとられていないのが実情である。本研究はこうした施設におけるガイドラインの策定を目標にするものである。
研究方法
 (1)  一般生活者における感染症(肝炎ウイルス感染を含む)に対する意識調査(個別研究1)
 ①主な感染症の認知度、②主な感染症の感染経路に関する知識、③ウイルス肝炎及び肝炎患者に対するイメージ、④ウイルス肝炎の感染経路及び病気に関する知識、を調査することとした。
(2) 医療従事者における感染症(肝炎ウイルス感染を含む)に対する意識調査(個別研究2)
 同様のアンケートを医療従事者に対して行うこととした。加えて勤務施設の状況についても調査を行うこととした。
  (3)  保育の現場での感染伝播に関する問題の調査
 全国約1400施設の保育施設施設長、園医、職員に対して保育現場での問題をアンケート調査を行い、把握することとした。
  (4)  介護の現場での感染伝播に関する問題の調査 
  老人は肝炎ウイルスのみならず、様々な病原微生物を保菌している可能性があり、その伝播には十分注意しなければいけない。老人保健施設や長期療養型施設に協力を依頼して、アンケートを行うこととした。
結果と考察
 (1) 一般生活者における感染症(肝炎ウイルス感染を含む)に対する意識調査(個別研究1)
 結果は以下のようにまとめられた。
① 主な感染症の認知度:B型肝炎、C型肝炎は認知している人が多かったが、多くは名前を認知している程度であった。
② B型肝炎、C型肝炎が血液を介して感染する病気だという認識はあるが、具体的にどのような場合に感染するかは十分な知識を有していない。
③ ウイルス肝炎に対しては“怖い病気”というイメージを抱く人が多かった。
④ 患者に対するイメージとしては、“治療や通院、生命保険加入、体調保持が大変で恐ろしい病気にかかっている”イメージを抱く人が多く認められた。
(2) 医療従事者における感染症(肝炎ウイルス感染を含む)に対する意識調査
一般生活者と比較して以下のような特徴があった。
① 主な感染症の認知度:B型肝炎、C型肝炎という病気は認知している人が多かった。
② 感染経路に関しては約9割が血液感染であることを認知していた。
③ ウイルス肝炎に対しては一般生活者同様“怖い病気”というイメージを抱く人が多い。
④ B型肝炎がワクチンで予防可能と考えている人は全体の40%程度であった。
⑤ 患者に対するイメージとしては、“治療や通院、生命保険加入、体調保持が大変で恐ろしい病気にかかっている”イメージを抱く人が一般生活者同様多く認められた。
⑥ 差別的な感じ方(患者の恋人や配偶者になるのは怖い、性交渉で感染したのだろうと思う)を持つ人の割合が一般生活者に比べて高い傾向にあった。
⑦ 情報開示に関する差別的な意識(他の人に知らせて感染が拡がらないようにすべきである、他の人にそっと知らせた方がよい)を持つ人の割合も一般生活者に比べて高い傾向にあった。
⑧ 勤務施設に肝炎を含めた感染対策マニュアルがあるかという質問に対しては、病院勤務者の約7割、開業施設勤務者の約5割、老人保健施設勤務者の約2割5分がマニュアルがあると回答した。標準予防策の認知状況もほぼ同じ比率であった。
⑨ HBワクチンは勤務医の80%以上が接種していたが、開業医、歯科医、歯科技工士の接種率は58%、72%、37%であった。看護師の接種率は60%程度、老人施設勤務者の接種率は10%未満であった。
(3)  保育の現場での感染伝播に関する問題の調査
 これに関しては時間的制約のためアンケート項目を策定するにとどまった。2013年6月から7月にかけてアンケートを施行する予定である。
(4) 介護の現場での感染伝播に関する問題の調査
 これに関しても時間的制約のためアンケート項目を策定するにとどまった。2013年5月から6月にかけてアンケートを施行する予定である。
結論
一般生活者、医療従事者のウイルス肝炎を含む感染症に関する知識、認識は不十分であり、肝炎患者に対する偏見・差別につながり得るものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201240008Z