文献情報
文献番号
201237008A
報告書区分
総括
研究課題名
エステティックにおけるフェイシャルスキンケア技術の実態把握及び身体への影響についての調査研究
課題番号
H22-健危-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大原 國章(財団法人日本エステティック研究財団)
研究分担者(所属機関)
- 林 伸和(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,313,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
フェイシャルスキンケアは,人の皮膚に直接触れるサービスを提供していることから,衛生管理がなされていること,健康危害が発生しないことが前提である。しかし,衛生管理については,本研究の昨年度までの調査で,十分とは言えない実態が明らかになった。また,国民生活センターには,「エステティックサービス」全体で年間約600件の健康危害が報告されている。今年度の研究では,エステティック施設において必要な衛生管理が日常の業務で実行できる指標をづくりを目的とした。また、健康危害の防止対策として、件数は少ないが3割程度が治療期間3週間以上の重症の事例が報告されている熱傷をおこし得る施術に関して,昨年度皮膚モデルで安全性を検討した施術用美容機器について安全性を検証した。
研究方法
衛生管理:昨年度までの研究で得られた情報を検討し,衛生基準の実践の向上を目的としたツール類を作成し、69施設で試用させ,普及するための問題点を抽出した。
健康危害の実態把握:消費者の健康危害の実態については,2009年度~2011年度のデータ3年分を集計した。データの収集には,全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET:パイオネット)を利用した。
機器の安全性:昨年度皮膚モデルで安全性を検討した施術用美容機器(IPL美容機器、RF美容機器)について,健常人12名を対象として日常業務と同様の方法で施術を行い,皮膚の生理機能及び皮膚表面温度の測定を行った。
健康危害の実態把握:消費者の健康危害の実態については,2009年度~2011年度のデータ3年分を集計した。データの収集には,全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET:パイオネット)を利用した。
機器の安全性:昨年度皮膚モデルで安全性を検討した施術用美容機器(IPL美容機器、RF美容機器)について,健常人12名を対象として日常業務と同様の方法で施術を行い,皮膚の生理機能及び皮膚表面温度の測定を行った。
結果と考察
衛生管理:エステティックの衛生管理は,法的規制がなく,衛生管理に対する意識について,施設による差異が大きかった。衛生管理が十分ではない施設を対象に,ポイントをまとめた「衛生管理導入の手引き」と日常行う項目について一覧表にした「チェックリスト」を作成し,一部の施設で試用してみた。その結果,211件の意見や疑問等が寄せられ、「抜けている項目があった」等のコメントもあり,これらを使用した普及が一定の効果を持つことが分かった。また,問題点を解決するために,ツール類の修正及び衛生管理に関するQ&Aを作成した。エステティックの現場では,利便性や効率のために衛生管理がおろそかになる懸念がある。また,皮膚の接触があるため皮膚感染症が注目されがちであるが,全身性の感染症についても配慮が必要である。
消費者の健康危害の実態:国民生活センターの公開している情報から,フェイシャルスキンケアの危害の実態を検討した。ただし,これらのデータは,相談者からの聞き取りのみで構成されており,個人情報保護の観点から危害の内容は簡易な記述に過ぎず,傾向を把握することはできたが,正確に危害の原因を突き止めるほどの情報は得られなかった。
機器の安全性:今回の試験ではIPLについては,皮膚生理機能には影響がなく,皮膚表面温度にも特に変化は生じておらず,施術に問題なしと判断できた。RF美容機器では、施術中の最高皮膚表面温度は41.3±0.9℃まで上昇するが,施術終了後30秒後では体温を下回る温度まで下がることがわかり,通常の使用では健康危害は考えにくいことが確認できた。しかし,RF美容機器使用時には,過剰な高周波が同一部位に長時間流れることを回避するために,十分量のジェルを使用し常にプローブを移動させ,施術時間を安全域にとどめておくことが大切である。
消費者の健康危害の実態:国民生活センターの公開している情報から,フェイシャルスキンケアの危害の実態を検討した。ただし,これらのデータは,相談者からの聞き取りのみで構成されており,個人情報保護の観点から危害の内容は簡易な記述に過ぎず,傾向を把握することはできたが,正確に危害の原因を突き止めるほどの情報は得られなかった。
機器の安全性:今回の試験ではIPLについては,皮膚生理機能には影響がなく,皮膚表面温度にも特に変化は生じておらず,施術に問題なしと判断できた。RF美容機器では、施術中の最高皮膚表面温度は41.3±0.9℃まで上昇するが,施術終了後30秒後では体温を下回る温度まで下がることがわかり,通常の使用では健康危害は考えにくいことが確認できた。しかし,RF美容機器使用時には,過剰な高周波が同一部位に長時間流れることを回避するために,十分量のジェルを使用し常にプローブを移動させ,施術時間を安全域にとどめておくことが大切である。
結論
エステティックにおける衛生管理は,施設による認識の違いが大きい。今回作成したツール類「衛生管理導入の手引き」及び「チェックリスト」は,衛生管理が不十分な施設を減らすため,簡単に実行できることを主眼として最低限必要な項目に限定した。これを普及することで,エステティックにおいて衛生管理が浸透することを期待したい。普及の一環として,これらのツール類を財団法人日本エステティック研究財団のホームページに公表した。
消費者の身体危害の中で,件数は少ないが治療期間3週間以上のものが34.7%ある熱傷については,昨年度の皮膚モデルを用いた熱傷誘発実験及び今年度のヒトに対する施術試験の結果,IPL美容機器はジェルを塗布して,同一部位への反復照射を避け,皮膚の色の濃い場合には出力を下げるなどの方法をとれば,通常の使用方法での使用には問題がないと考えられる。RF美容機器については通常の使用方法では問題がないが,ジェルの塗布が不適切であったり,長時間同一部位にプローブを圧抵したりして,誤って使用した場合には熱傷を生じる危険性がある。本年度の機器を用いた研究結果を含めて,エステティックで使用できる施術機器について,何らかの安全性を担保するシステムが必要であると考える。特に,RF美容機器については,施術のプロトコールを作成して厳守させる仕組みをつくることや,熱傷を起こさないような安全装置の付加などの工夫を加えることが望まれる。
消費者の身体危害の中で,件数は少ないが治療期間3週間以上のものが34.7%ある熱傷については,昨年度の皮膚モデルを用いた熱傷誘発実験及び今年度のヒトに対する施術試験の結果,IPL美容機器はジェルを塗布して,同一部位への反復照射を避け,皮膚の色の濃い場合には出力を下げるなどの方法をとれば,通常の使用方法での使用には問題がないと考えられる。RF美容機器については通常の使用方法では問題がないが,ジェルの塗布が不適切であったり,長時間同一部位にプローブを圧抵したりして,誤って使用した場合には熱傷を生じる危険性がある。本年度の機器を用いた研究結果を含めて,エステティックで使用できる施術機器について,何らかの安全性を担保するシステムが必要であると考える。特に,RF美容機器については,施術のプロトコールを作成して厳守させる仕組みをつくることや,熱傷を起こさないような安全装置の付加などの工夫を加えることが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2013-07-25
更新日
-