大規模災害時における遺体の埋火葬の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201237030A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害時における遺体の埋火葬の在り方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-健危-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
横田 勇(特定非営利活動法人日本環境斎苑協会 総務部)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多村 悦史(東京福祉大学大学院社会福祉学研究科 教授)
  • 高岡 昌輝(京都大学大学院地球環境学堂 教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災では、極めて多数の死者が生じ、既存の火葬場で火葬が順調に行えず、一部で仮埋葬(土葬)となった。
これを教訓にすると、都道府県を中心とした広域火葬体制の構築が急務であり、平素よりの市町村・火葬場・民間事業者等の連携作りが重要となる。
また、火葬場での能力不足、燃料不足、停電等への対応の検討、遺体の適切な管理や葬儀資材の備蓄、搬送用資材や燃料の確保等の検討も常に行うことが強く求められる。
本研究では、このように実効性のある広域火葬計画と連携体制の構築により、大規模災害時における埋火葬の在り方を提言するものである。
研究方法
初年度は次のような調査を行った。
1.被災地の県、市町村、火葬場、民間事業者等へのヒヤリング調査、現地調査で、震災後の対応と被害の全容を把握した。
2.全都道府県庁へのアンケートで、広域火葬計画の策定・実施状況を把握した。
3.全国1,500余の火葬場へのアンケートで、設備能力、災害対策等の実態を把握した。
4.調査を実施するため、学識経験者、自治体、民間事業者、火葬従事者等による委員会を設置・運営した。
結果と考察
1.被災3県の県庁担当者に対するヒヤリング調査
(1)東日本大震災では、死亡者が極めて多く、火葬場の施設能力では対応ができなかった。
(2)宮城県では仮埋葬(土葬)を行ったが、火葬能力回復とともに数か月で掘り起し改葬とした。岩手県、福島県では行わなかった。
(3)震災当時は3県とも広域火葬計画が未策定であった。
2.被災地(宮城県、岩手県)の民間事業者団体へのヒヤリング調査
(1)民間事業者は、柩、納体袋、葬儀関連物等の物品供給及び遺体搬送、火葬場情報整理、火葬枠確保等に多大な貢献を果たした。物品の備蓄等、今後も大きな役割を果たすことが期待できる。
(2)民間事業者は、埋火葬、葬送儀式の専門家として、行政、火葬場、遺族をつなぐ重要な役割を担っており、このような民間事業者の働きに対して、行政が積極的にバックアップして行政と民間事業者との効率的な連携システムの構築を検討すべきである。
3.被災地の火葬施設へのヒヤリング調査
(1)火葬場の被害は、一部を除き、比較的に軽微であった。
(2)直後は、停電と燃料不足のため、稼働停止となった。また、遺体搬送車両の燃料も不足した。
(3)数日後から、津波被災地の遺体を搬送し、内陸部等圏外火葬場による支援火葬を行った。
(4)被災地では、日々の収容遺体だけでも火葬能力を超えるが、収容されない想定遺体に大きな不安を感じ始め、仮埋葬を検討した。
(5)火葬場でのピークは3~4月であり、4月中旬から火葬の受付枠に空きが見られるようになり、一旦仮埋葬した遺体を掘り起し改葬し始めた。
(6)葬祭業者及び炉メーカは勿論、自衛隊、警察、消防、医師、歯科医師、僧侶及び所管外の応援公務員、一般運送業者等による協力が不可欠であった。
(7)市町村の火葬場では、県が仲介となった火葬場間の連絡網、連携形成を求めている。
4.全国各都道府県への広域火葬計画策定に関するアンケート調査
広域火葬計画の策定状況を見ると、11都府県(策定率23.4%)が策定しており、現在策定中を含めると19都府県(策定率40.4%)となっている。今後の広域火葬計画策定指針を検討する際に重要な参考資料とする。
5.全国火葬場への施設状況及び防災対策の実態に関するアンケート調査
全国1,519施設の火葬場に対して、施設内容、防災対策の実態等についてアンケート調査を実施した。防災対策に係る集計結果では、東日本大震災による各火葬場での被害状況や対応、周辺地域での支援火葬の実態、大震災を経験した上での備蓄等の防災対策の在り方、火葬場間や葬祭業者等との連携の取り方などを把握する上で重要な資料となる。
結論
次年度は次のことを行う。
1.研究の母体となる親委員会及び実行委員会の運営を継続する。
2.初年度を補足する調査・ヒヤリングを実施する。
3.その後の研究で明らかになった震災規模の想定を踏まえ、従来の「広域火葬計画策定指針」を見直す。
4.現行「広域火葬計画」を補完するより広域的な「(仮称)広域協力圏」の概念、施策等を検討する。
5.新たに学識経験者、火葬炉メーカ等による作業部会を設置し、大規模災害時を想定した火葬場の必要能力の設定、必要な資材、運搬手段等の整備及びこれに伴う財政支援の在り方等を検討する。また、大規模災害に耐える火葬場の諸基準を提案し、必要とされる施設整備に係る財政的支援施策等の在り方を検討する。
6.先行的に広域火葬計画を策定した都道府県、都道府県を超えた広域での火葬計画が進む関東や関西に対し、ヒヤリングや意見交換を行い、必要な調整を行う。
7.研究成果の概要を提示し、意見交換と必要な調整を行う。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201237030Z