地域健康安全・危機管理システムの機能評価及び質の改善に関する研究

文献情報

文献番号
201237016A
報告書区分
総括
研究課題名
地域健康安全・危機管理システムの機能評価及び質の改善に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
多田羅 浩三(一般財団法人日本公衆衛生協会)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 隆一郎(長野県飯田保健所)
  • 中瀬 克己(岡山市保健所)
  • 石丸 泰隆(山口県岩国環境保健所)
  • 澁谷 いづみ(愛知県半田保健所)
  • 小沢 邦寿(群馬県衛生環境研究所)
  • 宮崎 美砂子(千葉大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
20,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健所は、地域の健康危機管理の拠点である。本研究では、二年間で、大きく以下の二つの研究を行うことを目的とした。即ち、全国の保健所における健康危機管理体制を強化するために、健康危機管理9分野において日本版標準ICS/IAP/ACを作成・普及し、全国保健所の健康危機管理対応の標準化を図ること、及び、東日本大震災における保健師活動の調査を行い、災害時における保健師活動を強化・改善すること、である。前者については、以下の3点について検討を行った。①日本版標準ICS(Incident Command System)の作成と普及、②保健所が取り扱う健康危機管理分野について必要な事項の検討、③日本版標準ICSの実効性を担保するシステムの検討。後者については、以下について検討を行った。東日本大震災で被災した市町を管轄する保健所と県庁を対象に、震災後の地域保健活動の組織体制再構築の実態について、各組織の保健師への面接聴取により調査し検証することで、災害時に有用な活動体制再構築のあり方の検討を行う。
研究方法
日本版標準ICS/IAP/ACに関わる研究は、9つの分野研究班(原因不明、自然災害、医療・介護安全、食品安全、感染症、精神保健、飲料水、生活安全、及び原子力)、及び横断的な検討を行うために4つの総括分担研究班(連携、ICS、保健所支援、事例収集・分野)を設けて行った。各分野研究班は、それぞれ必要に応じて、医師、保健師、薬剤師、獣医師、栄養士、及び研究者などの研究協力者や地域協力者によって構成し、検討を行った。具体的な日本版標準的ICSの作成は、各分野で連携が必要となる規模の健康危機管理を想定して、保健所が備えるべきシステム(ICS)、そのシステムを担うための具体的役割(IAP: Incident Action Plan)、及びそれぞれのIAPを果すための具体的方法(AC: Action Card)について検討を行った。分野別に必要となる事項の検討では、東日本大震災に対する全国保健所調査、東日本大震災に対する精神保健対策調査、全国の病院における災害時の水の確保に関する調査、原発事故後の保健所の活動に関する調査を行った。日本版標準ICS(Incident Command System)の実効性を担保するシステムについては、 関連する総括分担班及び分野班が検討を担当した。また、昨年度調査を実施した被災市町村を管轄する7管轄保健所及び2県庁を対象に事例調査を行った。各事例の活動の様相を調べ、災害時保健活動体制の影響を与えた要因を検討した。
結果と考察
二年間の研究結果から、全国保健所における健康危機管理対応の標準化のための第一歩となる日本版標準ICS/IAP/ACを9分野で作成した。また、二年目には自然災害分野で全国保健所への普及研修を行った。しかし、ICSなど英語訳をそのまま用いた事が、直感的にその全貌を理解することを阻害している可能性があり、今後、更に実効性を高める工夫が必要である。
 二年間かけて作成した日本版標準ICS/IAP/ACと、その実効性を担保するためのシステム、ネットワークの運用は、徐々に保健所長間に根付いており、全国の保健所がネットワークとして活動するための重要なツールになると考えた。
 二年間かけていくつかの分野で行った東日本大震災に関連した調査から、今後更に検討すべき災害時の保健所の健康危機管理体制について示唆的な結果が得られた。この課題については、徐々に改善を行うことが必要である。
結論
所期の目的である日本版標準ICS/IAP/ACを、目標とした9分野で策定した。この日本版標準ICS/IAP/ACは、地域の実情に応じて、実効性のあるものにしてゆくための第一歩として、二年度に自然災害を対象に、全国7ブロックで研修会を行った。その結果、いくつかの県、保健所管内でICS に基づいた保健所の災害時体制の構築が開始された。日本版標準ICS/IAP/ACを担保するためのシステムとして、保健所連携相談システム、院内感染対応保健所支援ネットワークの運用が開始され、既存の保健所危機管理事例のデータベースと共に保健所の危機管理対応のバックアップを行う体制が完成した。自然災害分野では、今後実際の予測される大規模災害を想定して、具体的な保健所間の連携づくりが必要である。地域保健活動体制を迅速に確立するためは「平常時の体制から非常事態への切替」「指揮命令ライン確立」「各職員の災害時役割の理解の浸透・修得」「情報集約に基づく活動推進体制確立」「データ・文書資産の迅速活用」が重要である。今後整備・充足すべき点として災害時の指揮命令系統、災害時の情報管理など7項目が提案された。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201237016B
報告書区分
総合
研究課題名
地域健康安全・危機管理システムの機能評価及び質の改善に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
多田羅 浩三(一般財団法人日本公衆衛生協会)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201237016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域で健康危機期管理の拠点として位置づけがなされている保健所の役割について、全国保健所での対応を標準化する一助として、米国で用いられているIncident Command Systemの概念を取り入れた日本版標準ICS/IAP/ACを新たに作成した。作成分野は、原因不明、自然災害、医療・介護安全、食品安全、感染症、精神保健、医医療水安全、生活環境安全、及び原子力の9分野である。
臨床的観点からの成果
研究の範囲外です。
ガイドライン等の開発
作成した9分野の日本版標準ICS/IAP/ACが、ガイドラインそのものである。
その他行政的観点からの成果
自然災害分野について、全国8ブロックで主に保健所長を対象に研修会を開催し普及を図った結果、24年度までに高知県、大分県及び岐阜県で、全県的な取り組みが開始された。また、全国の保健所の中で30%ほどがまず管内での体制づくりの取り組みが始められた。
その他のインパクト
平成25年2月23日に、都市センターホテルで公開シンポジウムを行った。成果の一部は、専門情報誌にも紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201237016Z