次世代遺伝子解析技術を用いた希少難治性疾患の原因究明及び病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
201238010A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代遺伝子解析技術を用いた希少難治性疾患の原因究明及び病態解明に関する研究
課題番号
H23-実用化(難病)-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高嶋 博(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 出雲 周二(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 中川 正法(京都府立医大 医学部医学科)
  • 野元 正弘(愛媛大学 医学系研究科)
  • 永井 将弘(愛媛大学 医学系研究科)
  • 高橋 祐二(東京大学 医学系研究科)
  • 久保田龍二(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 田中 章景(名古屋大学 医学系研究科)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 松浦 英治(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(難病関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
90,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性神経疾患の原因は年々明らかになってきたが、今なお原因不明のものも多い。特に神経難病においては種類も多く、解決すべき問題が山積している。一方、近年のゲノム解析技術の進歩は著しく、個人のレベルにまで全エクソン解析や全ゲノム解析を行いうる様になってきた。我々は、遺伝性神経疾患(Charcot-Marie-Tooth 病、(CMT)、遺伝性脊髄小脳変性症、プリオン病、ミトコンドリア病、認知症など)およびHTLV-I関連脊髄症(HAM)を含めて、全国的な枠組みで10000例を超える多数のDNA検体を収集し、遺伝子診断を行ってきた。我々は、今回、大規模な遺伝子解析を実現した次世代ゲノムシークエンサーを用いて、これまでは解析量の限界から踏み込めなかった新しい包括的な遺伝子診断システムの開発、網羅的な新規遺伝性疾患の同定、HAMなど非遺伝性疾患の発症素因である感受性遺伝子の同定を行う。

研究方法
我々はゲノムシークエンサー、Illumina社 MiSeq、ライフテクノロジー社のIonProton, Ion PGMを導入し、多数の原因を持つ遺伝性疾患(遺伝性ニューロパチー(CMT、HSAN、HMN)および小脳失調症、の包括的な遺伝子診断法を開発する。また、遺伝子解析の結果から新しいミトコンドリア病として、MIMECKの疾患概念の確立と同定、および急性期の効果的な治療法を確立する。
HAMの病態解明の研究として、家族性HAM患者および未発症HTLV-Iキャリアの検体を用いた全エクソーム解析を行い、エクソーム解析による変異データを解析し、HAM発症に関わる遺伝子および変異を検索する。本研究は鹿児島大学など遺伝子解析を行なう参加各大学において、倫理委員会の承認を得て行われた。
結果と考察
我々は、次世代シークエンサーを用いて、遺伝性ニューロパチー(CMT、HSAN、HMN)および小脳失調症、の包括的な遺伝子診断法を完成させ、安価で高速な検査法が実現した。新しいミトコンドリア病として、MIMECKの急性期の効果的な治療法を見いだした。さらに、運動性ニューロパチー(HMN)の原因として一つのアミノアシルtRNA合成酵素の(AARS)異常を世界で初めて同定し、次に遺伝性感覚自律神経ニューロパチーHSAN2D型の原因(SCN9A)を同定し報告した。地域的な遺伝性ニューロパチーの分子疫学や多系統萎縮症、PSP-Cの解析、SCA31の病態解析も行った。大規模なエクソーム解析による、300例以上のCMTの新規遺伝子候補が判明した。HAM発症関連遺伝子の候補として細胞浸潤や細胞接着、細胞増殖に関わる遺伝子を抽出した。
結論
遺伝子診断陰性例に対する包括的な既知の遺伝子診断は、ゲノムシークエンサーを用いることで、安価、迅速に実行できる。
新しい疾患としてMIMECKを樹立し、治療法を発見した。
HSAN2Dの原因として、SCN9Aの異常を世界で初めて同定しHSAN2Dを命名した。
小脳失調症、遺伝性ニューロパチーの地域的な分子疫学が明らかとなった。
HAMの家系例エクソーム解析で、重要な因子が見つかった。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201238010Z