文献情報
文献番号
201237031A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-健危-指定-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 康史(昭和大学 医学部救急医学)
研究分担者(所属機関)
- 横田 裕行(日本医科大学大学院侵襲生体管理学・救急医学)
- 鶴田 良介(国立大学法人山口大学大学院医学系研究科救急・生体侵襲制御医学分野・救急医学)
- 北原 孝雄(北里大学医学部救命救急医学)
- 登内 道彦((財)気象業務支援センター振興部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦における熱中症の実態については、日本救急医学会「熱中症に関する委員会」が、2006年より隔年で実態の報告を行っており、熱中症の発生状況、病態、診断、治療内容、予後に至る詳細な分析により、熱中症の予防、診断・治療に関して大きな知見を得ることができた。その実績と実施にあたってのネットワークをもとに、毎年夏の全国調査を可能とするシステムの構築、混乱している熱中症の診断基準、重症度分類の見直しと策定、その国際基準としての整合性の検討、臨床現場で役立つ熱中症の診断と診療に関するガイドラインの策定、診断や治療に寄与する分子マーカーを見つけ出すための詳細な観察研究調査の実施、当日の熱中症患者の発生数と重症度を把握することで正確な熱中症注意報発令を可能とするための気象予報と連動した研究、以上を目的とする。
研究方法
医療機関に基本的に設置されているFAXを用いた熱中症の症例登録を2012年の夏季30日間に限って試験的に行い、その問題点や改善点を検討した。具体的には、全国の救急医療機関に依頼して、熱中症症例の診察後に、簡単なA4版1枚のFAX用紙に年齢、性別、重症度、発生地域などをチェック方式で記入し、当日にFAXし、結果を収集すり方法で、すくなくとも発生数、重症度などを正確かつ翌日までにスムーズに把握できるよう改善点を検討した。また同時期を含む3ヵ月にわたり、第4回目の日本救急医学会熱中症に関する委員会による詳細なデータシートを用いた熱中症症例の疫学調査を行い、今後の安全性、利便性に配慮したデータ収集と分析を行った。双方とも、疫学研究かつ観察研究であり、各医療機関からのデータシートが提出された時点で、連結不可能となり、患者情報が保護される。今回の検討は、1)連結不可能、2)匿名化、3)事後のカルテからの患者情報データを使用した観察研究であるため、十分に患者情報の保護ができていると考えられ、倫理的な問題はない。ただし、これは参加各医療機関での倫理委員会への審査の必要性の判断を妨げるものではない。
また、診断、重症度予測に寄与する分子マーカーの分析については、今回のHeatstroke STUDYに、CRP、凝固系因子、プロカルシトニンなどの測定値の記載をお願いした。
同様に、バイタルサイン、意識、肝機能、腎機能、DICスコアなどから、重症度分類や診断基準となるべき数値や基準を分析した。
また、診断、重症度予測に寄与する分子マーカーの分析については、今回のHeatstroke STUDYに、CRP、凝固系因子、プロカルシトニンなどの測定値の記載をお願いした。
同様に、バイタルサイン、意識、肝機能、腎機能、DICスコアなどから、重症度分類や診断基準となるべき数値や基準を分析した。
結果と考察
即日登録の結果を厚労省ホームページに示す(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/dl/sokuji-240807.pdf)。また、2012年7~9月の3ヵ月間にわたって全国103の救命救急センター、大学および市中病院救急科(ER)で収集された結果では、若年男女のスポーツ、中壮年男性の肉体労働、高齢男女の日常生活における熱中症患者の発生が特徴であり、特に高齢者は屋内で熱中症にかかり、重症化しやすいことがわかった。そのため、労作性熱中症よりも、古典的熱中症にターゲットを絞った予防対策が喫緊の課題である。この他、診断基準や予後の解明に役立つ分子マーカー、診断基準に関しては、各分担研究者による解析が進行中である。
この2つの臨床研究データを利用して、気象専門家を分担研究者に迎え、地域差のある夏季の気象の変化を、今回の熱中症患者のFAXを用いた即日登録データと比較することで、当日の患者発生数、重症度、地域性とその気象を組み合わせた翌日の熱中症警報の発令基準の策定を試みることとなる。もう一つは、重症例のデータを集約することで、熱中症の診断基準、重症度分類、治療ガイドラインの策定に向けての診断根拠となる分子マーカー、重症度分類の鍵となるバイタルサインや採血結果などの病態も把握、治療ガイドラインの根拠となりうるエビデンスの構築を、分担研究者とともに検討していくこととなる。
この2つの臨床研究データを利用して、気象専門家を分担研究者に迎え、地域差のある夏季の気象の変化を、今回の熱中症患者のFAXを用いた即日登録データと比較することで、当日の患者発生数、重症度、地域性とその気象を組み合わせた翌日の熱中症警報の発令基準の策定を試みることとなる。もう一つは、重症例のデータを集約することで、熱中症の診断基準、重症度分類、治療ガイドラインの策定に向けての診断根拠となる分子マーカー、重症度分類の鍵となるバイタルサインや採血結果などの病態も把握、治療ガイドラインの根拠となりうるエビデンスの構築を、分担研究者とともに検討していくこととなる。
結論
熱中症患者の発生を正確に把握し、短時間でその傾向を予測することで、熱中症の早期警戒警報を正しく発令できるシステム構築は重要であり、今後も検討を重ねていく必要がある。
また、低予算で安全・簡便な症例登録が可能になるような検討も必要である。
また、低予算で安全・簡便な症例登録が可能になるような検討も必要である。
公開日・更新日
公開日
2013-08-21
更新日
-