健康危機事象への迅速な対応に有効なサーベイランス解析手法・ツールの開発・普及に関する研究

文献情報

文献番号
201237018A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機事象への迅速な対応に有効なサーベイランス解析手法・ツールの開発・普及に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(昭和女子大学 生活機構研究科)
  • 灘岡 陽子(東京都健康安全研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域における突発的・集中的な健康危機事象の発生をいち早く検出するための症候サーベイランスは国内外で重要な課題となっており,諸外国においては様々な検討が行われている。その中でも客観的な判断を下すための統計解析は大変重要な要素であり,実際いくつかの都市では統計解析を含めたシステムが稼働し運用されている。本研究では申請者らの提案するFleXScan法の利用した検討を行う。特に国内において実際のサーベイランス業務として各地で中心となると考えられる地方衛生研究所での利用の可能性,また有用性について検討を行う。
研究方法
開発研究としてサーベイランスに適し,実用性のある統計解析手法の開発として,Tango and Takahashi (2005)で提案するflexible scan statistic(FleXScan法)を改良した新たな検定手法を提案する。シミュレーション検討により,その精確性について,従来のflexible scan statistic(FleXScan), circular scan statistic(SaTScan)との比較を行う。次に手法の普及に向けて実データにあてはめた適用例,実例での実証研究として感染症発生動向調査を用いたサーベイランス,地理情報システムを用いたインフルエンザ学級閉鎖状況の流行把握の検討を行う。
結果と考察
Tango and Takahashi(2005)の提案するflexible scan statisticにTango(2008)の制限付き尤度比統計量を組み込んだ手法を提案したことで従来法よりもより高い精度で集積地域を検出できるようになった。また従来のFleXScan法で問題点であった最大地域数の制限が不要になり,さらに計算時間も大幅に短縮することができた。さらに東京都における感染症発生動向調査を用いたサーベイランス,ならびにインフルエンザ学級閉鎖状況の地理情報システムを用いた可視化によって,インフルエンザの地域的な流行変化をみることができた。
結論
本研究では,サーベイランスに向けたより適切な解析ができるような統計量の改良の検討について,理論的側面および実際的側面から様々な検討を行い,より適切な手法・ツールを提案し,また救急搬送データの解析,サーベイランスへの利用可能性について検討を行った。本研究の成果としての手法・ツールを,実際に東京都をはじめ自治体で活用できるデータに適用することで,より有効的なサーベイランス解析が出来ることが期待される。今後,手法の理論的改良,利用者のニーズに答える利用しやすいツールの提供とその適用事例の紹介,検討を有機的に継続して行っていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201237018B
報告書区分
総合
研究課題名
健康危機事象への迅速な対応に有効なサーベイランス解析手法・ツールの開発・普及に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(昭和女子大学 生活機構研究科)
  • 灘岡 陽子(東京都健康安全研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ある症候が突発的・集中的に発生するなどの事象をいち早く検出するためには,日々それらの症候の発生状況を継続的に観察・監視し,その中で事象の発生が突発的・集中的に発生したと疑われる場合に,それが偶然なのか,または意味のあるものなのかを客観的に判定することが必要となる。その方法として集積性の検定という統計手法が利用でき,実際米国でのいくつかの監視システムにも組み込まれ日々解析が行われている。本研究では,我々の提案するFleXScan法を利用し,国内において実際のサーベイランス業務として各地で中心となると考えられる地方衛生研究所での利用の可能性,有用性について検討を行う。また救急搬送件数として総務省消防庁で公開されている心肺機能停止傷病者の全国データ(ウツタインデータ)を用い,その発生の特徴について明らかにする。さらにこれらの検討を通しFleXScanのさらなる統計解析手法の開発,ツールとなるソフトウェアの改良とともに,実データに基づいたサーベイランスに適切な解析方法について検討を行う。
研究方法
(1)開発研究:サーベイランスに適し,実用性のある統計解析手法の開発として,Tango and Takahashi (2005)で提案するflexible scan statistic(FleXScan法)を改良した新たな検定手法を提案する。シミュレーション検討により,その精確性について,従来のflexible scan statistic(FleXScan), circular scan statistic(SaTScan)との比較を行う。(2)普及のための研究:手法の普及に向けて実データにあてはめた適用例,実例での実証研究について検討を行う。具体的に救急蘇生統計を用いた冬季の心肺機能停止傷病者救急搬送件数の時間的集積性の検出,感染症発生動向調査・学級閉鎖・学年閉鎖の状況を用いたサーベイランスと流行把握を検討した。
結果と考察
Tango and Takahashi(2005)の提案するflexible scan statisticにTango(2008)の制限付き尤度比統計量を組み込んだ手法を提案したことで従来のFleXScan法で問題点であった最大地域数の制限が不要になり,さらに計算時間も大幅に短縮することができた。またシミュレーションにより集積地の同定精度もSaTScan法などの従来法よりも高いことが確かめられた。また,心肺機能停止傷病者の救急搬送件数について詳細に日単位で検討を行ったところ年末年始時期に特異的な増加が認められた。時間集積性の検定によって,いずれの年においても年末年始時期に最も有意な集積が検出された。地域(都道府県),男女別,心原性・非心原性を問わず,いずれも年末年始時期に高くなっていた。一方で検出された集積期間内とそれ以外(12月~1月)で搬送された傷病者の年齢構成を比較しても大きな違いが見られなかった。さらに東京都における2011~2012年のインフルエンザ流行シーズンにおける感染症発生動向調査を用いたサーベイランス解析,インフルエンザによる学級閉鎖・学年閉鎖の分布状況の可視化によって,その流行の様子が観察できた。
結論
本研究では,サーベイランスに向けたより適切な解析ができるような統計量の改良の検討について,理論的側面および実際的側面から様々な検討を行い,より適切な手法・ツールを提案し,また救急搬送データの解析,サーベイランスへの利用可能性について検討を行った。本研究の成果としての手法・ツールを,実際に東京都をはじめ自治体で活用できるデータに適用することで,より有効的なサーベイランス解析が出来ることが期待される。今後,手法の理論的改良,利用者のニーズに答える利用しやすいツールの提供とその適用事例の紹介,検討を有機的に継続して行っていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201237018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で検討している方法(FleXScan)が疫学の専門書,GIS専門書にも取り上げられ,本方法を利用した疫学研究なども世界的に増えてきている。
臨床的観点からの成果
本研究での結果について東京都健康安全研究センター,消防庁,東京消防庁などの現場へ情報提供を行った。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
本研究で検討しているFleXScanがニューヨーク市保健局GISセンターで採択されサーベイランスに利用されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201237018Z