文献情報
文献番号
201237020A
報告書区分
総括
研究課題名
水道の浄水処理および配水過程における微生物リスク評価を用いた水質管理手法に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
- 国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科)
- 大瀧 雅寛(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科)
- 春日 郁朗(東京大学大学院 工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
水道水質の安全性および快適性のさらなる向上のため、水道の浄水処理および配水過程における病原微生物等による微生物リスクの所在を定量的に明らかとすること、また、当該の微生物リスクを低減する上での適切な制御方法および水質管理手法を提案することを目的とする。
研究方法
次世代型高度浄水処理プロセスを対象とした定量的微生物感染リスク評価、代替トレーサー粒子を用いた浄水処理によるクリプトスポリジウム除去性能評価およびリスク評価、生物膜を形成する微生物の付着強度に基づく分類と塩素消毒による損傷部位の比較、及び、配水過程における再増殖微生物の単離同定と塩素耐性試験ならびに増殖特性試験を行った。
結果と考察
カルキ臭低減を指向した次世代浄水処理プロセスにおける微生物リスク管理の高度化を目的として、O3/UV酸化反応塔における大腸菌不活化能を推定するとともに、凝集・沈殿-急速砂ろ過- O3/UV処理された飲用水のC. jejuni年間感染確率を推定した。また、カルキ臭低減型プロセスのAOC除去特性を明らかにした。また、水道システムに存在する感染性レジオネラのモニタリングを目的とした基礎的検討を行い、残留塩素が十分に維持されているケースでもVBNC化したレジオネラが存在していること、低栄養条件におかれることでレジオネラのヒト細胞に対する感染能が強まることを示した。
耐塩素性病原微生物であるクリプトスポリジウムを対象として、クリプトスポリジウム代替トレーサー粒子の浄水処理による除去能力の評価実験を行ったところ、実験室規模の凝集沈殿-砂ろ過プロセスにおいて原水濁度が高い時ほど除去率が高くなる傾向が見受けられた。障害調整生存年数DALYに基づく健康影響リスク評価を行ったところ、クリプトスポリジウムによる汚染濃度が一定である条件下では原水濁度が低い時ほどリスクが高まる傾向が見られ、特に低濁度時にPAC注入率が不足する場合においては、WHO飲料水水質ガイドラインの目標値(年間10^-6DALYs/人以下)を満たさなかった。
濃度既知のマーカー生物を投入するT-RFLP法を用いた濃度定量法について、Pseudomonas aeruginosa株をモデル微生物として用いた検証を重ね、複数種の微生物群の消毒処理耐性やその後の増殖能力を一度に解析することが可能となると考えられた。PVC片上およびフロストガラス片上にバイオフィルムを形成させたPseudomonas菌を剥離強度によって分類する方法を確立した。塩素処理によって配水管中で剥離せずバイオフィルムの種となる可能性が高い部分は、いずれも致死的な損傷レベルであるものの、浮遊状態の菌や剥離しやすい部分に比べて不活化速度は約半分であった。塩素消毒処理において、同じCT値であっても、遊離塩素濃度2.0 mg/L以上では1.0 mg/L以下に比べてより膜損傷を与えやすいこと、3.0 mg/Lでは致死的な損傷を高く与えていることがわかった。
10か所の屋外・屋内給水栓から従属栄養細菌の単離を行い、16S rRNA遺伝子を対象とした二重標識T-RFLPによって分類を行った後、系統的に異なる19株を得た。塩素耐性試験では、塩素添加による消毒作用の影響を膜損傷とコロニー形成能から評価した。その結果、各菌株の不活化はChick-Watson式に従ったが、塩素消毒の影響は膜損傷よりもコロニー形成能に顕著に表れることが確認された。塩素耐性は単離株によって異なっており、MycobacteriumやMethylobacteriumなどに近縁な単離株が他の単離株よりも高い塩素耐性を持つことが示された。また、これらの単離株の水道水中での最大増殖量を評価し、塩素耐性と水道水中での増殖性から単離株の再増殖特性を分類した。浄水工程水における増殖性を評価したところ、各工程が単離株の増殖性に異なる影響を与えることが示された。
耐塩素性病原微生物であるクリプトスポリジウムを対象として、クリプトスポリジウム代替トレーサー粒子の浄水処理による除去能力の評価実験を行ったところ、実験室規模の凝集沈殿-砂ろ過プロセスにおいて原水濁度が高い時ほど除去率が高くなる傾向が見受けられた。障害調整生存年数DALYに基づく健康影響リスク評価を行ったところ、クリプトスポリジウムによる汚染濃度が一定である条件下では原水濁度が低い時ほどリスクが高まる傾向が見られ、特に低濁度時にPAC注入率が不足する場合においては、WHO飲料水水質ガイドラインの目標値(年間10^-6DALYs/人以下)を満たさなかった。
濃度既知のマーカー生物を投入するT-RFLP法を用いた濃度定量法について、Pseudomonas aeruginosa株をモデル微生物として用いた検証を重ね、複数種の微生物群の消毒処理耐性やその後の増殖能力を一度に解析することが可能となると考えられた。PVC片上およびフロストガラス片上にバイオフィルムを形成させたPseudomonas菌を剥離強度によって分類する方法を確立した。塩素処理によって配水管中で剥離せずバイオフィルムの種となる可能性が高い部分は、いずれも致死的な損傷レベルであるものの、浮遊状態の菌や剥離しやすい部分に比べて不活化速度は約半分であった。塩素消毒処理において、同じCT値であっても、遊離塩素濃度2.0 mg/L以上では1.0 mg/L以下に比べてより膜損傷を与えやすいこと、3.0 mg/Lでは致死的な損傷を高く与えていることがわかった。
10か所の屋外・屋内給水栓から従属栄養細菌の単離を行い、16S rRNA遺伝子を対象とした二重標識T-RFLPによって分類を行った後、系統的に異なる19株を得た。塩素耐性試験では、塩素添加による消毒作用の影響を膜損傷とコロニー形成能から評価した。その結果、各菌株の不活化はChick-Watson式に従ったが、塩素消毒の影響は膜損傷よりもコロニー形成能に顕著に表れることが確認された。塩素耐性は単離株によって異なっており、MycobacteriumやMethylobacteriumなどに近縁な単離株が他の単離株よりも高い塩素耐性を持つことが示された。また、これらの単離株の水道水中での最大増殖量を評価し、塩素耐性と水道水中での増殖性から単離株の再増殖特性を分類した。浄水工程水における増殖性を評価したところ、各工程が単離株の増殖性に異なる影響を与えることが示された。
結論
水道水質の安全性および快適性のさらなる向上のためには、水道の浄水処理および配水過程における病原微生物等による微生物リスクの所在を定量的に明らかとすること、また、当該の微生物リスクを低減する上での適切な制御方法および水質管理手法を提案することが必要である。最終年度となる次年度においては、各々に必要となる調査研究を継続し、知見のとりまとめを行いたい。
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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