建築物環境衛生管理及び管理基準の今後のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201237023A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物環境衛生管理及び管理基準の今後のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-健危-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大澤 元毅(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 鍵 直樹(東京工業大学 大学院)
  • 田島 昌樹(高知工科大学 工学部)
  • 池田 耕一(日本大学 理工学部)
  • 中館 俊夫(昭和大学 医学部)
  • 射場本 忠彦(東京電機大学 未来工学部)
  • 百田 真史(東京電機大学 未来工学部)
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
  • 東 賢一(近畿大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物における環境衛生管理及び管理基準に着目して,建築物の環境衛生の実態調査,現状の把握及び問題点の抽出,原因の究明,対策の検討等を実施し,公衆衛生の立場を踏まえた,今後の建築物に必要な環境基準のあり方についてとりまとめる。
研究方法
1.建築物の環境衛生の実態把握及び維持管理のあり方
温度・相対湿度・二酸化炭素の不適率増加傾向に着目し、建物使用者及び衛生指導側へのアンケートにより,室内空気汚染による健康影響の実態を把握し,シックビル症候群が疑われる建築物で空気環境測定及び実地調査を行った。環境衛生実態,臨床的な検討及び維持管理体制・手法の資料とあわせて原因究明と対策を検討する。
2.特定建築物のあり方と維持管理基準に関する研究
既往調査で基準不適合が指摘された,教室環境形成の原因・機序あるいは個別空調設備の性状を探るため,環境実態調査を継続し,衛生管理上の問題点の抽出及び維持管理のあり方を検討した。
3.建築物の空気調和設備の維持管理及び運用のあり方に関する研究
既往調査では,特に冬季相対湿度の基準値不適合が,特定の空気調和設備の維持管理及び運用方法に起因していることが指摘され,事務所において顕著な,相対湿度の不適率上昇の原因と考えられている。当該空調設備について,環境衛生データの収集と解析を継続的に実施し,省エネルギーと環境衛生の両立に資する適切な維持管理手法・監視方法の提案を行った。
4.健康影響と管理基準のあり方に関する研究
上記で提案された維持管理項目や環境基準について,その健康影響に関する基礎情報の整備のため文献調査を実施し,現状の基準のあり方,環境の維持管理のあり方について公衆衛生学的観点から情報の整備と提供を行った。更に,PM2.5など今後管理すべき環境の項目について提案する。
結果と考察
1 勤務者の健康状態と職場環境等の調査により,環境起因と思われる健康障害と職場環境との関連性や,建築物の維持管理上の課題を検討した。冬期・夏期ともに,温湿度環境,薬品・不快臭,ほこりや汚れ,騒音などの環境要因とSBS関連症状との関係が示唆された。さらに夏期では,カーペット使用や壁塗装との関連性,冬期には湿度基準の不適合と目の症状や上気道症状や皮膚症状,冷却加熱装置の汚れと上気道症状との関連性が示唆された。また,夏期の二酸化炭素基準の不適合発生と非特異症状との関連性も示唆された。
2.教室環境の実測により,二酸化炭素濃度は在室者数・空調と換気の状況及び窓開閉に影響され,自然換気は二酸化炭素濃度を下げるのに有効ではあるが,必ずしも年間を通して実効性があるわけではないことを明らかした。また,個別分散空調方式においては,コイル・ドレンパンではCladosporium spp.,yeast,Fusarium spp.など好湿性の菌が多量に検出される一方,ファン・フィルタでは主にAspergillus spp.,Penicilliim spp.など耐乾性の菌が検出され,繁殖傾向が明らかにされた。
3. 事務所空気調和設備について,環境衛生データの収集と解析を実施し,基準に適合し,省エネルギーと環境衛生の両立に資する適切な維持管理手法・監視方法の提案を行うことを目的とし,温湿度,二酸化炭素の実測を行った。何れの空調方式・地域においても温湿度,二酸化炭素濃度ともに基準値を外れる場合を再確認したほか,個別方式では,相対湿度がやや低くCO2濃度が高い傾向が見られる一方で,中央方式は絶対湿度が低い傾向が見られた。また同室内・同時刻においても温度に空間分布が生じ,相対湿度の空間分布を拡大している状況を示した。
(4). 健康影響と管理基準のあり方に関する研究
 電子写真方式の事務機器から排出される室内空気汚染について,特に粒径がナノメートルオーダーの超微小粒子(UFP)に絞り,文献検索を探索的に行った。実際のオフィス環境を使って室内UFP濃度とヒトの急性反応を検討したものや,培養細胞にUFPを曝露して細胞語句性と遺伝独資を検討したものなど,生体に対する影響に関する研究や,実際のオフィス環境で種々の条件で機器を稼働させ,生じる室内空気汚染を推定した論文などが見られた。
結論
1. シックハウス症状と室内環境との関連性が示唆されたので,さらに環境実態を明らかにして曝露機序と対策の検討を行う。
2. 予てから指摘のあった教室における衛生環境問題が確認されたので,具体的な対策を検討する。個別空調に関しても汚染性状に即した対策を検討する。
3. 省エネルギーと環境衛生の課題を整理し、設計或いは管理保全の改善に資する提案を行っていく。
4. ナノ粒子等の汚染実態とその機序を明らかにして対策立案に資する。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201237023Z