慢性ウイルス性肝疾患の非侵襲的線維化評価法の開発と臨床的有用性の確立

文献情報

文献番号
201240006A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性ウイルス性肝疾患の非侵襲的線維化評価法の開発と臨床的有用性の確立
課題番号
H23-実用化(肝炎)-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 正俊(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 椎名 毅(京都大学 医学部)
  • 矢田 典久(近畿大学 医学部)
  • 藤本 研治(国立南和歌山医療センター 臨床研究部)
  • 大崎 往夫(大阪赤十字病院 消化器科)
  • 住野 泰清(東邦大学医療センター大森病院 消化器内科)
  • 野尻 俊輔(名古屋市立大学大学院 消化器・代謝内科・肝臓病学)
  • 玉井 秀幸(和歌山県立医科大学 第二内科・消化器内科)
  • 孝田 雅彦(鳥取大学 医学部)
  • 佐藤 秀一(島根大学 医学部)
  • 三好 久昭(香川大学 医学部)
  • 日浅 陽一(愛媛大学大学院)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学 医学部)
  • 鹿毛 政義(久留米大学病院 病理部)
  • 中島 収(久留米大学病院 臨床検査部)
  • 吉村 健一(京都大学医学部付属病院)
  • 村上 卓道(近畿大学 医学部)
  • 高口 浩一(香川県立中央病院 肝臓内科)
  • 大川 和良(大阪府立成人病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
43,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性ウイルス性肝疾患において、肝線維化が強くなるほど発癌・胃食道静脈瘤などの門脈圧亢進症状・肝不全のリスクなどが上昇する。肝線維化の評価は、肝生検で行うことが多いがサンプリング・エラーの問題は無視できない。また出血のリスクもあり患者にとっては負担も大きく繰り返し行うことには不向きであり、治療経過の評価に利用できない。これらの理由から肝生検に代わる非侵襲的肝線維化診断法を確立することが望ましい。
本研究では、組織の歪み情報を画像化する超音波技術Real-time Tissue Elastography (以下RTE)を新たに開発(研究分担者 椎名 毅(京都大学)が担当)すると共に、全体研究として慢性ウイルス性肝疾患における肝線維化定量的評価と診断支援の実現を目指して、多施設共同横断研究として肝生検とRTE結果との比較を行った。更に、次年度には、肝発癌や門脈圧亢進症の発現予測についても多施設での前向き試験も行う予定である。
本研究により、RTEによる正確な定量的肝線維化測定方法が確立されれば、ウイルス性肝疾患患者にとって負担の軽減となる。また繰り返し検査を行えることが大きなメリットとなる。これまでは肝生検を行うことが多かった肝線維化診断において、安全かつ正確な方法を世界に発信できることとなる。更にこの結果は日本のみならず、世界の診療にも大きな影響を及ぼすものと予想される。肝生検に代わりRTEが肝線維化診断のゴールドスタンダードになる可能性がある。
また、RTEを行うことで、肝発癌や門脈圧亢進症のリスクの高い患者を絞り込むことができる。絞り込みを行うことで無駄な医療費を削減できると同時に、肝発癌の早期発見・早期治療につながり慢性肝疾患患者のQOLの向上や余命延長が得られることになる。インターフェロン施行前にもインターフェロンの治療対象の絞り込み並びに治療効果予測の指標になると考えられる。
研究方法
全体研究として、慢性ウイルス性肝疾患における肝線維化定量的評価と診断支援の実現を目指して、多施設共同横断研究として肝生検とRTE結果との比較を行う。
B型あるいはC型慢性肝炎および肝硬変患者において、RTEと肝組織診断とを比較し、RTEで肝線維化を推定可能かどうか、RTE画像をどのように評価すれば肝線維化を反映した分類が出来るのかなどを検討するため、多施設共同横断研究を計画した。
目標被検者数は500名とし、登録期間は倫理委員会承認後から3年間とした。
研究方法は、肝生検や肝切除術を受けるB型あるいはC型慢性肝炎および肝硬変患者を対象とし、肝生検前後あるいは肝切除術前2週間以内(4週間以内を許容する)に血液検査、RTE、FibroScan®を行う。肝組織は、研究分担者である坂元 亨宇(慶応大学)、鹿毛 政義(久留米大学)、中島 収(久留米大学)の3名によりブラインド・リーディングを行う。RTE画像は、データ解析担当者により、動画をブラインド・リーディングし、ヒストグラム化、グレースケール化、二値化し特徴量解析する。これらの結果を用いてRTE画像の評価方法の検討および肝線維化定量的評価と診断支援の実現を目指す。
結果と考察
力学的モデル解析により、RTE画像で得られる変化(低歪み領域が増え斑な画像になる)は、肝線維化の進行に伴う肝組織の変化そのものを捉えた現象であることを確認した(分担研究者:椎名 毅氏が担当)。
RTEを用いる事で、炎症・黄疸・鬱血の影響を受けずに非侵襲的に肝線維化を測定することが可能であった。
更に血清マーカーとあわせて測定する事で更に高い診断能を得ることが可能であり、肝生検は省略しうると考えられる。
本年度の全体研究では、組織の歪み情報を画像化する超音波技術であるRTEを用いて、慢性肝疾患における肝線維化の定量的評価と、正確な非侵襲的線維化診断法の実現を目指すため多施設共同横断研究を行い、肝生検組織とRTE画像との比較検討を行った。
結論
慢性肝疾患における肝線維化定量的評価と診断支援の実現を目指して、多施設共同横断研究として肝生検とRTE結果との比較を行った。
RTEを用いる事で、肝線維化を非侵襲的に診断できた。更に、RTEは、FibroScanとは異なり炎症・黄疸・鬱血などの影響を受けずに肝線維化ステージを診断できた。
今後、他のモダリティ(FibroScan、VTTQ、ShearWave Elastographyなど)との比較、RTEを用いて肝発癌や門脈圧亢進症の発現予測ができるかどうかなどについても研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201240006Z