文献情報
文献番号
201237010A
報告書区分
総括
研究課題名
テロ対策等の自然災害以外の健康危機管理時の医療体制に関する研究
課題番号
H22-健危-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大友 康裕(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター臨床研究部)
- 明石 真言(独立行政法人放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター 放射線被ばく 生化学 血液学)
- 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター 感染症学 感染症対策 感染症サーベイランス)
- 黒木 由美子(財団法人日本中毒情報センターつくば中毒110番 中毒学・衛生化学)
- 郡山 一明(財団法人救急振興財団救命救急九州研修所 医療行政危機管理 麻酔科学)
- 井上 潤一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 救命救急センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国においてCBRNEテロ発生の蓋然性は決して低くない。厚生労働省国民保護計画もCBRNEテロへの対応体制を確立することを重要課題としている。本研究班はCBRNEテロに対する急性期医療に関して実効性ある体制整備に寄与することを目的とする。
研究方法
H24年度は下記のように研究を実施した。
(1)除染設備などの資機材が十分に整っていない医療機関におけるCBRNE対応について、最終的な整理を進めた(小井土研究分担者)。
(2) 爆発物によるテロ(Eテロ)に対する医療のあり方について、諸外国の対応計画を参考にわが国の体制整備について研究した(井上研究分担者)。
(3) 感染症医療体制と災害・救急医療体制の連携のあり方について検討し、具体的な問題点を整理し、改善策を検討する(岡部研究分担者)
(4)緊急被ばく医療体制と災害・救急医療体制の連携および感染症医療体制と災害・救急医療体制の連携のあり方について検討する(明石研究分担者)
(6) 中毒情報との連携のあり方(黒木研究分担者)本研究班で開発した「NBCテロ・災害対応研修会(医政局指導課主催)」を日本中毒情報センターに委託して、平成18年から開催している。平成24年度は、受講生への案家と調査結果をまとめた。
(1)除染設備などの資機材が十分に整っていない医療機関におけるCBRNE対応について、最終的な整理を進めた(小井土研究分担者)。
(2) 爆発物によるテロ(Eテロ)に対する医療のあり方について、諸外国の対応計画を参考にわが国の体制整備について研究した(井上研究分担者)。
(3) 感染症医療体制と災害・救急医療体制の連携のあり方について検討し、具体的な問題点を整理し、改善策を検討する(岡部研究分担者)
(4)緊急被ばく医療体制と災害・救急医療体制の連携および感染症医療体制と災害・救急医療体制の連携のあり方について検討する(明石研究分担者)
(6) 中毒情報との連携のあり方(黒木研究分担者)本研究班で開発した「NBCテロ・災害対応研修会(医政局指導課主催)」を日本中毒情報センターに委託して、平成18年から開催している。平成24年度は、受講生への案家と調査結果をまとめた。
結果と考察
1)除染設備などの資機材が十分に整っていない医療機関におけるCBRNE対応
「除染体制や専用の個人防護装備がない一般病院で利用可能なマニュアル案」を作成した。A) 現場での除染をすり抜け、自力で受診する場合、B)現場から善意の民間人によって自動車等で未除染の傷病者が搬送される場合、C)現場で消防機関により除染された傷病者が搬送される場合の3パターン分け、それぞれ具体的対応策を提示した。
2)爆発物によるテロ(Eテロ)に対する医療のあり方について
平成24年度は「爆発物によるテロ災害(Eテロ)に対する医療活動マニュアル(案)」を完成させた。
3)生物テロ対応を中心とした感染症、救急、災害に関する医療体制の連携
限られた時間の中で、IHRやサーベイランスの有用性や実際、バイオテロに関する研修に加え、東日本大震災における感染症発生状況や、避難所サーベイランスに関する具体的な活動について研修を行った。
研修会参加者全体での評価は行っていないが、避難所サーベイランスの活動はNBCテロとは関係がないとの感想も寄せられた。今後、災害時の派遣医療チームに対する公衆衛生活動強化の位置づけを明確にし、研修を強化することが期待される。
4)緊急被ばく医療体制と災害・救急医療体制の連携
東電福島原発事故対応に際して、事象を検討した結果、抽出された問題点は次の通りである。
これまで精力的に構築されてきた緊急被ばく医療体制であるが、東日本大震災で発生した膨大な医療負荷への対応としては十分ではなく、通常の災害/救急医療体制との連携によって、かろうじて対処できたと言える。屋内退避地域の病院避難に関して、DMAT主体の支援体制が構築され、汚染スクリーニングおよび避難住民の一時立入り(帰宅)プロジェクトも含め対処が可能となった。原子力災害政府現地対策本部(OFC)では、救急医学会からアドバイザーが派遣され、被ばくを伴う傷病者の搬送や対応が確実に行われる体制がとられた。
一方、福島県内に5カ所設置されていた初期被ばく医療機関のうち4カ所が避難勧告地域内に位置し、唯一残った1カ所も、本来の責務であるはずの放射能汚染のある患者受入を拒否したため、福島県内の初期被ばく医療機能は、Jビレッジに設置された臨時医療施設が一手に引き受けるという、極めて貧弱な体制となった。そのため、避難住民に対する被ばく医療体制は大きな混乱が生じた。特に避難勧告地域内医療機関からの病院避難では、多くの患者の生命を奪う結果となった。7)中毒情報との連携のあり方
平成22年度~平成24年度に6回開催した「NBC災害・テロ対策研修」の受講生350名に対し、研修終了後に研修の評価アンケートを実施した。
アンケート調査の結果、3項目の総合評価はすべての講義について4以上であり、一定の評価を得ていることが判明した。内容の評価では、化学兵器総論等の座学も好評であったが、実際に防護服を着用して訓練を行う化学テロ対応実働訓練(総合訓練)や診療実習、事務向けエマルゴ(図上訓練)の評価がより高いことが判明した。
「除染体制や専用の個人防護装備がない一般病院で利用可能なマニュアル案」を作成した。A) 現場での除染をすり抜け、自力で受診する場合、B)現場から善意の民間人によって自動車等で未除染の傷病者が搬送される場合、C)現場で消防機関により除染された傷病者が搬送される場合の3パターン分け、それぞれ具体的対応策を提示した。
2)爆発物によるテロ(Eテロ)に対する医療のあり方について
平成24年度は「爆発物によるテロ災害(Eテロ)に対する医療活動マニュアル(案)」を完成させた。
3)生物テロ対応を中心とした感染症、救急、災害に関する医療体制の連携
限られた時間の中で、IHRやサーベイランスの有用性や実際、バイオテロに関する研修に加え、東日本大震災における感染症発生状況や、避難所サーベイランスに関する具体的な活動について研修を行った。
研修会参加者全体での評価は行っていないが、避難所サーベイランスの活動はNBCテロとは関係がないとの感想も寄せられた。今後、災害時の派遣医療チームに対する公衆衛生活動強化の位置づけを明確にし、研修を強化することが期待される。
4)緊急被ばく医療体制と災害・救急医療体制の連携
東電福島原発事故対応に際して、事象を検討した結果、抽出された問題点は次の通りである。
これまで精力的に構築されてきた緊急被ばく医療体制であるが、東日本大震災で発生した膨大な医療負荷への対応としては十分ではなく、通常の災害/救急医療体制との連携によって、かろうじて対処できたと言える。屋内退避地域の病院避難に関して、DMAT主体の支援体制が構築され、汚染スクリーニングおよび避難住民の一時立入り(帰宅)プロジェクトも含め対処が可能となった。原子力災害政府現地対策本部(OFC)では、救急医学会からアドバイザーが派遣され、被ばくを伴う傷病者の搬送や対応が確実に行われる体制がとられた。
一方、福島県内に5カ所設置されていた初期被ばく医療機関のうち4カ所が避難勧告地域内に位置し、唯一残った1カ所も、本来の責務であるはずの放射能汚染のある患者受入を拒否したため、福島県内の初期被ばく医療機能は、Jビレッジに設置された臨時医療施設が一手に引き受けるという、極めて貧弱な体制となった。そのため、避難住民に対する被ばく医療体制は大きな混乱が生じた。特に避難勧告地域内医療機関からの病院避難では、多くの患者の生命を奪う結果となった。7)中毒情報との連携のあり方
平成22年度~平成24年度に6回開催した「NBC災害・テロ対策研修」の受講生350名に対し、研修終了後に研修の評価アンケートを実施した。
アンケート調査の結果、3項目の総合評価はすべての講義について4以上であり、一定の評価を得ていることが判明した。内容の評価では、化学兵器総論等の座学も好評であったが、実際に防護服を着用して訓練を行う化学テロ対応実働訓練(総合訓練)や診療実習、事務向けエマルゴ(図上訓練)の評価がより高いことが判明した。
結論
CBRNEテロ/災害に対して救急医療機関での原因物質の種類によらない共通の対応体制を開発してきた。平成24年は、東日本大震災での教訓を基に、各研究を進め、3カ年の研究のまとめを行った。
公開日・更新日
公開日
2013-07-25
更新日
-