居室における中間周波電磁界に関する研究

文献情報

文献番号
201237001A
報告書区分
総括
研究課題名
居室における中間周波電磁界に関する研究
課題番号
H21-健危-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 千代次(一般財団法人電気安全環境研究所 電磁界情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 多氣 昌生(首都大学東京 都市教養学部)
  • 石井 一行( 明治薬科大学)
  • 小笠原 裕樹(明治薬科大学)
  • 池畑 政輝(鉄道総合技術研究所)
  • 吉江 幸子(鉄道総合技術研究所)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 牛山 明(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 鈴木 敬久(首都大学東京 都市教養学部)
  • 和田 圭二(首都大学東京 都市教養学部)
  • 中園 聡(電力中央研究所)
  • 藤森 加奈子 (和氣 加奈子)(独立行政法人情報通信研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中間周波電磁界を利用した機器の健康影響に関する科学的情報が不足なため、国民の間にはこれらの機器からの電磁界の健康影響に対する不安が発生しており、健康安全・危機管理として早急な対応が求められている。本研究は、そのハザードの有無について、細胞や動物を用いた基礎的な研究により追究することを目的としている。
研究方法
電磁界の生体影響評価研究では電気工学的な定量が不可欠であるため、研究を電気工学班、細胞研究班、動物研究班の3班が共同研究を実施した。各班の研究方法は結果に記載した。
結果と考察
電気工学班ではこれまで開発してきた細胞用ばく露装置、動物用ばく露装置(一様磁界ばく露タイプ・局所磁界ばく露タイプ)の保守とばく露管理を行った。ばく露評価として母獣と胎児の解剖学的構造を考慮し、位置の移動とそのときの頻度をふまえた不確定性の検討を行った。さらにPWMインバータとディジタル制御器を用いた新しいタイプのばく露装置の制御方法について検討し、コイルの構成を変えずに、磁界の空間分布形状を制御できる可能性を見いだした。
細胞実験班では、開発したIF磁界ばく露装置(21kHzで最大3.9mT(ICNIRPガイドラインにおける公衆ばく露の参考レベルの144倍)を発生)を用いて、内分泌かく乱性の評価としてエストロゲン応答性、DNAメチル化およびマウスES細胞の分化に対するIF磁界ばく露の影響を遺伝子発現のレベルで評価した結果、遺伝子やその発現、また分化に対して顕著な影響を与えないことが明らかとなった。
動物実験班では、電気工学班と協働し、実験動物へ21kHzの磁界をばく露するための装置の開発し、妊娠ラットの胎児器官形成期にあたる妊娠7日~17日に1日1時間、腹部局所ばく露をおこなった際の胎児への発生への影響を調べた。腹部表面の中心磁束密度で国際ガイドラインの約400倍にあたる10.3mTの磁界ばく露を行っても奇形の発生率に影響は見られなかった。
結論
電気工学的に詳細なばく露装置とばく露評価のもと、最大ICNIRPガイドラインにおける公衆ばく露の参考レベルの144倍の強さの中間周波磁界をばく露しても細胞レベルで何らの影響は認めらず、動物実験でもガイドラインの約400倍の磁界ばく露を行っても奇形の発生率に影響は見られなかった。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201237001B
報告書区分
総合
研究課題名
居室における中間周波電磁界に関する研究
課題番号
H21-健危-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 千代次(一般財団法人電気安全環境研究所 電磁界情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 多氣 昌生(首都大学東京 都市教養学部)
  • 石井 一行(明治薬科大学)
  • 小笠原 裕樹(明治薬科大学)
  • 池畑 政輝(鉄道総合技術研究所)
  • 吉江 幸子(鉄道総合技術研究所)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 牛山 明(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 鈴木 敬久(首都大学東京 都市教養学部)
  • 和田 圭二(首都大学東京 都市教養学部)
  • 中園 聡(電力中央研究所)
  • 藤森 加奈子 (和氣 加奈子)(独立行政法人 情報通信研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中間周波電磁界を利用した機器の健康影響に関する科学的情報が不足なため、国民の間にはこれらの機器からの電磁界の健康影響に対する不安が発生しており、健康安全・危機管理として早急な対応が求められている。本研究は、そのハザードの有無について、細胞や動物を用いた基礎的な研究により追究することを目的としている。
研究方法
電磁界の生体影響評価研究では電気工学的な定量が不可欠であるため、研究を電気工学班、細胞研究班、動物研究班の3班が共同研究を実施した。各班の研究方法は結果に記載した。
結果と考察
電気工学班では、ばく露の基本的な物理量とそのレベルについて検討し,細胞および動物のばく露実験に対して計算機シミュレーションを駆使したばく露評価を基に、生体内に誘導される電界・電流密度などを定量的に評価して、可能な限りの大きなばく露量を有するばく露装置を開発すると共に、実験実施のフォローアップを行った。
細胞実験班では、毒性(細胞の増殖阻害等)、遺伝毒性(小核試験、遺伝子変異試験)、内分泌かく乱性(エストロゲン応答性)、細胞分化(マウスES細胞の心筋への分化)のいずれについても、居室等の環境中ばく露より100倍以上高い磁束密度(最大3.9mT)の中間周波磁界へのばく露の影響は認められなかった。
動物実験班では、ラットに1日1時間で連続3日間、または連続14日間の全身ばく露影響を調べたが、体重、血液生化学、血球分画の各指標に影響は認められなかった。またNK活性、顆粒球の走化性・貪食能、T細胞サブセット(CD4・CD8)には影響を与えないことを示した。局所用ばく露装置を用いて妊娠ラット腹部表面中心で21kHz、約10mTの正弦波磁界ばく露の催奇形性を調べたが、ばく露による胎児の死亡率の増加や、胎児の体重変化は見られなかった。また、胎児の外形異常、内臓異常、骨格形成異常、母獣の腹単位の奇形発生頻度の項目においても、磁界ばく露影響は確認されなかった。
結論
国際的ガイドラインを遙かに超えた中間周波磁界ばく露で、何らの生物学的悪影響は確認されないことから、居室の環境レベルでの磁界ばく露の影響についても、影響が無いかもしくは一般的な安全性評価に資する試験では検出できないレベルの極めて弱い影響であると推察された。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201237001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
定量的なばく露が可能となるばく露装置を開発し、細胞毒性、遺伝毒性、内分泌かく乱性、細胞分化、動物での一般毒性、免疫、生殖、催奇形性の各指標についてICNIRPガイドラインの基準値を100~400倍のばく露条件で検討した結果、生物的ハザードに繋がる影響は確認されなかった。従って、これを遙かに下回る居住環境でのIH調理器使用の安全性を担保する科学的エビデンスを提供することができた。
臨床的観点からの成果
この研究では、妊婦へのばく露を想定して、細胞での遺伝毒性、内分泌かく乱性、細胞分化、妊娠動物を対象に生殖能、催奇形性を追究した結果、何らの生物学的影響も確認されず、IH調理器使用が臨床的関連する健康傷害を招くといった知見は得られなかった。
ガイドライン等の開発
実験で用いた中間周波電磁界のばく露条件は国際的ガイドラインの基準値を100~400倍であり、この条件でも生物的ハザードを確認できないことから、ガイドラインを見直す必要はないと思う。
その他行政的観点からの成果
IH調理器の普及は国民のIH調理器への健康影響に対する懸念を引き起こし、社会的問題として国会でも論議された。本研究の成果として、居住環境でのIH調理器使用の安全性を担保する科学的エビデンスを得ることができたことから、厚生労働省生活衛生課をはじめ、経済産業省製品安全課に貴重な情報を提供できた。既に生活衛生課では研究結果(総合研究報告書)を国会議員への説明資料として活用している。
その他のインパクト
特にない

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
International Journal of Radiation Biology, 2014,90(12):1211-7
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
代表研究者が所属する電磁界情報センターが主催する電磁波セミナー(10回/年)で、参加者からIH調理器使用の健康不安についての質問を数多くあり、その際には、WHOの見解と共に本研究結果を紹介している。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ushiyama A, Ohtani S, Maeda M, et al.
Effects of 21-kHz intermediate frequency magnetic fields on blood properties and immune systems of juvenile rats.
International Journal of Radiation Biology (accepted) , 90 (12) , 1211-1217  (2014)
10.3109/09553002.2014.930538
原著論文2
Yoshie S., Ogasawara Y., Ikehata M., et al.
Evaluation of biological effects of intermediate frequency magnetic field on differentiation of embryonic stem cell
Toxicology Reports , 3 , 135-140  (2016)

公開日・更新日

公開日
2014-05-30
更新日
2017-06-23

収支報告書

文献番号
201237001Z