文献情報
文献番号
201237005A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機発生時における地域健康安全に係る効果的な精神保健医療体制の構築に関する研究
課題番号
H22-健危-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所成人精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
- 加藤 寛(兵庫県こころのケアセンター)
- 鈴木 友理子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所成人精神保健研究部)
- 伊藤 弘人(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会精神保健研究部)
- 黒澤 美枝(岩手県精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,724,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、健康危機発生時における地域健康安全に係る効果的な精神保健医療体制を構築するために、地域危機発生時の精神保健対応のあり方を検討することである。
研究方法
(研究1)東日本大震災後の心のケアチームによる支援のあり方を系統的に検証し、時相ごとに求められた治療・ケアに関する合意形成を行った。(研究2)震災の発生から1年3か月後、福島県精神保健福祉センター所長へ聞き取りを行い、それをもとに整理した。(研究3)東日本大震災被災時において、H22年に作成したクリティカルパス案を参考に、岩手県精神保健福祉センターで精神保健福祉活動の調整業務を実際に行った。(研究4) 災害後の精神科医療および精神保健活動に関するシステム整備に向けて、求められる体制と準備(ロジスティック)と、研修のあり方を検討した。
結果と考察
(研究1)東日本大震災における「心のケアチーム」の発災から3か月間の活動の内容として、1)直後期には、精神科救急対応、精神科通院患者の服薬継続の維持、相談窓口の周知、急性期では、精神科救急対応、精神科通院患者の服薬継続の維持、避難所等を巡回しての相談活動、心理教育・普及啓発活動、中期では、仮設住宅等を巡回しての相談活動、心理教育・普及啓発活動の合意率が高かった。(研究2)福島県における1)発災後の行政内の役割分担、2)外部からの支援の受け入れ、3)精神保健福祉センターからの情報提供、4)放射線への不安への対応、5)精神科医療の再建、6)今回の東日本大震災においての課題、7)行政職員の業務の増加などが明らかになった。(研究3)クリティカルパスは、災害初期から中期の混乱した調整場面において、多様な心のケアチームやボランティア団体、メディア間の「心のケア」の共有化の簡便なツールとして多用された。各フェーズにおけるターゲットの症状は、不眠不安が初期から継続して多く、アルコール問題や抑うつはフェーズ2以降に増加した。フェーズ3復興期以降は、精神保健福祉センターの、多領域への精神保健技術支援のニーズや外部への報告機会、支援者救援者へのケア機会の増加があり、こうした点が従来業務やプロジェクトの再開と継続に影響した。(研究4)DMATやJMATなどの状況を検討するとともに、試行的に行われた研修の参加者の達成度や感想を集め、望まれる研修内容を提案した。
結論
時相別の精神保健支援のあり方(災害精神保健クリティカルパスの作成)については、被災県における課題と実際の対応について大きな内容の齟齬はなかった。時相別に求められる支援内容については、東日本大震災における心のケアチームの活動経験者らによって、主に医療保健的支援については、合意が得られた項目が多かった。一方で、心理療法的なアプローチ、スクリーニングについては、合意は得られなかった。また、東日本大震災における心のケアチームの具体的な体験談を集積することができ、今後の災害対応の判断を支える資料を作成できたと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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