次世代シーケンサーを用いた遺伝性ミオパチーの原因解明

文献情報

文献番号
201238008A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代シーケンサーを用いた遺伝性ミオパチーの原因解明
課題番号
H23-実用化(難病)-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
西野 一三(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 悟(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 林 由起子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第一部)
  • 後藤 雄一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第二部)
  • 小牧 宏文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院小児神経診療部)
  • 本村 和嗣(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター臨床開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(難病関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
76,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原因不明の遺伝性ミオパチー例に対して、次世代シーケンサーを用いたエクソームのリシーケンス解析を行って原因遺伝子を同定し、分子病態を明らかにする。
研究方法
次世代シーケンサーは平成23年度末に納入され、本格稼働ができる体制が整った。機器の納入・立ち上げを待つ間、(1) エクソーム解析による新規原因遺伝子解明システム構築、(2) 先天性ミオパチーの網羅的既知遺伝子スクリーニング法確立、(3) 先天性ミオパチー診断未確定例の臨床情報収集システム確立、(4) 自己貪色空胞性ミオパチー培養細胞を用いた実証実験解析系の構築、(5) 遺伝子ノックダウン法を用いた劣性遺伝性筋疾患モデルマウスの作成、(6)ミトコンドリアミオパチー症例の選別を行った。
結果と考察
(1) 全エクソーム解析による新規原因遺伝子解明
BWS, picard, GATKを用いて得られたシークエンスバリエーション・データをヒトゲノム上にマッピングした後、annovarを用いて公開データベースとの比較するとともに、zygosityおよび遺伝子情報を考慮して候補遺伝子変異を絞り込むためのパイプラインを構築した。Tubular aggregatesを伴う常染色体劣性肢帯型筋ジストロフィーアラブ人家系において原因遺伝子を同定したが、既報のものであった。これまでに、140エクソームの解析を終えているが原因変異が見出されたのは、このアラブ人家系のみである。これは、近親婚を含めた解析に有利な家族歴があるためと考えられる。今後は、このような家族歴がある例にフォーカスを当てる必要性がある。
(2)網羅的既知遺伝子スクリーニング法確立
カスタマイズしたエクソンキャプチャーキットを設計し、ターゲットリシークンス法により、主に先天性ミオパチーに関して変異スクリーニングを効率的に行う方法論を確立した。MiSeqを用いて未診断例120例について解析を終え、約半数例で何らかの変異が見出されることを確認した。
(3) 次世代シーケンサーを用いた遺伝性ミオパチーの原因解明に関する臨床情報の集積
遺伝性ミオパチーの病因は多因性であり、かつ未だ病因が不明な例も多く存在する。また遺伝性ミオパチーでこれまでに同定されている原因遺伝子の多くが、NebulinやRYR1などの巨大遺伝子であり、例え原因遺伝子が判明している疾患であっても従来のサンガー法では遺伝子診断を行うことは困難である。そこで遺伝性ミオパチーの原因解明の基礎となる臨床データの集積を行った。
(4) 次世代シークエンサーによる遺伝性筋疾患の新規遺伝子変異同定のための高速実証実験
脂質蓄積性ミオパチー(原発性カルニチン欠損症)の原因遺伝子であるOctn2、ミオチューブラーミオパチーの原因遺伝子であるMtm1、およびII型糖原病の原因遺伝子であるGaaを対象に、イントロンーエキソン境界を含むVivo-Morpholino を設計し、劣性遺伝性筋疾患のモデルマウスを高速に作成することと、解析方法の構築を試みた。Vivo-Morpholinoの投与により表現型が確認され、本方法は次世代シーケンサーから得られる遺伝子変異候補の実証に有用である可能性が示された。
(5)ミトコンドリアミオパチー解析
7368箇所の領域をキャプチャーするHaloplex®を用いた解析を呼吸鎖酵素複合体Ⅰ機能低下症の2症例に試み、病因の可能性の高い遺伝子変異が見出された。病因確定のために表現系回復実験を続行中である。
結論
次世代シーケンサーを用いた解析体制が整い、順次、未診断例の解析を進めている。原因遺伝子変異同定を成功させるためには、近親婚を含めた解析に有利な家族歴がある例を中心に解析を進める予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201238008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
100,000,000円
(2)補助金確定額
100,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 61,168,341円
人件費・謝金 11,814,310円
旅費 2,691,152円
その他 1,250,197円
間接経費 23,076,000円
合計 100,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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