地域蓄積・収集した稀少疾患の系統的原因究明

文献情報

文献番号
201238007A
報告書区分
総括
研究課題名
地域蓄積・収集した稀少疾患の系統的原因究明
課題番号
H23-実用化(難病)-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉浦 孝一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 晃(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 荻 朋男(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 要 匡(琉球大学 大学院医学研究科遺伝医学)
  • 成富 研二(琉球大学 大学院医学研究科遺伝医学)
  • 園田 徹(九州保健福祉大学 保健学部臨床遺伝学)
  • 井田 弘明(久留米大学 医学部呼吸器・神経・膠原病内科学)
  • 渡邊 順子(久留米大学 医学部小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(難病関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
76,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は大規模高速シーケンサーを利用し,難病・稀少疾患の原因遺伝子を明らかにすること,および遺伝子情報に基づき,その疾患の治療法の開発の基盤とし医療への応用をはかることである。本年度は,次世代シーケンサーを用いて稀少疾患の原因遺伝子を特定するべく,whole exome解析を精力的に行うことを主眼とした。原因特定作業は長崎(吉浦研究分担班)と沖縄(要研究分担班)で担当した。荻グループは,同定したDNA修復酵素変異の生化学的機能解析を行い,その他のグループは稀少難病疾患の発見に努めた。
研究方法
Whole Exome Analysis (WEA) 研究は,これまでに長崎(吉浦研究分担班)と沖縄(要研究分担班)で収集されていた稀少難病疾患と研究分担者から試料解析の依頼を受け,高速シーケンサーにてdataを取得し,塩基配列整列,データベースとの照合,見つかった塩基変化のannotationまでを行った。検出された塩基置換およびInsertion/Deletion,はANNOVARによって注釈付けした。1000Genome projectに登録されている2500名の4x(depth)ゲノム塩基配列決定によって得られているアレル頻度,NHLBI exomeプロジェクトに登録されている6500名のexomeデータによって得られているアレル頻度をannotation fileに含めて記述し,rs番号,アレル頻度,個人でのzygosityの状況を組み合わせてdeleterious (有害)な変異を候補遺伝子,候補変異として残す作業を行った。
結果と考察
UVSSA症候群の原因がUVSSA遺伝子(旧名KIAA1530)であることを明らかにした。臨床的典型例の先端異骨症において,ホルモン感受性典型的先端異骨症の多くは,PDE4D遺伝子のde novo 変異が原因であることを同定し,Whole exome解析とSangerシーケンス解析により,現在までに5種類同定した。ホルモン抵抗性先端異骨症においては,PRKAR1A遺伝子変異を認めた。C様症候群患児5人に計5種類のASXL1遺伝子変異を同定できた。それらは、全てexon 12, 13に集中しており,他の報告からも,これらエクソンに変異は集中していると思われた。
結論
次世代シーケンサーによる塩基配列決定は,非常の有用な単一遺伝子性疾患の原因探索に非常に有用である。しかし,一方では個人に認められる変異が多く,複数の患者で重なる変異遺伝子,新生突然変異や創始者効果による劣性ホモ接合などがないと連鎖解析の結果があっても原因遺伝子であると遺伝的に結論を下すことは困難である。本年度までに,UVSSA症候群,ホルモン感受性典型的先端異骨症,ホルモン抵抗性先端異骨症,C様症候群,沖縄型遺伝性運動感覚ニューロパチーの原因遺伝子を確定することが出来た。また,Ohdo症候群,C様症候群,糖代謝および脂質代謝異常疾患の変異を同定しており,これらの遺伝子については,機能解析を実行中である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201238007Z